( 228581 )  2024/10/31 15:52:01  
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国会内で記者会見する国民民主党の玉木代表=29日午前(写真:共同通信社) 

 

 (渡辺 喜美:元金融担当相、元みんなの党代表) 

 

 >>「【石破氏はなぜ負けた】「敵はもっと近くに置け」ゴッドファーザーは言ったのに…ブレない異端者がブレ、失った信用」から続く 

 

【図表】国民民主党が8.7倍ものレバレッジを効かせられるその仕組み。獲得した28議席で「自公+国民」の243議席を動かすことができる 

 

■ 比例票を大きく伸ばしたのは立憲ではなく国民だった 

 

 今回、立憲民主党は50議席増と大勝利のように見えるが、比例票は1156万票でなんと7万票しか増えていない。 

 

 投票率自体が約53%で戦後3番目に低いことから分かるように、自民支持者が大量に棄権したこと、60~70代の怒れる有権者が立憲に流れたことが立憲の議席増の主要因であろう。 

 

 野田代表の演説も9割がた「政治とカネ」で、国民の関心の高い経済の話は極端に少なかった。 

 

 消費税減税が政策にないし、野党共闘もできなかった。自公のような「政党ブロック」形成の動きもない。 

 

 今後、立憲主導型の政権交代は想像し難い。ただ、消費税増税勢力の自民とは「たくさん集めてたくさん配る」基本方針が一致するので、増税連合はあり得ると思う。森山幹事長も大連立は否定しない。 

 

 国民民主党は予想以上に得票した。比例は358万票増の617万票で驚異的だった。 

 

 比例名簿登載者が足りなく3議席を他党に譲るオマケもついた。 

 

 政策も以前はガソリン税減税や原発政策で支持基盤の自動車総連、電力労連の代弁が目立ったが、今回は玉木雄一郎代表の発信力で20~30代のZ世代・α世代の心を掴んだ。 

 

 「手取りを増やす」というキャッチコピーは分かりやすい。減税系の政策はマクロ政策としても筋が良い。 

 

■ 維新は「ちょっと方針が違う議員をすぐ除名する」体質に難あり 

 

 維新はせっかくのチャンスを逃した。比例は295万票減の511万票しか取れなかった。ますます大阪セントリズムの地域政党化している。 

 

 東京1区から出た音喜多駿政調会長の惨敗がシンボリックだ。ちょっと方針が違う議員をすぐ除名する左翼政党のような体質がダメ。 

 

 馬場伸幸代表が辞任して体制を見直すことが必要だろう。 

 

 安倍さん時代は維新の橋下・松井組と良い関係があった。今の維新には石破さんとの信頼関係もなく、あるのは自公との選挙摩擦ばかり。 

 

 維新との連携協議は政治的ハードルが高い。ただ、大阪は万博を控えており、利害と打算による一部争点ごとの協議はあるだろう。 

 

 公明も悲惨な結果だった。自民系候補者が「比例は公明」と連呼しても115万票減の596万票。石井啓一代表もあえなく落選した。 

 

 自民の非公認候補に公明推薦を出しているのだから、いくら2000万円でやられたと恨み節を言ってみても身から出た錆というもの。「下駄の雪」も随分小さくなってきた。 

 

 

■ 国民民主はレバレッジを効かせられる絶好のチャンス 

 

 自民や立憲が国民や維新に首班指名決戦投票での連携話を申し入れているが、無理だろう。政治的な自殺行為になるからだ。 

 

 今後あり得る展開は、争点ごとのパーシャル(部分)連合により国民民主党が「ゆ党」化することに自民が注力すること。 

 

 パーシャル連合は玉木さんの地盤と役所の大先輩である大平正芳元総理が使い始めた言葉である。 

 

 自民にとってはキャスティングボート勢力となった国民が不信任案賛成に回らないようにしたい。各種法案・予算案も国民が賛成すれば衆院通過する。 

 

 逆に言えば、国民が28議席で243議席(自公215+国民28)のレバレッジを効かせることができるのだ。なんと8.7倍のレバレッジ。国民にとっては政策実現の絶好のチャンス到来と言える。 

 

■ 世耕氏がかつて明かした「自民・国民合併案」 

 

 霞が関官僚は国民詣でをすることになる。玉木さんは良くご存知だが、霞が関はその過程で、国民議員の刷り込みや国民議員を使った腹話術を駆使する。 

 

 次の段階は国民を与党国対に入れ、「閣外協力」させること。参議院選挙前は無理だと思う。実は既に国民元参議院議員の矢田稚子氏(パナソニック労組出身)が岸田総理の補佐官になっており、石破官邸でも留任している。 

 

 連合分断・国民取り込みは岸田政権での主要課題だった。 

 

 国民との合併(比例名簿の統合)も一時検討されたようだが、自民の参議院比例区当選議員のうち下位の方は、国民の労組組織内候補者よりも当選ラインが低く、自民候補が落選する、という理由で御破算になったと世耕弘成元参議院幹事長から聞いたことがある。 

 

 因みに2022年参院選では15万票台で矢田稚子氏は落選、自民の最下位当選者は11万票台だった。 

 

■ 自公・国民の連立話は参院選後か 

 

 玉木さんが若くして党首になった経緯は、小池百合子東京都知事の作った希望の党代表を小池さんのご指名で引き継いだからである。 

 

 今では覚えている人も少ないが、希望の党ほどパッと出てパッと消えた政党はない。小池さんの「排除します」発言で急速に瓦解した。 

 

 小池さんは選挙後の大衆団交のような旧民主党系議員の体質に嫌気が刺し、辞任。玉木代表となった。 

 

 希望の党の事務局長には私の秘書を弁当持ちで出向させていたので、表・裏良く知っている。 

 

 因みに、都民ファーストの会の都議会議員には連合の組織内議員が何人もいて、玉木さんは今年の都知事選にも応援に入っている。 

 

 一方、小池さんは2012年の総裁選で石破さんを応援して以来、良い関係は続いているようだ。 

 

 自公と国民の連立話は参議院選挙の後になる。それまで石破さんが総理でいられるか否かは、ひとえに自民党内事情にかかっている。 

 

 今は散発的退陣論に留まっているが、反石破勢力が離党覚悟で20人以上集まれば、キャスティングボート勢力になり得る。 

 

 だが、高市氏の最大の後ろ盾であった旧安倍派は選挙前の50人から22人に激減しており、元気がない。 

 

 石破さんが延命を図るには、「気がついたらアベノミクスやってました」とばかりに国民民主党の政策を取り込むこと。そして、「敵はもっと近くに置け」精神で高市幹事長を起用することだろうか。 

 

 ついでながら、西田敏行さん演じる蛭間院長は「ドクターX」大門未知子を近くに置き、コントロール不能となって自滅するが、延命には役だった。 

 

渡辺 喜美 

 

 

 
 

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