( 225556 )  2024/10/23 17:40:07  
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元騎手の藤田菜七子 

 

人気女性騎手だった藤田菜七子(27)の電撃引退は、世間に大きな波紋を広げた。引退の背景にはJRAの規則違反による騎乗停止処分があったとされるが、引退から1週間以上たった今も、ネット上には「気分悪い辞め方」「自業自得」といった批判が書き込まれている。なぜ、藤田はここまで厳しい非難を浴びてしまうのか。世間が抱く“許せない”という感情の根源を専門家に分析してもらった。 

 

【写真】まるでアイドル?清楚な白ワンピ姿の藤田菜七子 

 

*  *  * 

 

 JRAが「重大な非行」と認定したのは、藤田のスマートフォンの不適切利用だ。JRAの騎手は八百長などの不正防止の観点から、競馬開催前夜は調整ルームと呼ばれる宿泊施設で過ごし、外部との接触を絶つよう定められている。しかし藤田は、これまで複数回にわたり調整ルームにスマホを持ち込み、通信していたことが発覚した。 

 

 藤田といえば、2019年に女性騎手初となるJRA重賞制覇を果たすなど実力が評価される一方で、そのかわいらしい容姿から“菜七子フィーバー”を巻き起こしてきた。騎手としては異例の写真集が発売されたり、「黒髪美人大賞」(柳屋本店主催)を受賞したりと、まさにアイドル的な人気を誇っていた。 

 

 そんな中、突然の不祥事発覚と引退に、世間からは驚きと落胆の声が上がった。X上では「嘘だろ。菜七子を応援するためにあちこち行ったんだぜ」などとファンから悲鳴が上がる一方で、「正直がっかり」「身勝手すぎる」といった失望や非難の声も相次いだ。 

 

 フィーバーから一転、“菜七子バッシング”が巻き起こる背景には、どんな要因があるのか。 

 

 吉本興業で宣伝広報室を設立し、現在は危機管理コンサルタントとして活動する“謝罪マスター”こと竹中功氏(65)は、「炎上する条件がそろってしまった」と分析する。その上で、まず指摘するのは「かわいさ余って憎さ百倍」という人間心理だ。 

 

「藤田さんは、その清楚さやひたむきさで多くのファンを魅了し、競馬界を引っ張るスターとして注目されてきました。その期待が不祥事という形で裏切られると、『今まで応援してきた時間と労力、お金を返してくれ!』とアンチに変貌するファンが出てきてしまうのです」 

 

 

■涙は「救いにはならない」 

 

 藤田へのバッシングでは「嘘つき」というワードも多く登場する。スマホの不適切利用について、藤田は最初のJRAの聞き取り調査には「XとYouTubeを閲覧していただけ」と説明していた。しかし、週刊誌報道後の調査では厩舎関係者と連絡をとっていたことが発覚した。 

 

これについては、JRAが「虚偽申告」と問題視したこともあり、「嘘までついてスマホいじったとか悪質過ぎるやろ」(※X投稿より)などとバッシングの炎に油を注ぐ材料となってしまった。 

 

 竹中氏は言う。 

 

「ウソをついてはいけないというのは、危機管理上はもちろん、社会生活においても絶対的なルールです。聴覚障害がある作曲家として活動していた佐村河内氏が、実は耳が聞こえていて曲もゴーストライターに作らせていたことが判明したときも、大バッシングが起こりました」 

 

 また、藤田の師匠である根本康弘調教師がメディアの取材に対し、「大泣きしながら、オレの万年筆で引退届を書いていた菜七子の姿は、死ぬまで忘れません」と明かしたことにもさまざまな反応が寄せられた。 

 

 Xでは藤田に対し、「第二の人生頑張ってほしい」といった励ましのコメントもあるが、「バレてから泣いた所で後の祭り」「泣けば同情してもらえると思ってそう」など逆に不信感を募らせた人も少なくないようだ。 

 

 竹中氏は「涙は救いにはなりませんよ」と、ばっさり言い切る。 

 

「最近の芸能界は、プライベートをふくめ自分の素顔も見せようとする風潮がありますが、不祥事の後に泣くことで印象が良くなることはありません。もちろん、自分の身近な人であれば『助けてやるか』という気にもなるでしょう。でも会ったこともない有名人が泣いたところで、本心から泣いているのかも判断できないし、むしろ『何泣いとんねん』と冷めてしまう。『もっと泣けばいい、もっといじめられればいい』と、悪意の暴走を招くリスクもあります」 

 

 

■藤田の対応の“残念な部分” 

 

 藤田へのバッシングに相乗りして批判している人には竹中氏も嫌悪感を抱いているというが、“謝罪マスター”としては、藤田の対応には残念な部分があったことも事実だと話す。 

 

「今まで支えてくれたファンやスポンサーには、表に出てきて、一度謝罪をするべきでした。JRAに引退届を出して終わりではなく、引退にいたった経緯や多くの人に迷惑をかけたおわびを自分の口で語るのが、有名人としての責任でしょう。それがないから、世間からは『逃げるのか』と批判されるし、危機管理の専門家である私としては、『公表できないような裏事情があるのでは?』と、つい勘ぐってしまいます」 

 

 根本調教師は会見で、「菜七子は今、人前に出て話ができる精神状態ではありません」とかばっていた。藤田が本当の“けじめ”をつけられる日は来るのだろうか。 

 

(AERA dot.編集部・大谷百合絵) 

 

大谷百合絵 

 

 

 
 

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