( 231346 )  2024/11/08 01:58:40  
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写真はイメージです Photo:PIXTA 

 

 三菱UFJアセットマネジメントのインデックスファンド、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産が、過去最高を記録したと報じられた。個人投資家を中心に今もなお、注目度が高い米国株。しかし筆者は、そんな米国株に「終わりの始まり」が近づいているのではないかと考えている。その理由とは。(アレース・ファミリーオフィス代表取締役 江幡吉昭) 

 

● 米国株の「終わりの始まり」が近づいている!? 心得ておきたい投資の格言 

 

 米国株は長らく右肩上がりの成長を続け、多くの個人投資家や世界中の機関投資家・ファンドなどから魅力的な投資先として重宝されてきました。しかし、最近の動向を見ると「終わりの始まり」が近づいているのではないかと考えざるを得ません。 

 

 10月28日、日本経済新聞は、「スリムS&P500がグロソブ抜く 投信の残高、歴代最大」というタイトルでニュースを配信しました。三菱UFJアセットマネジメントのインデックスファンド、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」の純資産が、過去最高額に到達したという内容でした。 

 

 このニュースを見て、私はある言葉を思い出しました。 

 

 「人の行く裏に道あり花の山」――投資の格言です。裏を返せば、世の中の大多数の人が進む道を選んでいては勝てない、ということです。 

 

 歴史を振り返ると、人気を博した投資テーマは、頂点に達した後、数年内に下落し、10年程度は復活できませんでした。ということは、米国株の代表的指数S&P500も、そろそろピークを迎えたといえるかもしれません。 

 

 少なくとも、私はこれから新規で米国株には投資できないと考えます。あとは、利食い時を見極める、もしくは大幅な下落を待ってでないと、この資産への投資は危険ではないかと。 

 

 「投資の素人が集まると、そのテーマは終わる」――これが投資の鉄則なのです。 

 

● 過去の歴史に学ぶ 流行した投信のその後は…? 

 

 先述の通り、歴史を見てみると、投資信託の残高が過去最高となったものは、軒並みその後、下落しています。 

 

 過去の事例その1:ノムラ日本株戦略ファンド 

 

 2000年はじめ、初の1兆円ファンドとして話題になったのが、「ノムラ日本株戦略ファンド」です。1990年代のバブル崩壊から10年たち、日本株相場は底入れしたと考えていた時代。「今度こそ日本株」と考えた野村証券が募集開始した巨艦ファンドでした。 

 

 しかし、直後にITバブルの崩壊期が重なり、2000年の設定来から3年後には基準価格は6割下げ、4000円台に下落。その後、設定時の価格である1万円を回復することなく、再度リーマンショックで6割減となり、結局、基準価格1万円を取り戻すのに20年の歳月を要することになったのです。 

 

 過去の事例その2:グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型) 

 

 次に、2000年代に流行したグローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)を挙げましょう。グロソブは、毎月分配金型投信の先がけとなった商品で、個人投資家にとても人気の高い投資信託でした。 

 

 毎月分配金型とは、投信を保有するだけで毎月利息のような形で分配金が支払われるもの。ただし、本当に資産が増えているわけではなく、投資元本を切り崩して配当を払うことも多々あり、“タコ足配当”として問題にもなりました。 

 

 2002年には、先述のノムラ日本株戦略ファンドを純資産で追い抜き、1兆円ファンドとして話題になりました。最終的に、リーマンショックの直前には、5.7兆円の純資産を積み上げることになりました。 

 

 しかし、リーマンショックやその後の円高、他の毎月分配金型投信の追い上げもあり、純資産は減少。基準価格自体も、設定来の1万円を超えていない状況です。今の純資産総額は2600億円となり、完全にブームは過ぎ去ったと考えていいでしょう。 

 

 

● 日本株やグロソブのピークと似た状況の米国株 S&P500の成長率は伸び悩むという予想も 

 

 さて、現在の米国株市場の状況を見てみましょう。日本の個人投資家に人気のある「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」が急成長していることは、過去の日本株ファンドやグロソブと共通する兆候といえます。 

 

 米国株は過去10年以上にわたって堅調な上昇を続け、多くの投資家にリターンをもたらしてきました。しかし、ここにきて一部の専門家は、米国株の成長鈍化や今後のリスクを指摘しています。 

 

 ゴールドマン・サックスの最新レポートでは、過去10年間で年平均13%だったS&P500の総収益率は、今後維持が困難になるとの見解が示されました。将来のGDP(国内総生産)の伸び悩みや、現在の株価上昇をけん引しているのがアップルやマイクロソフトのような大型テックを含む上位10銘柄だということ、そして株価収益率(PER)が2000年のITバブル並みの割高さにあるということが、理由として挙げられています。 

 

 大統領選の結果次第でも株価の行方は変わっていくでしょうが、いずれにせよ、先進国とグローバルサウスとの対立など、地政学リスクが今後高まることは間違いなく、西側諸国の衰退と合わせ、先進国の株価が伸び悩むことは十分想定できる話だと考えています。 

 

 現在、投資の専門家ではないYouTuberなども“米国株(S&P500)推し”になっているのを見ていると、靴磨きの少年の法則※が該当するように感じてしまいます。 

 

 ※ある日、プロ投資家がウォール街で靴磨きの少年に靴を磨いてもらった際に、その少年から「○○の株は買った方がいいよ」と勧められ、プロからすれば、「一般大衆で、普段株を取引きしないであろう靴磨きの少年が株の話をしていることに違和感を覚え、近く株式市場が暴落する」と判断、その後、実際に大恐慌が起き(1929年10月)、米国株は大暴落したという話。 

 

 米国株に投資する日本の個人投資家が増加し続けており、それ自体は悪いことではないと思います。貯蓄偏重の日本人の資産の一部を投資に回すことは、このインフレ下には非常にいい選択です。 

 

 しかし、こうした状況は、かつての日本株やグロソブのピーク時と非常に似通っており、投資初心者が多い日本の投資家がこぞって米国株を買う現在の状況は、素直に後追いしたいとは思えません。 

 

 

● 儲かるテーマは移り変わる マネー専門家が “米国株の次”に注目するのは? 

 

 ここまで見てきたように、時代とともに儲かるテーマは移り変わります。 

 

 例えば、1990年初頭。この頃は、日本株に投資しないでどこに投資するのか、といった状況でした。そんなときにBRICS投資を考えた人はどれだけいたでしょうか。 

 

 そして10年後の2000年代。このときはBRICS投資が大ブームとなりました。こんなときに米国株に投資すべきといった人はほぼいませんでした。そして現在――。 

 

 今、「米国株投資をやめて、他の国の株式に投資しましょう」と言ったところで笑われてしまいそうです。しかし、「人の行く裏に道あり花の山」なのです。 

 

 私は具体的には日本株、そしてグローバルサウスの中から、“10年後のeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)”が登場してくると考えています。その中から、米国株に代わるものをピックアップして投資していきたいという考えです。 

 

 少なくとも、米国株式に関しては今後停滞、もしくは下落する可能性が高く、大きな調整(下落)なくしては買えないのではないかと思います。 

 

 ※本稿は筆者の見解です。投資の判断については、さまざまな情報を加味した上で、自己責任で行ってください。 

 

江幡吉昭 

 

 

 
 

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