( 227501 )  2024/10/28 17:53:16  
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「成果が出せない人が使いがちなNGワード」をご紹介します(写真:USSIE/PIXTA) 

 

「数字に弱く、論理的に考えられない」 

「何が言いたいのかわからないと言われてしまう」 

「魅力的なプレゼンができない」 

これらすべての悩みを解決し、2万人の「どんな時でも成果を出せるビジネスパーソン」を育てた実績を持つビジネス数学の第一人者、深沢真太郎氏が、生産性・評価・信頼のすべてを最短距離で爆増させる技術を徹底的に解説した、深沢氏の集大成とも言える書籍、『「数学的」な仕事術大全』を上梓した。 

 

今回は「成果が出せない人が使いがちなNGワード」を取り上げる。 

 

■「生産性」ってなんですか?  

 

 あなたに質問です。 

 

 「生産性」とはなんでしょうか?  

 

 まず確認したいのは、あなたがこの問いに即答できたかどうかです。答えの内容は重要ではありません。仕事内容や価値観によって生産性の定義は人それぞれであり、唯一の正解はないからです。 

 

 そしてもうひとつお尋ねします。あなたの仕事において最も重要なキーパーソンが生産性という言葉をどう定義しているか、あなたは把握されているでしょうか。もしあなたとその人物とで生産性の定義が異なっているとしたら、あなたはその人物と一緒に仕事をしていても、永遠に生産性が高まらないかもしれません。 

 

 いま私はあくまで「生産性」をひとつの例として挙げましたが、これは他のどんな言葉にも当てはまることです。そして成果が出せず苦しんでいるビジネスパーソンの言動を細かく観察していると、ある共通点がはっきりわかります。 

 

 それは、「言葉の定義」に極めて鈍感であるということです。 

 

 もしかすると、あまりピンとこないという方も多いかもしれません。そこで今回は、研修やセミナーで頻繁に目にする「成果が出せない人が使ってしまうNGワード」を、2つご紹介します。 

 

 ご紹介するNGワードはどちらも、「言葉の定義」に鈍感だからこそ出てきてしまう言葉です。 

 

■ダメ社員は「なんとなく」で話している 

 

 私は「ビジネス数学」という教育テーマを提唱し、大手から中小企業、自治体やトップアスリートなどの人材育成をサポートしています。そのため、日々、多くのビジネスパーソンとお会いしています。 

 

 それはすなわち、多くの「ダメ社員」と少しの「成果を出している社員」との違いを目の当たりにするということでもあります。 

 

 

 その違いは、一言でいうと「なんとなく使う言葉」の多さです。その代表的な例として、いまから典型的なパターンを2つほどご紹介しましょう。 

 

NGワード①「アレ」 

 ある研修参加者が、「そっちではなくこっちをやったほうがアレだと思いますが……」と発言していました。 

 

 私はすぐに「申し訳ありません、アレとは何のことでしょうか?」と尋ねてみます。するとこの人物は「えっと……」と言葉に詰まり、説明ができません。この人物は「アレ」が何のことなのか自分自身でわかっていない状態で、つまり「アレ」という言葉を定義せずに使っているのです。 

 

 あなたの職場にも、ビジネスの大事なコミュニケーションで「アレ」という言葉を使う人はいないでしょうか。おそらくその人物は「アレ」が何なのか実はわかっていません。物事を深く思考することができていないのです。 

 

 私は優秀な経営者が「アレ」などという言葉を使うことを見たことがありません。言葉のひとつひとつの定義や意味に極めて敏感である証です。 

 

NGワード②とりあえず言っておけば伝わりそうな言葉 

 ビジネスパーソンの対話を聞いていると、驚くほど多くの場面で「自ら意味を説明できない言葉」が使われていることに気が付きます。 

 

 たとえば、ある研修で行ったグループワーク中に、参加者のひとりが「掘り起こしを実施して付加価値分の売り上げを……」と発言していました。それにつられて他のメンバーも「掘り起こす」という言葉を使って対話をしています。 

 

 そこで私は、このグループのメンバーたちに、「掘り起こすとは何をどうすることなのでしょうか。素人の私にもわかるように教えていただけますか?」と尋ねてみました。 

 

 するとメンバーたちは気まずそうに、ゴニョゴニョと説明になっていない説明をします。そしてメンバー間でも「掘り起こす」という言葉の解釈が違うことが露呈します。 

 

 つまり「掘り起こす」という言葉の定義を気にする発想がなく、その状態のまま「掘り起こす」という言葉を乱発して意味が通じ合っているフリをしていたのです。果たして彼らは実際に仕事において「掘り起こす」が実現できるのでしょうか。 

 

 このような場面は、ビジネスシーンでもよくあることだとは思います。しかし、いい大人がこのようなフリを平気でしてしまうことはとても恐ろしいことではないでしょうか。 

 

■「言葉の定義」が甘いと成果が出ない2つの理由 

 

 

 このような事例は枚挙にいとまがありません。ここで重要なのは、なぜ言葉の定義が甘い人は成果が出せないのかということです。理由は2つあります。 

 

①そもそもスタートラインに立っていない 

 繰り返しですが、生産性をあげるためには、「生産性」という言葉の意味を正確に言語化できないといけません。すなわち、言語化はスタートラインなのです。スタートラインに立つこともできない人が、目指すゴールにたどり着くことなど100%ありません。 

 

②思考停止している 

 ビジネスシーンには、とりあえず言っておけば(なんとなく)伝わった雰囲気になる便利な言葉がたくさんあります。そもそもその言葉の意味は何なのかを考えることなく、このような言葉を使ってしまいがちです。しかし裏を返せばこれは思考停止していることの揺るがない証です。 

 

 ですから、私は研修の現場において、参加者の発言の中に疑わしい言葉があった際には必ず質問をするようにしています。 

 

 「いまおっしゃった◯◯という言葉は、どういう意味でしょうか?」 

 

 この質問に対するリアクションだけで、成果を出せる人かが判断できます。しっかり自分の言葉で即答できない人には、その意図も含めて優しく(同時に厳しく)指摘をするようにしています。 

 

 この記事を読んでくださっている方の中には企業でマネジメント職をされている方もいらっしゃるでしょう。ぜひ所属しているメンバーの発する言葉に注意してください。そしてその言葉の意味が疑わしいときには、前述の質問をしてみてください。 

 

 私の教育哲学は「数学のように」仕事をするビジネスパーソンを育成することです。実は、今回のテーマであった「言葉の定義」も、まさに数学的な視点からその重要性を理解できます。 

 

 素数の研究をしたければ、まずは素数という数の定義がされていなければなりません。三角形の勉強をしたければ、まずは三角形という図形の定義が厳密にされていないと勉強を始めることができません。数学は言葉の定義が厳密にされていないとスタートできない世界なのです。私はそれと同じことをビジネスパーソンに求めています。 

 

 「数学のように」仕事をすることで、コスパやタイパが求められるこの時代に、合理的に、かつ最短距離で成果までたどり着く仕事の仕方が自然と身についていくのです。 

 

深沢 真太郎 :BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家 

 

 

 
 

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