( 236991 )  2024/12/21 15:31:43  
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宮内庁は12月11日、悠仁さまが筑波大生命環境学群生物学類に推薦入試で合格したと発表。来春入学し、住まいのある赤坂御用地から通う予定という(写真:宮内庁提供) 

 

 秋篠宮さまが秋篠宮家に対するバッシングについて「いじめ的情報と感じる」と発言した。国民への強いメッセージをどう受け止めればいいのか。政治学者の原武史さんに聞いた。AERA 2024年12月23日号より。 

 

*  *  * 

 

 秋篠宮家への反発やバッシングの背景にあるのは、「平成の反動」です。平成の天皇・皇后は無私の精神で国民に寄り添い、国民の幸せを祈ることを象徴の務めとして定義づけ、それを忠実に果たしました。そして、全身全霊で務めを果たすことが難しくなったとして、退位に言及したのです。平成の天皇・皇后の姿は、理想の皇室像として国民に広く受け入れられており、令和の天皇・皇后もまたそれを意識した行動をしています。 

 

 一方、秋篠宮家の場合、小室眞子さんの結婚の際に「公よりも私」を優先したように映ったのでしょう。平成の皇室が定義づけた象徴のあり方に反し、自分たちの都合を優先させているとのイメージが広がりました。悠仁親王の進学問題についてもそのイメージをもとに議論されているように感じます。 

 

 しかし、天皇や皇族もまた生身の人間です。代替わりによって天皇が代われば、スタイルも変わって当然です。前代のスタイルを強制することは、生身の人間に大きな負荷がかかります。例えば、大正天皇は皇太子時代、神格化された明治天皇とは違い、自由で、ある意味奔放な行動を許されていました。しかし、即位後は明治天皇のスタイルを踏襲するよう強制された。大正天皇が体調を崩し、早くに亡くなった原因の一つはそこにあると思います。特に摂政を置かれてから亡くなるまでの5年間は、悲惨と言っていい状態でした。明治天皇を過度に理想化して持ち上げたことが、その後の天皇制というシステムを歪めてしまったことに目を向けるべきです。 

 

 秋篠宮は以前から、思い切った発言が注目されてきました。2018年、大嘗祭への巨額な公費支出に疑問を呈したこともその一つです。今の皇室典範のもと、将来天皇になる悠仁親王は、筑波大学に進学することになりましたが、新たなスタイルをつくってもらいたいと考えているのかもしれません。 

 

 

 また、今回の「いじめ的情報と感じる」という発言は息子を守るためのものだったとも感じます。大正天皇に関しても「不敬」な噂が広がりましたが、いまではネット上で罵詈雑言が可視化されていて、誰でも見られます。これはあまりに酷すぎるんじゃないか、なるべく静謐な環境で見守ってほしいという秋篠宮から国民に向けてのメッセージだったのではないか。もっと言うと「この状態が続くならば、もう皇族を離脱したい」という抗議の声にも聞こえます。 

 

 繰り返しますが、天皇や皇族もひとりの人間です。当事者の声を聴かず、「個」を犠牲にして「型」に落とし込むことが適切なのか。国民の側も問われています。 

 

(構成/編集部・川口穣) 

 

※AERA 2024年12月23日号 

 

川口穣 

 

 

 
 

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