( 219956 )  2024/10/08 15:50:51  
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 石破茂総裁が誕生した。長期政権になるのか短命政権になるか……。一体どうなるかはまだ何もわからないが、政治の世界は常在戦場。早くもポスト石破は誰になるのかと、永田町の噂好きの間では話題になっている。政治に詳しいジャーナリストの池谷悟氏が解説するーー。 

 

 自民党総裁選が終わった。過去最多の9人が立候補した今回の総裁選だが、今回の敗戦者から「その次の総理候補」も見えた。当然、決選投票に残った高市早苗氏や得票数で3位だった小泉進次郎氏にも「次こそは」という想いもあるだろうが、それ以外の候補者も大きく名をあげた。 

 

 例えば、小泉進次郎と同じく40代の候補者として小林鷹之氏は「コバホーク」という愛称で売り出して認知度を一気にあげた。しかし、党員票も議員票も思うようには伸びなかった。政策については「明らかに保守の立場をとっていたが、もともとはそんな保守的な人物ではなかったはず」(閣僚経験者)だといい、コバホークらしさを党員らに今後更にアピールできれば、次回は違う結果になるだろう。 

 

 岸田文雄政権で自民党幹事長を務めた茂木敏充氏もアピールに成功した。茂木氏はもともとは怖いイメージが先行していた議員だ。また幹事長というポジションにいることからこれまであまり自分を出してこなかったが、今年の春ごろから総裁選を見据えてイメージアップ戦略に打って出た。PR会社らと一緒に「優しい話し方や笑顔の練習」(広告会社幹部)を断行し、数多くのウェブメディアやユーチューブチャンネルに登場。若年層へのリーチをはかった。政策についても候補者の中で唯一「増税しない」という方針を打ち出し、現役世代からの支持を集めた。自民党内のポジション的にしばらくは厳しい状況が続くかもしれないが、だからこそその時に備えて準備もしやすいだろう。 

 

  意外な形で注目を集めたのは林芳正氏だ。総裁選報道がヒートアップしつつあった9月6日に官邸内のエレベーターの故障により30分間閉じ込められてしまった。そんなハプニングもあったが、小泉純一郎内閣で外務大臣を務めた田中真紀子氏が、総裁選候補の中で唯一、林氏を「賢いし経験もあるし、育ちもいい」と絶賛。ワイドショーを中心に話題を呼んでいた。石破政権でも引き続き官房長官として任命されるなど、今後も国民から注目されることは多いはずだ。 

 

 

 一方で今回の総裁選ではあまり話題に上らなかったのが旧安部派の面々である。故安倍晋三安倍総理の死去、そして裏金問題以降、永田町の中心からは遠ざかっている。今回は多くの派閥がなくなった中での総裁選だったが、皮肉なことに改めて派閥が持つ政治力を実感した総裁選でもあった。派閥の解消を拒んだ麻生派に小泉氏も石破氏も頭を下げに行くなど、総裁選終盤には麻生太郎氏の動向に大きな注目が集まっていた。 

 

 旧安倍派を巡っては、かつて松野博一氏、高木毅氏や萩生田光一氏、西村康稔氏に加え現在は離党している世耕弘成氏の「五人衆」による集団指導体制をしいてきた。だが、そんな状況の中でも裏金問題の加熱前には「萩生田をたてよう」(旧安部派議員)という動きがあったという。今回の総裁選でも離党した世耕のもとに小泉陣営と高市陣営から協力の要請がきていた。未だに自民党での影響力は強い。トップが誰になるにせよ、旧安倍派が再び一つにまとまるようなことが起きれば永田町を大きく動かしかねない。 

 

 菅義偉政権時代に総務大臣を務めた武田良太氏も見過ごせない。「剛腕」「二階派の若頭」などの異名を持つ武田氏だが、大臣時代には楽天を携帯電話事業に参入させるなど改革の手腕をふるった。新しい総理になっても自民党の支持率が回復しない場合、武田氏のような「強いリーダー像」を国民が求める可能性はある。 

 

 また、まだ国民の認知度はそこまで高くはないが自民党内で着々と成果を残し、注目を集めている若手議員もいる。  

 

 9月22日の日刊スポーツで<「怪力」官房副長官に「おおお」場内どよめき 40キロ内閣総理大臣杯抱え上げ再び大の里に授与>という見出しが踊った。 

 

 9月22日、東京・両国国技館で行われた大相撲秋場所千秋楽の表彰式において、2場所ぶりに優勝を果たした関脇・大の里(24=二所ノ関)に内閣総理大臣杯が授与されたが、その場に登場したのが村井氏だ。この内閣総理大臣杯は重さが40キロ以上あり、通常はサポートが必要とされる。しかし、村井氏は今年の5月にもサポートなしで自力でこの重い杯を持ち上げ、大の里に授与した。今回が2度目の登場となり、その「怪力ぶり」を再び見せた。 

 

 

 岸田政権の官房副長官であった村井英樹氏は埼玉県さいたま市でサラリーマン家庭に生まれ、いわゆる「地盤」「看板」「カバン」といった典型的な政治家の支えを持たない。しかし、ジャーナリストの田原総一朗氏が「政策的に分からないことは、村井さんに聞く」と語るなど、政治家としての能力の高さのみで頭角を現した。 

 

 村井氏は東京大学を卒業後、財務省に入省し、その後ハーバード大学大学院を修了。2012年には初めて衆議院議員に当選し、2016年に36歳で自民党副幹事長に就任した。自民党の歴史上最年少の副幹事長就任であり、党内外から大きな驚きがあった。また内閣官房副長官として岸田政権において要職を務めている点も注目されている。政界の“フィクサー”からも信頼されるなど、将来の総裁候補としての期待が一層高まっている。 

 

 埼玉県の「最終兵器」として、日本全体をリードする存在になることが期待されている 。将来は代理ではなく、横綱に総理大臣杯を手渡す日が来るのかもしれない。 

 

池谷 悟 

 

 

 
 

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