( 230074 )  2024/11/04 16:57:08  
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『ロマンシング サガ2』のフルリメイク『ロマサガ2』が2024年に発売され、リメイク版は原作を保ちつつも大胆に作り変えられている。

リメイク版は原作の問題を解決し、わかりやすさを重視している。

フリーシナリオシステムやバトルシステムも大幅に改良され、より遊びやすくなっている。

リメイク作品は40-50代の古参プレイヤーや新規プレイヤーに向けられており、『ロマサガ2』は新しい要素を取り入れつつも、原作とは異なる方向性を持つ大胆なリメイクである。

(要約)

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スーパーファミコン時代の名作『ロマサガ2』がついにフルリメイク。リメイクの方向性について考えさせられる一作となっていた(画像:任天堂) 

 

 2024年10月24日に『ロマンシング サガ2 リベンジオブザセブン』(以下、リメイク版『ロマサガ2』と表記)が発売された。本作は、1993年にスーパーファミコンで発売された『ロマンシング サ・ガ2』をフルリメイクしたタイトルだ。 

 

【写真で見る】本作の特徴「閃き」の一例。電球がピカッと光りつつ技を覚える独創的なシステムだ。 

 

 昨今はゲームでもリメイクの波が来ており、スクウェア・エニックスもRPG黄金期のさまざまなタイトルを復活させている。 

 

 リメイク版『ロマサガ2』を開発したのはxeen(ジーン)で、『聖剣伝説3』のリメイク作である『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』も担当していた。今回も発売前から期待が高く、宣伝も各所でよく見かけた。 

 

 リメイク版『ロマサガ2』の驚くべき点は、ゲームのイメージは保っているものの、かなり大胆に作り変えているところにある。 

 

■「閃き」はじめクセ強の原作をリメイク 

 

 本作は、「バレンヌ帝国」の皇帝となって世界中を冒険するRPGである。皇帝として問題を解決して領土を広げつつ、さまざまな仲間を集め、世界を脅かす「七英雄」を倒すのが目的となる。 

 

 「サガ」シリーズは日本において非常に有名なRPGだが、一方でかなり独特なシステムを採用しているのが特徴となる。『ロマサガ2』から登場した「閃き」もそのひとつで、これはバトル中に電球が光り、技をひらめくというもの。 

 

 レベルアップして技を覚えるのがふつうのRPGなのだが、『ロマサガ2』においては戦っている最中にいきなり技を覚えるのだ。これはその後、「サガ」シリーズの代名詞のひとつになっている。 

 

 また、レベルの概念もなく、「技術点」なるものを稼いでいくうちにステータスが直接アップする形式である。 

 

■迷う要因だったフリーシナリオシステム 

 

 フリーシナリオシステムも大きな特徴だ。世界各地にはさまざまなイベントがあり、それをどういう順番で攻略するかはプレイヤー次第。イベントの選択もいろいろとあり、火山噴火をあえて止めなかったり、皇帝なのに人魚と恋に落ちて駆け落ちすることも可能だ。 

 

 

 原作ではこのゲームシステムがかなりわかりづらかった。道案内が乏しいのでどこに行けばいいのかわからないこともよくあり、自由さが魅力ではあるものの迷う人を生む要因にもなったのだ。 

 

 また、味方が敵に魅了されてしまう「テンプテーション」という技の対策を用意しておかないとボスに勝てなかったり、どこでもセーブできるシステムのせいで、ラスボス前に記録すると完全に詰みとなることすらあった。 

 

■「わかりやすさ」のため方向転換 

 

 リメイク版『ロマサガ2』では、原作にあった問題を解決するため、とにかくわかりやすくなっている。 

 

 どこへ行けばイベントが進行するかはもちろん、ステータスアップも可視化されて通常のレベル制のようになっている。バトル中にどの技を使うと閃きやすいのかなど、隠されていたデータも明らかになった。セーブも特定の場所でしかできず、詰みもほとんどなくなったといえる。 

 

 選択によって展開が変化するといった要素や、各展開のセリフなどはそのまま残っている。ただ、ゲームシステムの見せ方はかなり変化している。バトルシステムもかなり手が加わっており、原作は基本的に短期決戦だが、リメイク版のボス戦は敵の弱点を狙いつつ長期戦を繰り広げるものになった。 

 

 前述のように「サガ」シリーズは特殊なRPGで、ナンバリング最新作である『サガ エメラルド ビヨンド』はバトル中の回復魔法がないほど尖っていた。 

 

 しかし、リメイク版『ロマサガ2』はとにかくわかりやすくして、じっくり育成するようなゲームにする仕組みを用意し、ふつうのRPGにかなり寄せている。もちろんキャラクターやストーリーはそのままなのだが、思想がまったく違うゲームになったといえる。 

 

■リメイク作品は誰のために?  

 

 ゲームをリメイクする場合にはいくつかの方向性がある。まったくそのままにグラフィック品質などを上げることもあるし、原作の意図をうまく拾いつつしっかり手を加えるものなど、手法はさまざまだ。 

 

 リメイク版『ロマサガ2』はとにかく遊びやすくしており、作家性とでもいうべきものが抜けている。原作のとっつきにくさを含めて好きな人からすると衝撃ではあるが、一方で商売としては理解できる。 

 

 このリメイク版を遊ぶのは、当時原作を遊んだ40~50代前後の人たち、そして過去の名作を触ってみようと新しく触れる人たちだろう。かつてゲームを楽しんでいた人たちに、いま尖っているRPGをプレイする気力はあるだろうか?  ただ昔を懐かしむのであれば、むしろ穏やかに遊べるほうがいいだろう。 

 

 新しく入る人たちにも、入門しやすいほうがよいと考えられる。ゆえに、ある意味ではプレイヤーのほうを向いたリメイクといえるだろう。もっとも、ここから『サガ エメラルド ビヨンド』のほうに流れていくとは考えにくいほど方向性が違うのだが。 

 

 いずれにせよ、リメイク版『ロマサガ2』は表面的な雰囲気こそ原作そのままに見えるが、中身を大きく変えた大胆不敵な作品といえるだろう。 

 

渡邉 卓也 :ゲームライター 

 

 

 
 

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