( 236946 )  2024/12/21 14:39:55  
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「劣等官僚だった玉木ごときのいいようにさせるな」 

 

有力OBからこんな叱咤の声が飛び交う中、新川浩嗣事務次官(1987年旧大蔵省)ら財務省幹部は、少数与党の石破茂政権との「部分連合」に応じる見返りとして「年収103万円の壁」の見直しやガソリン税の引き下げなどを迫る、国民民主党の玉木雄一郎代表(役職停止中)とのバトルを激化させている。 

 

玉木氏は1993年に旧大蔵省に入省し、政治家に転身するまで12年間在籍したが、外務省や内閣府など他省庁への出向が多く、主計局や主税局のエリートコースを歩んだ有力OBからすれば「落第生」そのものに映る。 

 

「そんな輩がたまたま衆院選で議席を伸ばし、政局のキャスティングボートを握ったからといって、親元の財務省叩きに興じる様子が我慢ならない」(元事務次官)と、近親憎悪の感情をたぎらせているわけだ。 

 

実際、財務省内の評価で、93年入省組は石破首相秘書官を務める中島朗洋氏と主計局次長の吉野維一郎氏が、若手時代から将来を嘱望された第一選抜。同じく政治家に転身し、岸田文雄前政権で官房副長官として辣腕を振るった木原誠二氏でさえ「次官レースには手が届かない二線級。玉木氏はそれ以下」(別の元次官)と見られてきたという。 

 

それだけに、財政や税制をかき回されては、「霞が関最強官庁の名が泣く」との思いを強めているのだろう。 

 

ただ、国民民主が「部分連合」協議を打ち切れば、石破政権は来年度の予算案も税制改正案も国会を通過させられる見通しが立たなくなり、たちまち行き詰まる恐れがある。 

 

そこで財務省としては、玉木国民民主の顔を立てたふりをしながら、実際の減税額をどう抑えるか腐心しているのが現状だ。 

 

青木孝徳主税局長(1989年同)らを中心とする「玉木対策チーム」は、まず自民党税制調査会の宮沢洋一会長(1974年同)ら税調幹部と謀って、ガソリン税の上乗せ部分見直しについて、2026年度の税制改正で予定する自動車関係諸税全体の見直しと「一体で議論する」とし、先送りする方針を早々に打ち出した。 

 

「11月に閣議決定した経済対策にガソリン代補助制度の延長を盛り込んだため」などと説明するが、国民民主が支持母体とする自動車総連や、自動車メーカー各社を抱き込もうとする思惑が透けて見える。 

 

自民党税調が地球温暖化対策の観点から新たな課税の仕組みを検討する中、自動車業界は「ガソリン税の軽減よりも、車自体の売れ行きを左右する自動車関連税制の見直しの方がはるかに気になる」(日本自動車工業会幹部)のが本音。財務省はこれに乗じて国民民主の要求を当面、うっちゃろうとしたわけだ。 

 

玉木氏は早速、自身のX(旧ツイッター)に「ガソリン減税は、来年に先送りすることなく、今年中に検討して結論を得るべき事項です」と投稿したが、自動車総連や業界には自民党税調や財務省の顔色をうかがうムードも強い。 

 

 

「103万円の壁」についても、財務省は地方自治を所管する総務省と連携し、全国知事会や全国市長会を味方に付けて減税額の大幅な圧縮を画策した。 

 

国民民主の言い値通りに、1995年からの最低賃金上昇率を基準として「壁」(課税最低限)を現行の103万円から178万円に引き上げた場合、国と地方の税収減が7兆~8兆円にのぼるとの試算を公表したインパクトは大きかった。 

 

これをきっかけに、全国知事会(会長・村井嘉浩宮城県知事)は財源手当てもないままに「壁」を大幅に引き上げることに反対を表明。全国市長会も104市区のアンケートなどをもとに、大規模な税収減がこども医療費の無償化や学校の補修、バス路線への補助など交通弱者対策、障害者支援、ごみ処理などあらゆる行政サービスに「重大な支障をきたす」と警告した。 

 

玉木氏は地方自治体からにわかに沸き起こった反対運動に「総務省が仕掛けたもの」と反発した。だが、財務省と自民党税調はこれら地方の懸念をバックに、「壁」の引き上げ額を95年以降の物価上昇率などを基準にした120万万円程度にとどめようと攻勢を強めた。 

 

「壁」引き上げを渋る財務省・自民党に、玉木氏は怒りを爆発させた。12月6日には、「年収の壁」を178万円に引き上げれば7兆~8兆円の税収減になるとの財務省の試算について、「荒っぽい資料で国民の手取りを増やす政策を阻まないでほしい」と自らのXに投稿。 

 

さらに、12月はじめに出演したテレビ番組では、政府の財税健全化目標をやり玉に挙げ、「本当に25年度にプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化する必要があるのか。3年くらい遅らせられないのか。30年ぶりに賃金デフレから脱却してようやく新しい経済にステージになろうとしている時に、ブレーキを踏むのか。政治が決めるしかない。財務省には決断できない」と語り、古巣への敵対姿勢を鮮明にした。 

 

激化する両者の対立の詳細は、後編記事【「国民の敵」「財務省解体!」玉木vs.財務省「全面戦争」のヤバい内幕…「103万円の壁」破壊をめぐるチキンレースのゆくえ】でお伝えする。 

 

週刊現代(講談社・月曜・金曜発売) 

 

 

 
 

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