( 225811 ) 2024/10/24 16:06:12 0 00 Photo by gettyimages
間近に迫る衆院選の投開票。石破総理は「裏ガネ議員」の一部非公認、比例重複を認めない方針を決め、勝負に出たと思われた。しかし、これは国民を欺く罠だった。選挙区を回り、その実態に迫る。
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前編記事『「このままではマズいですね」石破総理が真っ青に…自民党が行った総裁選「極秘調査」衝撃の中身を公開する』より続く。
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旧安倍派の幹部でありながら、運良く非公認を免れたのが元官房長官の松野博一だ。しかし、ネガティブなイメージが払拭されないのか、地元の千葉3区では逆風が吹いている。市原市の市議会議員が語る。
「松野が配っているチラシを見てください。『派閥が告発された事案に関して、私自身は関係した事実がなく、嫌疑なしとなりました』と書いてある。まるで他人事です」
地元のドンとして知られる松野の後援会幹部も、「今回だけは許せん」と息巻く。
「裏ガネも含めて色々あったので、一度説明に来いと言っているのに、『そのうち行きます』と言うだけで一向に来ない。
俺はアイツが32歳のときから面倒をみて、地元企業や関連団体を紹介した。カネも7億円近く集めてやった。政治の世界は義理が大事なのに、それがわかってないんだな」
五井駅前で演説する松野を直撃すると、「選挙が甘いものじゃないことはわかっています。'96年の最初の選挙も落選してますから」と語るのだった。
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4月4日、党員資格停止1年の処分を受け、石破政権以前から非公認が決まっていたのが、元安倍派事務総長の下村博文と西村康稔だ。
10月13日、東京11区の立候補予定者たちによる公開討論会が開かれた。そこで下村は「日本をどう立て直すか。日本創生は前々回の選挙から訴えている」と石破の掲げる日本創生に賛意を示し、自民党の一員であることをアピールした。
討論会後は大山駅前で街頭演説。元秘書の河野ゆうき都議をはじめ、6人ほどの自民党区議がビラを配っている。これで自民党非公認というのはなんとも奇妙な気がするが、下村本人に聞くと、「自民党の議員団もみんな応援してくれますから、必ず這い上がります」と自信を覗かせるのだった。
一方の西村も非公認ながら、公明党の推薦を受けて快調だ。
「兵庫9区の淡路島は離島振興で潤ってきたため、自民党が強い。西村は10万票は固い」(自民党秘書)
とはいえ、一つ気になる要素がある。対立候補である立憲の橋本慧悟が、あの元明石市長・泉房穂の「一番弟子」なのだ。地元紙記者が説明する。
「橋本さんは昨年の県議選で泉さん率いる政治団体から出馬し圧勝した。泉さんが衆院選後に新党を作るのではという噂もあり、橋本さんへの注目が集まっています」
同じく非公認ながら公明党の推薦を受けるのが、埼玉13区の三ッ林裕巳。公明党が裏ガネ議員らに推薦を出すのには、抜き差しならない事情がある。
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「西村の地元兵庫では、2区と8区から公明党の赤羽一嘉副代表と中野洋昌青年局長がそれぞれ出馬する。また三ッ林裕巳の選挙区のお隣埼玉14区からは石井啓一代表が出る。しかも14区の一部は、区割り変更前はもともと三ッ林の地盤だった。勝つには、地元の政治家との相互支援は必須です。
11月17日に結党60周年を迎える公明党は絶対に負けられないため、裏ガネ議員の手であっても借りるしかない」(前出・全国紙政治部記者)
三ッ林の事務所を訪れると、秘書が「うちは特捜にすべて領収書を出して、嫌疑なしで不起訴処分になったから裏ガネ議員じゃない」と弁解する。
とはいえ地元関係者の不信感は大きい。これまで三ッ林を支えてきた後援会幹部が明かす。
「10月9日にゴルフコンペがあったのですが、参加していた学会の幹部が『もう三ッ林先生に推薦状を出してあるから、彼の選挙は大丈夫です』って言うんです。おかしいですよね。でも、うちも親の代から三ッ林家のお手伝いをしてますから、表立って批判することはできません」
三ッ林陣営は自民党と大書きされた街宣車に乗り、自民党のロゴが入ったポスターを貼って回っている。「自民党公認」とは書いてないので問題ないと、事務所秘書が胸を張って説明する。
「公認は外されたけれど、自民党の支部長は解任されていませんから。当選すれば復党しますしね」
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お隣14区の石井の事務所を訪れ、三ッ林との蜜月について尋ねると、こちらも秘書が対応した。
「石井が昨年5月以降、14区で活動するにあたって、三ッ林先生は支援者の皆さんを連れて歩いてくださいました」
持ちつ持たれつの勝利を目指す石井陣営に対して、対立候補の維新の会・加来たけよしに話を聞くと、こう憤る。
「石井さんのパンフレットには問題があると思っています。というのも、代表世話人として東武鉄道会長の根津嘉澄氏が出ているんです。公共性の高い鉄道会社が、国交大臣を輩出している公明党の代表に肩入れするのはどうなんでしょう」
しがらみ塗れの与党候補たち。こうしたイメージを払拭するために自民党が東京15区に立てたのが、大空こうき・25歳だ。
「15区は昨年、公職選挙法違反で柿沢未途らが逮捕された地域で、『自民離れ』が進んでいた。そこで、Z世代でNPO法人代表としてメディアでも活躍する大空を担いだ小泉さんがまっ先に応援演説に入りました」(自民党区議会議員)
11日に東陽町のホテルイースト21で開かれた集会には300人ほど支援者が集まり、財務大臣の加藤勝信らも駆けつけた。ところが……。
「9割は60歳以上の年配の方々ばかり。党が動員をかけたのでしょう。
よくテレビに出ている社会学者の古市憲寿さんが毎日のように手伝いに来ていますが、周囲に若者が多いわけでもない。
大空さんがMCを務める文化放送のラジオ番組は聖教新聞がスポンサーですから、創価学会関係者の間では広く知られています」(地元関係者)
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門前仲町で演説する大空本人に直撃した。
―自民党が刷新感を出すため、大空さんが使われているという声もある。
「(一瞬、顔をしかめ)私はただただ今回の選挙を頑張るだけです」
注目選挙区を見て回ると、自民党が苦しいと言われる中でも、旧安倍派の裏ガネ議員から勝ち残る者が出てきそうだ。
そこで自民党の幹部が懸念するのが、選挙後の「石破下ろし」である。
「総裁選で石破さんに敗れた高市さんに応援依頼が殺到しており、高市さんは全国を飛び回っている。候補者に恩を売ると同時に、党員にも顔を売っています。自公過半数を維持しても、選挙前の石破さんの非情な決断に恨みを持った反主流派が高市さんのもとに結集して、石破さんを引きずり降ろそうとするかもしれません」(官邸関係者)
萩生田は周囲に「選挙が終わったら、わかっているな」と意味深に語り、世耕は「高市総理になれば俺も復党できる」と嘯いているという。
裏ガネ事件の実態解明から逃げ、小手先の処分に走ったがゆえに、石破は自らの首を締めることになった。 (文中敬称略)
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