( 225131 )  2024/10/22 17:17:09  
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 2024年に入り、近年あまり見られなかった連鎖倒産が増加している。連鎖倒産のリスクが高いのは、どのような業種なのだろうか?人手不足の現在は、人手不足倒産も増えている。建設業と運輸業は手形取引も多く、また人手不足倒産も増えており、連鎖倒産に注意すべき業種と言えるのではないだろうか。みんかぶプレミアム特集「資産防衛白書」第2回ーー。 

 

 企業の栄枯盛衰は世の流れと言うべき面があります。ただしコロナ禍の中で、雇用の維持を目的にどんな企業であっても潰さない、との政府の強い意志を背景に、ゼロ・ゼロ融資などを受けて、経営状態が厳しい企業も延命がなされました。しかしコロナ禍が明け、様々な支援制度が終わると、延命企業の破綻が生じています。 

 

 また東京商工リサーチによると、2024年に入り連鎖倒産が増加しています。『2024年1~8月の連鎖倒産は、370件に達した。前年同期は288件で、約3割(28.4%増)の増加だ。』と発表されています。(https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198918_1527.html) 

 

 連鎖倒産の増加は、近年あまり見られなかった現象です。連鎖倒産の増加=景気後退のシグナルとも考えられ、コロナ禍明け以後、賃上げも進み回復が続いた日本経済は、回復が一服する可能性が生じています。 

 

 コロナ禍の中で、休業と引き換えに外食業界に多額の支援金が投じられました。コロナ禍明け後、外食業界の倒産が続いています。しかし外食業界は個人客相手のB2C事業のため、連鎖倒産の耐性が高い業種です。仕入れ先の倒産があっても、支払先の倒産であるため企業経営へのダメージは限定的です。 

 

 直近では洋菓子店や美容院の倒産増加が話題となりましたが、洋菓子店も美容院もB2C事業であり、連鎖倒産の耐性が高い業種となります。 

 

 このため、足元で倒産が増えている業種=連鎖倒産の増加が見込まれる業種、という構図には必ずしもならない点は注意が必要です。 

 

 

 かつて連鎖倒産といえば、手形が落ちない、というのが典型的なパターンでした。既に手形の利用は大幅に減少しているものの、手形を多く利用する業界はその仕組み上、連鎖倒産が発生しやすい状態に変わりはありません。 

 

 東京商工リサーチの調べでは(参考:https://www.tsr-net.co.jp/data/detail/1198464_1527.html)、2023年時点で手形の利用が多い業界のベスト5は以下となっています。 

 

1位 卸売業 

 

2位 製造業 

 

3位 農林魚・鉱業 

 

4位 建設業 

 

5位 運輸業 

 

 このうち、2位製造業は内容が多岐に渡り対象が広すぎます。また3位の特に農林漁業は個人事業の色彩も強い業界です。よって、特に手形取引による連鎖倒産に注意すべきは1位卸売業、4位建設業、5位運輸業となります。 

 

 手形の取り扱いが多い、というのは主に資金繰りの問題です。更に建設業、運輸業は少子高齢社会を迎え、人手不足の問題にも直面しています。両業界ともに従業員の賃上げなどを目的に働き方改革も行われており、少ない人数でのやりくりを余儀なくされています。その結果、建設業や運輸業では人手不足倒産が増加中です。 

 

近年の国内の倒産はこれまでの資金繰り倒産に加えて、人手不足倒産も増えています。手形の存在による資金繰りリスクに加え、人材不足リスクもある建設業と運輸業は、今後景気が悪化すれば、これまで以上に連鎖倒産リスクに直面する可能性があります。建設業と運輸業は、近年増加している人手不足倒産を契機とする、連鎖倒産発生への警戒が必要ではないでしょうか。 

 

石井僚一 

 

 

 
 

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