( 231491 )  2024/11/08 16:33:09  
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富士急行線内でダンス動画を撮影し、大炎上したYouTuber。自身のチャンネルで、日本で起こった批判の声を「I got BANNED From Japan!」と題して取り上げた(画像:本人のYouTubeチャンネルより) 

 

 インバウンド客の迷惑行為が後を絶たない。10月下旬にはYouTuberとみられる外国人グループが、山梨県を走る富士急行線の電車内で突然激しいダンスをはじめる行為がニュースで取り上げられた。その場にいた乗客はあっけにとられ、恐怖を感じて電車から降りた人もいたという。 

 

【写真を見る】「迷惑すぎる!」と批判が殺到…電車内で踊り狂う外国人 

 

 「日本をナメきっているよね」 

 

 「法律で規制したほうがいい」 

 

 「警察はなんで捕まえないの?」 

 

 当然のごとく、SNSにはこうした批判コメントが殺到した。 

 

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■2つのタイプに分かれる「迷惑外国人」 

 

 日本は他人に迷惑をかけないことを非常に重んじる文化だ。小さな頃から、「周りの人に迷惑をかけてはいけない」としつけられる。だから、こうした自己中心的な迷惑行為に強い嫌悪感を覚える人が多い。 

 

 もっとも、外国人が日本人よりルールやマナーを守る意識が低いわけではないことは強調しておきたい。 

 

 筆者は最近、インバウンド研修の仕事を受ける機会が多く、実際に外国人客に話を聞くこともあるが、ほとんどの人は郷に従い、きちんと日本のルールを守ろうとしている。 

 

 ただ一方で、ルールを守らない人が常に一定数いるのは間違いない。それも、このケースのように度を超えた迷惑行為をする人が中にはいるため、「インバウンド客は困り者ばかり」というイメージがついてしまっている。だが、本当に悪質な迷惑外国人は、全体の一部であることは前提にしたほうがいい。 

 

 対策を考えるうえで、まずは迷惑外国人を正しく峻別したほうがいいだろう。ルール違反が故意によるものか、無知によるものかによって、取るべき対策が異なるからだ。 

 

 迷惑外国人は、大きく次の2つのタイプに分けることができる。 

 

1: 他人に迷惑がかかると知らずに、自覚なくルール違反をする外国人 

2: 他人に迷惑がかかると知っているのに、利己的にルール違反をする外国人 

 ちなみに冒頭に紹介したケースは、間違いなく2だろう。ただ、割合としては1の無自覚な迷惑外国人のほうが断然多いはずだ。 

 

 取るべき対策としては、1についてはとにかく相手にルールを知らせることに尽きる。相手は、はなから郷に従うつもりなのだから、ルールを知らせれば素直に従ってもらえるはずだ。 

 

 

■迷惑であることをいちいち相手に伝えたほうがいい 

 

 具体的には、目につくところに多言語表記の注意書きを掲示するのが基本である。言語は、日本語、英語、中国語簡体字、中国語繁体字、韓国語の5カ国語表記が望ましい(簡体字が中国人、繁体字が台湾人、香港人にむけたメッセージになる)。 

 

 見た目のわかりやすさにもこだわったほうがいい。伝えたいメッセージが一目でわかるように、イラストを使ったり、大きな文字でシンプルに表記したりするのがポイントである。 

 

 あとは各国のガイドブックに情報を発信したり、外国人スタッフが、相手の国の言葉でルールを説明したりする等の対応が考えられる。とにかく可能な手段はすべて駆使して、ルールを徹底的に見える化することが肝要だ。 

 

 そして私たち自身も、目の前の外国人が自覚なく迷惑行為をしているようなら、そのつどルールを教えてあげるべきだろう。「迷惑だ」と思いながら傍観するのではなく、迷惑であることをいちいち相手に伝えたほうがいい。日本語が通じなくても、カタコト英語とジェスチャーだけで意思はおおむね伝わるはずだ。 

 

 「注意したら逆ギレされるのでは?」と思う方がいるかもしれないが、心配ご無用である。むしろ、自分が恥をかかずに済んだことを感謝する人が多いはずだ。ただし相手を叱責するような態度だと、トラブルになる可能性があるのでその点は注意したほうがいい。 

 

■故意の迷惑行為に対しては断固とした姿勢を 

 

 前述した2に対しては、強制力ある措置を取るしかないだろう。「規制が緩いんだったら、やってしまえ」と考える相手に、いくらモラルを求めても効果は期待できないからだ。 

 

 当該違反者の再入場を制限する、あるいは厳しい罰則を設けるといった措置を取るべきだ。あまりにひどければ警察に通報したり、法的措置を取ったりすることを検討してもいい。 

 

 「警察はインバウンド客に甘い」という意見をたまに耳にすることがあるが、そんなことはない。最近は多くの警察署で、外国語ができる職員を配置したり、通訳システムを導入したりして外国人応対の強化を図っている。看過できない場合は、警察に頼ることを躊躇しないほうがいい。 

 

 

 ここで重要なのは、断固とした姿勢を見せることである。日本人が好む“事なかれ主義”の対応では、事態はなかなか解決できないだろう。 

 

 これに関する具体例を1つあげたい。 

 

 最近、外国人客による新幹線の特大荷物スペースの横取り行為が多発しているという。本来、特大荷物スペースを使用するには乗車時に事前予約をする必要があるのだが、一部の外国人客が予約なしでこのスペースを占領してしまうのだ。どうやら、予約が必要とわかっていながらやっているケースも多いようだ。 

 

 クレームを受けたJR東海は、特大荷物スペースを利用するには予約が必要な旨を、繰り返し多言語でアナウンスしている。そして、「予約なしで荷物を持ち込んだ場合は、1000円の手数料を徴収する」ことも強調しているようだ。 

 

 しかし、この対応はいささか穏当すぎると言わざるをえない。できれば波風を立てたくないという底意が透けて見える。ルール違反は許さないというメッセージを伝えるためにも、ペナルティの金額をもっと高く設定したうえで、荷物が置かれてあるときは、否応なしに強制移動するくらいの対応をしてもいいのではないか。 

 

 2に対しては、これくらい断固とした姿勢を見せるべきだろう。 

 

■相手が察してくれることを期待してはいけない 

 

 1、2いずれの場合においても、重要なのは自分たちの要求や考えをはっきり相手に伝えることである。 

 

 そもそも日本には暗黙のルールが多くあり、「いちいち言わなくてもわかるだろう」というのが日本人のコミュニケーションのベースにある。そして、相手が気づいてくれることに過度な期待を持ってしまう。 

 

 ただ、このやり方はインバウンド客には通じないと思ったほうがいい。同質性がきわめて高い日本と違って、さまざまなバックボーンを持つ人が混在する社会では、はっきり、きっぱり伝えるのが基本だ。自分の意思を明確にしないと誤解が生じるため、何でもストレートに伝えるのがあたり前の社会環境だからだ。 

 

 

 「私が考えていることを察してよ」とばかり、相手の気づきに期待するコミュニケーション方法には馴染みがないのだ。 

 

 だから私たちは、迷惑外国人に対してはっきり「NO」を突き付けたほうがいい。自分たちが何を大切にしていて、何をしてほしい(してほしくない)と思っているのか、しっかり言葉で伝えるべきだ。 

 

 「言わなくてもわかるだろう」と考えていたら、いつまでも行き違いが続くことになる。迷惑行為はこれからも際限なく繰り返されるだろう。言い方を変えると、私たちの“察する文化”が迷惑外国人を助長させているのだ。 

 

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千葉 祐大 :人材コンサルタント/一般社団法人キャリアマネジメント研究所 代表理事 

 

 

 
 

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