( 230956 )  2024/11/07 02:58:09  
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セブン-イレブンの商品を、人気料理研究家のリュウジ氏がレビュー、その酷評っぷりや商品のチョイス、さらにはスタッフの振る舞いもあり、炎上騒ぎとなっている。ネット戦略に長けたリュウジ氏だが、今回は「防げた炎上」だったと言えそうだ(撮影:今井康一) 

 

 セブン-イレブンの「上げ底弁当」疑惑をめぐり、YouTubeを中心に活動する人気料理研究家のリュウジさんが、SNSで炎上している。スタッフが選んだ商品をレビューしたのだが、用意されたラインナップに「定番ではない」「ただの炎上便乗では」などと、ツッコミが入ったのだ。 

 

【画像18枚】酷評されたセブンの商品はこんな感じ 

 

 商品選定について、リュウジさんらは謝罪したが、その直後にセブンの競合であるファミリーマートとリュウジさんのコラボレーションが発表されたことで、そのタイミングの悪さから、より火に油を注ぐことになった。 

 

 ネットメディア編集者として、これまで幾多の炎上を見てきた経験からすると、ここまで燃えさかってしまうと、しばらくは収まらないと予想している。その要因について、考察してみよう。 

 

■「炎上に乗っかった便乗だ」と批判が相次ぐ 

 

 セブンをめぐっては、運営するセブン&アイ・ホールディングス(HD)の経営方針転換で揺れているなか、文春オンライン(2024年10月25日公開)に掲載されたセブン&アイHD専務で、セブン-イレブン・ジャパン社長である永松文彦氏の発言が話題になっている。 

 

【画像18枚】リュウジさんが酷評レビュー、セブンの商品を買って検証してみると… 

 

 文春記事で永松氏は、セブンの弁当が「上げ底」になっているといったウワサに対して、「なってませんでしょう? (笑)」「アコギなことはできないんですよ」「事実をもって投稿してほしい」と否定。強気の発言から、Xでは「上げ底弁当」がトレンド入りし、炎上を招いた。 

 

 その話題が盛り上がるさなかの10月26日、リュウジさんのYouTubeチャンネルに投稿されたのが、「上げ底弁当でめちゃくちゃ炎上してるセブンの弁当が本当に『やっている』のかガチレビューします」と題した動画だ。 

 

 スタッフが用意した「売れ筋、新商品、定番」の商品を、リュウジさんが実際に食して、「上げ底」を確認するとともに、商品レビューするといった構成となっていた。結論から言えば、動画冒頭からリュウジさんから「これだけ炎上しているなら、(上げ底戦略から)撤収してるんじゃないの?」との予想があったように、明確な「上げ底」と認定される商品はなかった。 

 

 つまり「上げ底」をフックにしつつ、料理研究家ならではの「味の評価」に終始した内容であったが、多くの視聴者には、重箱の隅をつついて「たたく要素を探している」ように見えたようだ。 

 

 

 あまり知名度の高くない商品も多かったことから、SNSや動画のコメント欄には、「炎上に乗っかった便乗だ」「スタッフが燃やそうとしている」といった指摘が相次いだ。 

 

■好評を博していた「食べ比べ」動画 

 

 これらの批判を受けて、10月31日には「セブンの商品を酷評したら炎上してしまった件についてもう一度チャンスをください」と題した動画を公開した。 

 

 リュウジさんは冒頭からスタッフと並んで謝罪しつつ、改めて「(スタッフが)セブンの“売れ筋”を事前に全部食べて今日持ってきた」と紹介した。スタッフも「僕の“リサーチ不足”と、リュウジさんに対する態度で、皆さんに不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」と頭を下げた。 

 

 リベンジとなった2本目では、高評価の商品が続出し、エンディングでは改めて「前回、“学び”のない動画になってしまい、お蔵入りも考えた」としながら、スタッフの気概から「せっかく持ってきてくれたものをぜひ出したい」と、公開に至った経緯を説明した。 

 

 リュウジさんは、自宅でもクオリティーの高い料理を自炊できる「至高のレシピ」や、二日酔いのだるい状態でも作れる「虚無レシピ」といった、家庭用の調理動画で人気を集めている。ここ数カ月は、市販品を並べての「食べ比べ」動画でも好評を博していた。今回のセブン動画も、ここにカテゴライズされる。 

 

 人気料理研究家による率直な評価は、これまでも話題になってきた。9月には弁当チェーン店「ほっかほっか亭」の商品レビュー動画を上げたところ、運営企業である「ほっかほっか亭 総本部」商品本部本部長名義でのXポストが投稿された。 

 

 そこで同社は「どう改善したらより美味しくなるかを議論させていただき、より良いものをリニューアル発売させていただければ」と、商品開発への協力をオファー。やりとりをふくめて、ネットユーザーから注目をあびた。 

 

■炎上が続くなか、ファミマコラボを発表 

 

 しかし、今回の「セブン酷評」は、しばらく尾を引くことになりそうだ。その最大の要因は、競業であるファミマと、リュウジさんのコラボレーション商品が11月5日から販売されたことにある。 

 

 今回は至高シリーズの商品を元に、麻婆豆腐&炒飯、トマトパスタ、ペッパーベーコンエッグおむすび、上海風焼そば、チキン南蛮の5品が、期間限定で発売される。ファミマがコラボを発表したのは11月1日。つまり動画2本目の公開翌日だった。 

 

 

 ファミマコラボを受けて、SNS上では「ファミマを上げるために、セブンを落とすような動画を公開したのではないか」といった批判も見られつつある。このままの状態が続けば、完全な鎮火はかなり先になりそうに思える。 

 

 リュウジさんと言えば、これまで「忖度なしの炎上上等」で評価をすることで知られていた。とくに有名なのが、「味の素」の多用をめぐる、アンチとの舌戦だ。議論となりがちな「うまみ調味料への批判」に真っ向から対抗し、2023年には『料理研究家のくせに「味の素」を使うのですか?』(河出新書)なる反論書まで刊行した。 

 

 料理への愛情から、信念を持って意図的に「火に油を注ぐ」こともあり、炎上ウォッチャーである筆者としては「果敢な炎上」だと評価してきたのだが、今回のセブン動画については「避けられた“残念な炎上”」だったと言わざるを得ない。 

 

 その理由には、「クオリティーコントロールが不足していた」「タイミングを見誤った」「ニーズと近いようで遠かった」の3点があると考えている。 

 

 1点目から言えば、スタッフが2本目の動画で謝罪していた通り、「リサーチ不足」でしかない。社長発言の時流に乗るとしても、なんとなく企画が固まっていないまま、焦って撮影に突き進んでしまったのではないかと感じるのだ。 

 

 実はリュウジさんは、1本目の動画内で、予防線を何度も張っていた。「炎上させたいの?」「売れ筋なんだよね? (スタッフに『定番だ』と返されて)そうなんだ……」と懸念を示したり、「これから弁当出すのよ俺。どことは言えないけど。そん時、ボロカス言われんぞ」と、ファミマコラボと思われる件に触れたり。 

 

 ついには「お蔵入りの可能性あるよ。俺の評判がすごい悪くなるよ」とまで発していたが、結論から言えば、お蔵入りにしていたほうが良かったように思える。 

 

■個人からチームになることで生じる壁 

 

 そこに2つ目の要因である、タイミングの問題が重なる。リュウジさんはもちろん、スタッフ側も、もうすぐファミマコラボの発表があることは認識していたはずだ。その点、「今この動画を投稿する必要があるのか」「もし投稿したら、どのような印象を与えるのか」について、どの程度考えていたかは疑問だ。 

 

 スタッフに起因する炎上でも、最終的に矢面に立つのは「出役」だ。加えて今回は、飛び火してファミマの印象も悪くなりかねない。もちろんスタッフひとりの責任ではない。リュウジさんをふくめた、チーム全体として、これが最適解だったとは思えない。 

 

 

 3点目については、そもそも「気軽な自炊」を求めてきた層に、「食べ比べ」はどう見えるのかという観点だ。どちらも「食」の点では共通しているが、手に届くまでのプロセスは異なる。価格帯や入手可能性などから、完全に同じターゲット層とは言えないだろう。わずかな違和感を感じていた、これまでの視聴者が反感を覚えていた可能性もある。 

 

【画像18枚】リュウジさんが酷評レビュー、セブンの商品を買って検証してみると… 

 

 YouTuberは、人気が増えるごとに、「出役」だけでなく、スタッフなどの力を借りざるを得なくなる。しかし、関係者が増えれば増えるほど、クオリティーコントロールも難しくなる。 

 

 出役の個性に依存するYouTuberビジネスには、個人からチームになることで生じる壁もあるのでは、と感じさせる事案だった。 

 

■ちなみに、そばや弁当を買って検証してみると… 

 

■弁当はと言うと… 

 

■ビリヤニの容器は… 

 

城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー 

 

 

 
 

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