( 223396 ) 2024/10/17 17:30:43 0 00 阪神・大山の決断は?
2年連続のリーグ制覇を目指したがCSファーストステージで敗れた阪神。藤川球児新監督が就任して、新しい体制作りが始まった。注目されるのは今季中に国内FA権を取得した選手たちの去就だ。大山悠輔、坂本誠志郎、原口文仁、糸原健斗といずれも主力選手ばかり。特に大山は替えが利かない存在だけに、野球人生の岐路でどのような決断を下すか注目される。
【写真】疑問視する声もあったが、大山のドラフト1位指名をこの元監督が求めたという
昨年、大山は全試合で4番を務め、打率.288、19本塁打、78打点をマーク。ボール球をきっちり見極め、好球必打でアプローチする。99四球はリーグ最多で、最高出塁率(.403)のタイトルを獲得した。フォア・ザ・チームに徹し、38年ぶりの日本一に輝いた阪神を象徴する選手だった。昨オフは球団から提示された複数年契約を断り、推定年俸2億8000万円で単年契約を結んだ。
リーグ連覇を目指した今季だったが、春先から打撃の状態が上がらず6月上旬に打率1割台で登録抹消に。7月以降は調子を上げたが打率.259、14本塁打、68打点でシーズンを終えた。得点圏打率.354と勝負強さを発揮したが、大山自身は納得できる数字ではないだろう。不本意な成績に終わったが、他球団の評価は依然として高い。
■一塁手の強打者を求める球団は多い
パ・リーグ球団の編成担当はこう語る。
「強引に引っ張らずに逆方向に打って走者を進めたり、走者が三塁にいる場面は犠飛をきっちり放ったりと、状況判断に長けた打撃をする。ああいう選手がクリーンアップに座ると首脳陣は心強い。29歳という年齢を考えても、まだまだ伸びしろがあります。本拠地が広い甲子園なので自己最多が28本塁打ですが、もっと打てる。打率3割、30本塁打をクリアできる選手です。FA権を行使するとなれば、争奪戦になることは間違いない」
一塁を守る強打者が補強ポイントの球団は多い。今年最下位に低迷した西武、CS進出を逃して三木肇監督が就任した楽天は、まさに欲しい選手だろう。阪神と同じ関西を拠点に置くオリックスも打線強化が重要なテーマだ。リーグ4連覇を狙った今季は5位に低迷。4番打者を固定できず、402得点は西武に次ぐリーグ5位だった。中島聡監督が退任し、岸田護新監督が就任。昨オフに西川龍馬をFAで獲得しており、今年のオフもFA補強に動く可能性がある。
セ・リーグ球団の動きも気になる。スポーツ紙デスクは、こう分析する。
「巨人は現有戦力で大山の必要性を感じませんが、岡本和真がポスティング・システムで球団の許可を得てメジャーに挑戦するようだと状況がガラッと変わる。秋広優人が一塁で後継者になってほしいですが、伸び悩んでいる。坂本勇人を一塁にコンバートするという選択肢がありますが、大山がFA権を行使すれば獲得を検討する価値があるでしょう」
■ドラフト1位指名を疑問視する声も
大山は複雑な思いを抱えて阪神に入団したことで知られる。16年10月20日のドラフト会議。同年は大学球界を代表する右腕の田中正義(日本ハム)、柳裕也(中日)、佐々木千隼(DeNA)が「大学ビッグ3」として注目を集めた。1位指名で田中に5球団、柳に2球団が競合する中、佐々木の名前が呼ばれない予想外の展開に。阪神の1位指名が発表されるとき、佐々木を予想する声が多かった中、大山の名前が呼ばれると会場内から「ええっ……」とどよめきが起こった。
アマチュア担当のスポーツ紙記者が当時を振り返る。
「佐々木は最初の指名で名前が出ず、『外れ1位』で5球団が競合したので、『佐々木を単独で1位指名できたのに』と大山指名に疑問符をつける見方が多かった。でも、大山も大学ジャパンの4番を務めましたし、決して見劣りする選手ではない。当時の金本知憲監督の要望で1位指名しましたが、プロに入団後の活躍を見れば、この決断が正しかったことが証明されています」
昨年、リーグ優勝を飾ったとき、普段は感情を露わにしない大山が大粒の涙を流した姿が印象的だった。ドラフトの際に受けた低評価を覆そうと全力で駆け抜け、頂点にたどりついて感情が抑えきれなかったのだろう。
■「広島の新井監督やコーチを慕っている」
関西のテレビ関係者は大山の人柄について、こう話す。
「優しい男です。活躍しても周囲を思いやる性格で我を出さない。全力疾走を欠かさない姿はナインのお手本です。口数が多いタイプではないけど、穏やかな性格でニコニコ見守っている。後輩からも話しかけやすい存在ですし、癒し系ですね。茨城出身ですが、『関東の球団に行きたい』ということはないと思います。阪神に当然愛着がありますし、残留が基本線になるでしょう。ただ、もし移籍となれば、有力候補として浮かぶのが広島です。大山は新井貴浩監督、藤井彰人ヘッドコーチを慕っていますし、新井良太2軍打撃コーチは阪神のコーチ時代に大山の支えになっていました。年俸や契約年数ではなく、自分を必要としてくれる環境が、FAで決断の重要な要素になってくると思います」
昨年2位に躍進した広島は今年も8月まで優勝争いを繰り広げていたが、9月以降に7勝22敗と大失速。最大14あった貯金が、最後は借金2に落ち込み、4位でCS進出を逃した。補強ポイントは中軸を打つ強打者に尽きる。近年は助っ人外国人が力を発揮できないケースが目立つ。大山がFA権を行使するなら、獲得に動く可能性は十分に考えられる。
広島は川口和久、江藤智、金本知憲、丸佳浩(現巨人)など主力選手が他球団にFAで流出した歴史がある。FA補強に積極的なイメージはないが、米国でプレーしていた秋山翔吾が22年途中に日本球界に復帰を決断すると、獲得レースに参戦。西武、ソフトバンクとの争奪戦を制している。今秋のドラフトでは宗山塁(明大)の1位指名を事前に公表するなど、広島のチームカラーに合う選手の獲得を目指す方針にブレがない。
もちろん、阪神にとっても、V奪回に向けて大山は必要不可欠な選手だ。今後の交渉で慰留に全力を注ぐことになる。果たして主砲の決断は――。
(AERA dot.編集部)
AERA dot.編集部
|
![]() |