( 229664 )  2024/11/03 15:53:17  
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自転車に対する罰則が厳しくなった道路交通法改正が行われ、2024年11月から「ながらスマホ」と「酒気帯び運転」への罰則が厳しくなる。

自転車でながらスマホをした場合や酒気帯び運転をすると、懲役や罰金が科せられる。

また、酒気帯び運転や酒を提供する行為に対しても罰則が設けられた。

取り締まりも厳しくなる見込みで、自転車を運転する際の安全に対する重要性が高まっている。

(要約)

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今回の道交法改正では自転車のながらスマホの罰則がクルマやバイクなどに合わせられた形だ(写真はイメージです) Photo:PIXTA 

 

 11月1日、道路交通法が改正され、自転車に対する罰則が厳しくなった。新設された罰則もある。今回の改正ポイントは、自転車を運転中の「ながらスマホ」「酒気帯び運転」への罰則の厳しさで、懲役や罰金が科せられることもある。さらには、酔って自転車を運転する人に「酒を飲ませた人」「自転車を貸した人」も罰せられることになった。おそらくこのタイミングで、取り締まりも厳しくなると思われる。本記事では、今回の改正ポイントや罰則の内容をわかりやすく解説する。(編集者・ライター AD高橋) 

 

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● 11月1日、道路交通法改正で 自転車に対する罰則が厳しくなった 

 

 道路交通法が改正され、2024年11月から、自転車に対する罰則が強化された。注目ポイントを抜き出してみる。 

 

■自転車の「ながらスマホ」の罰則強化 

<禁止事項> 

・自転車を運転している最中にスマホで通話すること(ハンズフリー装置を併用する場合等を除く) 

・自転車を運転している最中にスマホの画面を注視すること 

<2024年11月からの罰則内容> 

・自転車運転中にながらスマホをした場合:6カ月以下の懲役又は10万円以下の罰金 

・自転車運転中にながらスマホにより交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合:1年以下の懲役又は30万円以下の罰金 

■自転車の「酒気帯び運転」「ほう助」に対する罰則を新設 

<禁止事項> 

・酒気を帯びて自転車を運転すること 

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供すること 

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供すること 

・自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗すること 

<2024年11月からの罰則内容> 

・酒気帯び運転:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合:自転車の提供者に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金 

・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合:酒類の提供者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 

・自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合:同乗者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金 

 今回の道交法改正のポイントは3つある。(1)自転車のながらスマホの罰則が「5万円以下の罰金」から懲役刑を含む内容に厳罰化されたこと、(2)これまで酩酊状態の「酒酔い運転」しか処罰の対称ではなかったものが、クルマやバイクと同じ「酒気帯び運転」も懲役刑を含む内容で処罰されることだ。酒気帯び運転は「血液1mLにつき0.3mg以上又は呼気1Lにつき0.15mg以上のアルコールを身体に保有する状態で運転すること」を指す。さらに重要なのは、(3)自転車を運転する可能性がある人に酒を出したりすると、酒を提供した人にも懲役刑を含む罰則があるという「ほう助」が盛り込まれたことだ。 

 

 

● スマホを見ながら自転車で走る「ながら運転」 起訴されて有罪になれば前科がつく 

 

 運転中に携帯電話などを操作する「ながら運転」は、1999年11月から禁止されたが、単に使用するだけでは罰則がなかったので、ながら運転の防止にはあまり効果がなかった。そのため2004年11月に罰則を強化。これを機にクルマやバイクを運転する際にハンズフリー通話が普及した。 

 

 その後、スマホが普及すると通話だけでなく運転中にさまざまなアプリを操作するために画面を注視する人が増え、事故も増加した。そのため、2019年12月から、ながらスマホ防止のために罰則が強化された。 

 

 自転車を運転している最中の罰則は厳罰化されていなかった。今回の道交法改正では自転車のながらスマホの罰則がクルマやバイクなどに合わせられた形だ。ただ、運転免許が必要な車やバイクは違反した際に違反点が加算され反則金を納める「行政罰」が定められるのに対し、自転車は行政罰がなく、「刑事罰」(懲役や罰金など)のみになる。もし取り締まり後に起訴されて有罪となれば罰が科され、前科がつくことになる。 

 

 クルマを運転していたり、歩道を歩いたりしながら道行く自転車を見ると、危ないと感じることも多いだろう。筆者もクルマを運転しているとき、スマホを操作しながら車道を走る自転車が後方確認もせずふらっと車道の真ん中に出てきてヒヤッとしたことが何度もある。読者諸兄も同じような経験をしたことがあるはずだ。 

 

 私事だが、筆者の母は繁華街を歩いている際にながらスマホをしていた自転車にぶつかられて転倒し怪我をしたことがある。自転車は「危ないな!」と吐き捨てて、倒れた母の介抱もせずそのまま立ち去ったそうだ。 

 

● LUUPやシェアバイクの普及で飲酒運転が社会問題に 自転車の飲酒運転を取り締まる検問も 

 

 自転車の飲酒運転も以前から問題視されていて、中でもここ数年は急速に普及した電動アシスト自転車や電動キックボードのシェアリングサービスをタクシー代わりに利用する飲酒運転が社会問題になっており、警察は取り締まりを強化。自転車の飲酒運転取り締まりを目的とした検問も行われている。 

 

 道路交通法で自転車は「軽車両」に分類される(第二条十一の二)。そして同法第二条九を見ると、「車両」の定義として自動車、原動機付自転車、軽車両およびトローリーバスと書かれている。 

 

 

 だが、普段クルマやバイクの運転をしている人はまだしも、買い物などで自宅の近所を自転車で走っているだけでクルマやバイクの運転はしない人だと、自転車もクルマやバイクと同じように道路交通法に定められたルールを守らなければいけないことを意識していないのが現状だろう。 

 

 たとえば信号機がある横断歩道。車道を走る車両は、車道の信号が赤に変わったら青に変わるまで停止する。これは車道を走る自転車にも適用されるルールだ。しかし現状はクルマの間をするすると抜けて赤信号を横切る自転車が少なくない。生活道路にある一時停止の標識がある交差点でも安全確認せずに飛び出してくる自転車をよく見かける。 

 

 自転車に関する道交法改正といえば、2015年6月1日に悪質運転危険行為により3年間で2回以上摘発された違反者への自転車運転者講習が義務化され、2023年4月1日から自転車利用者のヘルメット着用が定められた。ただし道路交通法には「自転車の運転者は、乗車用ヘルメットをかぶるよう努めなければならない」という“努力義務”になっている。 

 

 あくまで筆者の推測だが、今回の道交法改正により、ながらスマホと酒気帯び運転の取り締まりがかなり強化されると思われる。理由は、全交通事故に占める自転車事故の構成比が年々増加しているから。その中でも特に、運転者が携帯電話等使用の状態であった場合の交通事故件数が増えているためだ。 

 

● ながらスマホによる自転車事故に「通話」は少なく ほとんどが「画面を見ていたことによるよそ見運転」 

 

 今は多くの人が地図アプリを使って目的地に向かうが、これは自転車でも同じ。ハンドル部分に自転車用のスマホホルダーを付けたり、片手にスマホを持った状態で地図を見ながら自転車を運転している。中には自転車を運転しながら動画を観ている人もいるから驚きだ。ながらスマホによる自転車の事故は、通話ではなく画面注視がほとんどを占めているという。 

 

 自転車の酒気帯び運転は、前述したようにタクシー代わりに自転車のシェアリングサービスを使う人が増加。酩酊状態ではないし、タクシーよりも安く利用できるからと軽い気持ちで利用するのだろうが、酒気帯び状態でも自転車の死亡・重傷事故率は約1.9倍になることがわかっている。 

 

 軽車両である自転車は原則、車道の左側を通行する。近年は普通自転車専用通行帯や自転車ナビラインなどが整備され、自転車が車道を通行することが周知されてきた。一方でクルマやバイクと一緒に車道を走るため、交通ルールを正しく理解していないことが原因の事故も増えてしまっている。クルマやバイクと違い運転免許が必要ない自転車の場合、運転者が交通ルールを知る機会も限られる。特に年配者は学校などで自転車の交通ルールを教わる機会がないので深刻だ。 

 

● 自転車事故でも賠償責任は生じる 道交法を守って安全運転を! 

 

 しかも今は自転車だけでなく、電動キックボードやモペット(ペダルがついた電動二輪車。これは道交法では「原動機付自転車」になり、ペダルで漕いでいたとしても運転免許を取得・携帯したうえで保安基準を満たす装置をつけ、ナンバープレートを表示し、ヘルメットをかぶって運転しないと違法になる)も走っているため、一層の注意が必要だ。 

 

 「自転車は交通弱者だから何かあっても守られる」と思っている人もいるが、自転車と歩行者の事故だと交通弱者は歩行者になる。また、車やバイクとの事故でも過失割合が出され、賠償責任が生じる。 

 

 自転車保険に加入していれば賠償が必要になった際に保険を使うことができるが、飲酒運転での事故など被保険者に重大な過失がある場合は保険金が支払われない可能性もある。自転車に乗る際はくれぐれも道交法を守り、安全運転を心がけてほしい。 

 

AD高橋 

 

 

 
 

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