( 230596 )  2024/11/06 02:37:55  
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若年出産の経験を発信し続けている横井さん。当時の彼との写真(本人提供) 

 

14歳、中学3年生の時に妊娠し、1人で産む決断をしたシングルマザーの横井桃花さん。若年出産の経験や母子の日常をありのままに隠さず、メディアやSNSで発信し続けています。ご自身の経験とともに、性教育の必要性も訴え続けている横井さんに、子どもたちにどのように性教育を教えたらいいのか、お話を伺いました。 

 

【画像6枚】当時の彼と撮った写真や成人式の写真、妊娠中の写真など 

 

――小さい頃からの性教育は大事だと、今、こうしてメディアでご自身のリアルな経験を話そうと思ったきっかけは? 

 

横井桃花さん(以下、横井さん):妊娠が分かったばかりの中学3年生の頃、スマホでいくら調べても、若くして妊娠・出産をしている似た境遇の人や経験をした人の情報が全く出てこなくて、「どうしたらいいんだろう?」と不安になりました。 

 

自分はこの後、どういう選択をするのが正解なんだろうかと。参考にしたい情報に全くたどり着けなくて、ひとり不安に陥りました。だから、その時の私と同じような悩みを抱える人の力になりたいと思って。私と同じような経験をしている人は潜在的にもっといるのかもしれないけれど、世間の目も厳しいし、まだまだ理解してもらえない状況があって、皆が皆、表に出られるわけでもないので。 

 

私には、自分の経験を通して伝えていけることがたくさんあるんじゃないかと思ったのがきっかけです。 

 

――世間の厳しい目や偏見などもある中で、メディアに出ることによって、さまざまな意見が集まることを予想していましたか? 

 

横井さん:そうですね、厳しい意見や中傷などが集まることも想定しました。けれど、それでは進まないな、変わらないな、って。しんどさを感じたり、悩んでいたりする人たちが生きやすい環境になればとの思いで決心しました。ここは自分の頑張りどころなんじゃないかな、と。 

 

――スマホでいろいろな情報を探したということですが、当時は親御さんなど近しい人に妊娠の話を相談することが難しかったのですね。では、妊娠が分かった頃、学校や家庭で性教育はどのようなことを教わっていましたか?横井さんには当時どの程度の性の知識があったのでしょうか? 

 

横井さん:小、中学校で性教育は受けましたが、教科書にあることをただ読んだだけ、あまり詳しく教わらなかった記憶があります。女子と男子は別室で、女子のほうはそんな程度です。 

 

男子のほうは、先生と生徒が一緒になってふざけてるような印象を覚えています。男子が廊下の端で性の話題でふざけているところに、先生も大きい声で「そういう時は避妊しろよ。ゴムつけろよ」というようなことを言っていて。生徒側は、大人が「ゴム付けたらいい」と言ったのだと受け取りますよね。避妊したとしても、性行為の延長線上に妊娠する可能性があることも伝えてないし、行為そのものを軽視してるように感じられる発言だと思います。これについては、今後もっと性教育がこれでいいのか、変化してほしいところです。 

 

母からは、直接はっきりと性教育をされたわけではないですが、性にまつわる会話がないわけでもなく…とはいっても親子なので、真正面から詳しくは話しませんでした。ネットや友達同士の会話で、ぼんやりと知ってはいました。避妊の必要性も。コンドームなどで避妊をしたとしても、妊娠する可能性があることも一応知ってはいましたね。 

 

――妊娠後、初めて知った性の知識はありますか? 

 

横井さん:中絶は、女性のみが抱える負担ということを改めて実感しました。出産も、母子ともに危険な状態になることもあると。妊娠して初めて、調べて知りました。 

 

あとは、里子のことも。出産費用、その後育てていくこと、里子に出すとはどういう流れなのか、自分で育てるにはどれくらいお金がかかるのか、っていうことも、出産を自分事に考えて初めて知ったことばかりでした。 

 

とはいえ、出産やその後の養育などにかかる費用がどのくらいか金額はわかっても、実際には、中学生の私には、その金額の感覚があんまりピンときてなかったはず。中絶の料金が数十万、という金額の大きさにも衝撃を受けたのも覚えています。 

 

 

――中絶にも大きなお金がかかりますよね。では、小・中学生の頃、性の知識で知っておいた方が良かったと思うことはありますか? 

 

横井さん:周囲に助けを求める状況があったら良かったなと思います。当時付き合っていた彼から無理やり関係をもつことを強いられ、力で負けたり、諦めてほしくても通用しない状況だったりと困っていたのに、誰にも言えませんでした。 

 

ほかにも、もし襲われたらどうするのか、例えば中絶はどんなものなのか。出産したらどういう生活になるのか、というリアルなことも、詳しく知っていたかったです。 

 

それは女性側だけじゃなくて、男性側も同様に知っていたら、こういうことは起きにくくなるんじゃないでしょうか。 

 

◾️体の関係への同意も、避妊具を買うお金もなくて… 

 

――無理やり彼からなんて…、互いの同意はなかったのでしょうか? 避妊はしましたか? 

 

横井さん:付き合っているのだから、彼にしてみれば体の関係はあって当然、「いいじゃん」という対応でした。同意ではなく、私は「やめて、いやだよ。こういうことはまだ早いからしたくない」ときっぱり伝えたものの、彼としては「好きだからする」という考えでした。 

 

力ずくで迫られ1回関係を持ってしまってからは、その1回のことを持ち出して、要求がどんどんエスカレートして、何度も何度も求めてきました。その度に毎回、「妊娠しちゃうから嫌だ」と伝えても全く聞かず。私は拒むことにも疲れ果て、毎日がしんどくストレスになってしまって。 

 

彼は、子どもができたっていいじゃん、産めばいいじゃん、みたいな感じでした。私にとっては、それどころではないんですけどね。当時はなんだか訳がわからなくなって、自暴自棄になる自分もいました。 

 

本当に、何度も性行為をしたくないと伝えても、結局無理にされてしまい、諦め半分でせめて避妊はして欲しいと頼みましたが、避妊具を買うお金がないし、薬局で買うにも中学生には買いづらかったのでしょう。私自身もお小遣い制ではないので、避妊具を買うお金もない状況で。 

 

最近、学生に私の経験を伝える講演をするために、コンドームはいくらするんだろうって調べてみたら、千円くらいするので、中学生には無理だよなぁ、って実感しましたね。 

 

 

――初めて産婦人科受診された時には、既に中絶できない時期だったとか。 

 

横井さん:妊娠何週目までなら中絶できるとか、当時は知りませんでした。月経周期や排卵日、性交した日などで妊娠何週目かを算出すると思うのですが、その計算方法も中学生の時はわからなくて。 

 

生理が遅れていたため、妊娠している自覚はあり、いつまでに病院に行ったら中絶できるなどの情報をスマホで調べていましたが、正直まだ間に合うと思っていて…。初めて受診した時には、もう8か月になってました。 

 

――お母さんと一緒に産婦人科へ行かれましたか? 

 

横井さん:はい、初めて母に打ち明けてからすぐ病院に行くことになり、そこで妊娠8か月だと診断され、出産予定日が迫っていることに驚きました。 

 

なんで妊娠しちゃったのかっていうのも、少しして母から聞かれましたが、私も産んで育てる覚悟、心の整理をつけないといけなかったから、母に伝える余裕もなかったです。そのまま7年も経ってしまいましたが、先日TV出演で語った妊娠するまでの彼との経緯を母が知って、驚いていました。 

 

◾️「育てたい」と言っていたはずが… 

 

――彼にはどのように伝えたのですか? 

 

横井さん:体の違和感やつわりもひどく、妊娠を確信した初期の頃に、彼には伝えていました。その後しばらく経てきちんと産婦人科を受診した後に携帯に連絡をしたら約2週間音信不通になり、その後やっと彼や彼の家族と今後の話し合いの場を持てたのですが、彼からは「俺、知らない」という言葉が出てきました。「そんなわけないのに」と思いましたが、私は出産の準備もあるし、もうそれどころじゃなかったですね。 

 

彼が子を産んでほしい、育てたいって言ってくれていたので、私からでなく自分で両親に話して欲しいともはじめから伝えていました。「じゃ俺が話す」と言ったものの、結局妊娠8か月がわかった時点までズルズルダラダラ経過していました。 

 

正直、その音信不通だった2週間で彼は、私の家族と話す時の準備を両親とともに詰めていたのかなと思います。彼も育てたらいいじゃん、と言っていたはずが、里子に出そう、と当初の話を変えてきたわけです。彼の親御さんにも責任はあるはずですし、逃げ腰な感じは正直否めませんでした。 

 

――当初の話とはちがう形になっていったのですね。後編では、それでも産んで育てると決めた経緯、決断までの覚悟、子の認知や養育費問題について、経験談を伺いました。 

 

【お話を伺ったのは】 

横井桃花さん 

2002年生まれ。14歳で妊娠、15歳で出産した男の子の母。同じような境遇で悩む人の力になりたいと、自身の経験をさまざまなメディアで発信。『令和の虎』出演の実業家・浅井純子氏直伝の暗闇ヘッドスパ・株式会社純度100にてセラピスト修行ののち、今年二代目社長に就任。若い学生や妊婦さんをはじめ、悩みを抱えた多くの人々を施術で癒し、今後はみんなで助け合えるような長屋のような環境、居場所づくりにむけ準備中。 

 

取材・文/羽生田由香 

 

 

 
 

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