( 236479 )  2024/12/20 17:40:30  
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日本郵政グループとヤマトホールディングスは物流サービスにおける協業を発表したが、現在両社の不和が表面化している。

ヤマトが日本郵便に小型荷物の配達を委託する契約に関してトラブルが生じており、日本郵便は訴訟の準備を進めている。

このトラブルは業界全体に影響を与え、荷物運搬のリスクや業務の効率化、環境問題への対策が急務となっている。

(要約)

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人手不足や物流危機などの対応策として手を組んだ、ヤマトと日本郵便だったが……(撮影:今井康一、梅谷秀司) 

 

 こんなはずじゃなかった――。 

 

 昨年6月、物流サービスにおける本格的な協業を発表した日本郵政グループとヤマトホールディングス。熾烈な荷物争奪戦を繰り広げてきた両社の協業は、大手も一段の効率化が必要なことを再認識させる歴史的な出来事だった。 

 

 しかし、足元では両社の不和が表面化している。ヤマトのメール便や小型荷物の投函商品の配達を日本郵便に委託することが提携の根幹だが、そこでトラブルが生じているのだ。 

 

 日本郵便側は現在、ヤマトに対して訴訟の準備を進め、ヤマトは訴状の到着を待つ状態だ。物流業界は人手不足に端を発する、荷物を運べなくなるリスクや業務の効率化、さらには環境問題などへの対策が待ったなし。業界の行く末を左右する提携だけに、なんとも残念な事態になっている。 

 

■なぜもめているのか 

 

 ヤマトは11月、小型荷物を配達先のポストに投函する「クロネコゆうパケット」(日本郵便の配送網で配達)について、従来の「ネコポス」から完全移行するスケジュールの見直しを日本郵便に要請した。委託は2025年2月に完了する予定(ヤマトは3月と主張)で、すでに東京以外は委託が完了している。 

 

 ヤマトがクロネコゆうパケットへの移管を問題視した理由は「従前より配達までの日数が伸びてしまう事態が発生している」(12月19日発表リリース)ため。 

 

 一方、日本郵便側は「ヤマト側が集荷した荷物を郵便局に持ち込むため、配達スピードが遅くなることは当初から合意している。予定通りにいければと思っている」(日本郵政の増田寛也社長)としている。 

 

 一部では「ヤマトが配達委託をすべて停止することを打診した」との報道もあったが、これは事実と異なるようだ。ヤマトは公式に否定し、日本郵便も「詳細は避けるが、担当者レベルで協議している」(担当者)としている。 

 

 今回のトラブルの経緯を紐解いていくと、そもそもの合意内容やオペレーションについての認識のズレ、見通しの誤算があったようだ。 

 

 両社の乖離は、メール便の移行時から生じていたようだ。ヤマトの「クロネコDM便」は2024年1月に終了し「クロネコゆうメール」としてサービスを開始している。 

 

 移管にあたって、ヤマトの荷物は日本郵便側の仕様に合わせることになり、受けられない荷物が増えた。ここで日本郵便に流れた顧客が多かったようだ。メール便の数量は移管のタイミングで激減していたという。 

 

 

 クロネコゆうパケットについても、委託によってネコポスより配達日数が伸びて品質が下がるため、より配達が早い日本郵便のゆうパケットへ顧客が流れた。両社で納期を短縮すべく改善を急いだが、うまく進まなかったという。 

 

 この点、日本郵便は「10月から納期を短縮する取り組みを始め準備していたが、ヤマトからの荷物がほとんどなかった」(担当者)と説明する。 

 

■「こねこ便」の波紋 

 

 メール便が大幅に減り、ネコポスも顧客流出が続く。ヤマトからすれば「東京を移管したら荷物がなくなる」状態だ。そこで今回の申し入れに至ったという事情だった。 

 

 移管によってサービス内容が変化するのは当然のことだろう。しかし、顧客の離反はヤマトにとって想定以上だった。この点は合意の内容や見通し自体が甘かったといえる。 

 

 そのほかも、両社の動きにはちぐはぐな感が否めない。 

 

 ヤマトは8月、専用資材を事前購入し、全国一律420円で送れる「こねこ便420」を発売。提携相手である日本郵便の「レターパックライト」と近い仕様で10円安い。しかも、事前に日本郵便と協議して発売したものではなかったという。 

 

 日本郵政の増田社長は、12月18日の定例会見で「こねこ便の件も含めて、こういう問題が起きたからにはヤマトとよく協議すればいいと思う。乗り越えていかなくてはならない」と方針を語った。 

 

 増田社長は会見で何度も「大義」という言葉を繰り返し、「社会的な要請に応えていく。大手で協業の精神を出していかないとならない」とも言及していた。その反面、ヤマトに対して訴訟の準備を進めていることには疑問符が付く。 

 

 物流業界は長年、荷物争奪戦と安値競争を繰り広げてきた。大手同士の全面的な提携は、そんな悪循環を変える重要な意義があったはずだ。 

 

 大手同士の提携や業務の移管にトラブルはつきもの。いま一度、昨年の会見時に立ち返り、両社とも冷静に提携を進めるべきだ。 

 

田邉 佳介 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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