( 235736 ) 2024/12/19 14:51:03 0 00 斎藤元彦知事
渦中の知事が「代理人に一任している」と具体的な説明を拒み続けているため、事態は混迷の度合いを深めている。兵庫県の斎藤元彦知事(47)の公選法違反疑惑で、刑事告発したヤメ検とYouTuberとの間で起きた、弁護士同士の場外乱戦。そこで浮上した問題点とは。
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斎藤知事が再選されて1カ月となるが、数々の疑惑は晴れぬままだ。
先の出直し選挙で公選法違反の疑いがあるとして、斎藤知事と地元・西宮市に本社を置くPR会社の折田楓社長(33)が刑事告発された。告発したのは、元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士(69)と神戸学院大学の上脇博之教授(66)。今月2日、二人は告発状を神戸地検と兵庫県警に送付したとして、オンライン会見を実施した。
折田社長は自身が投稿したブログ記事で、知事選において斎藤陣営のSNS戦略を企画立案、実行したと明言。斎藤知事も了承したとする点が買収にあたるとして、公選法違反の疑惑を生んでいる。
今後の捜査が待たれるが、SNSなどでは告発をした郷原弁護士への異論が噴出。場外乱戦が起きている。
象徴的だったのは、今月7日に配信されたYouTubeチャンネル「リハック」における弁護士同士の公開討論だろう。出演したのは郷原弁護士と、今回の刑事告発に異議を唱える福永活也弁護士(44)だ。「冒険家YouTuber」を名乗る福永氏は、SNSで自らを〈エベレスト2回登頂/世界七大陸最高峰登頂/8000m峰3座/178国放浪/世界三つ星145店制覇〉などとアピールしている。
そんな二人の論戦は2時間余りに及んだ。郷原氏は刑事告発に至る経緯を丁寧に説明。対する福永氏は、「郷原さんは終始、買収罪が成立するという主旨でずっと会見を開いたり、いろんなところで発信している」ことを疑問視し、告発の前提となる具体的な事実の説明を求めた。
福永氏は、郷原氏の告発にある「折田ブログ」が本当に事実なのかという指摘をはじめ、斎藤知事側を擁護する論陣を張った。
結果的に両者の議論は平行線をたどったが、終了後に福永氏はSNSで、
〈僕の知識不足はその通りで、何も否定しません。突貫で調査して勉強してるだけで、弁護士業自体、もう何年もまともにやってませんので、郷原先生に法律論で敵うなんて全く思っていません。そもそも25歳も歳の差がありますからね笑〉と開き直りとも取れる発言をした上、〈実際、郷原先生の刑事告発が想像以上に軽々しく行われていたとの考えに至ったというコメントが無数にきています〉などと反論を続けたのだ。
「刑事訴訟法における『告発』とは、誰もが『犯罪があると思料するとき』にすることができ、捜査機関に捜査を促す行為とされています」
とは、甲南大学名誉教授で弁護士の園田寿氏である。
「つまり一般人が犯罪だと思うことがあれば、捜査機関に告発して捜査をお願いするのは国民の権利なのです。にもかかわらず、福永弁護士は“不確かな事実に基づき人を有罪と決めつけることはダメ”といった論調だった。この点で彼の批判は空振りというか、的外れのように思いました」
当の郷原氏に聞くと、
「捜査機関も全ての事柄を認知しているわけではないので、告発をきっかけに新たな事実が判明したり、問題が認識でき刑事処分に至ったりすることもあり得ます。われわれの告発は捜査機関に対する問題提起でもあるのに、それを全く理解していない弁護士などによる批判もあります」
郷原氏に対しては、N国党・党首の立花孝志氏(57)らが虚偽告訴だと刑事告発。ホリエモンこと堀江貴文氏(52)も、SNSで〈こんな思想的に偏ってるクソが検察に居たって事実がマジで戦慄ですよ。いまでもこんなのがゴロゴロいるんだろうなぁ〉と批判している。
郷原氏が続けて話す。
「私は検察の実務経験に基づき、ある事実をこういうふうに認定し、法適用するべきだということで告発しています。これまで斎藤知事を含めて4回刑事告発を行ってきましたが、マスコミが大きく取り上げたのは今回が初めて。それに対する反発が、告発者の方にも向けられています。本当に異様なことです」
加えて、こんな問題もあると明かすのだ。
「私の事務所に電話で文句を言ってくる人、公開しているメールのアドレスには“死ね”“アホ”といった誹謗中傷を送ってくる人もいます。全体の9割は兵庫県民からの応援メッセージや情報提供ですが、ひどいのはSNSです。YouTubeに口汚い誹謗中傷を送ってくる人もいます」
「週刊新潮」2024年12月19日号 掲載
新潮社
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