( 238059 )  2024/12/23 06:15:50  
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小久保監督は就任1年目でリーグ優勝を果たした。

しかし、最近ソフトバンクに関するニュースが話題になり、ファンからは疑問の声が上がっている。

育成枠で多くの選手を指名し、選手層が厚くなり過ぎているのではないかという批判がある。

また、上沢直之投手の獲得についても議論が起こっている。

これらの動きから、「アンチソフトバンク」が増えている印象がある。

(要約)

( 238061 )  2024/12/23 06:15:50  
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就任1年目からリーグ優勝を果たした小久保監督 

 

 福岡ソフトバンクホークスという球団に対し、これまでプロ野球ファンは様々なイメージを持っていたはずだ。ところが12月に入ってソフトバンクに関する2つのニュースが話題を集め、ファンのソフトバンクに対する“疑問の声”が増えつつあるように見える。1つ目は12月3日、育成1位で指名された日本学園高校の古川遼投手が入団を辞退するとの発表だった。 

 

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 プロ野球ファンなら「育成のソフトバンク」という表現はよくご存知だろう。千賀滉大、甲斐拓也、牧原大成、周東佑京……彼らは育成枠でソフトバンクに入団し、這い上がってスターの座を掴んだ。担当記者が言う。 

 

「現在、3軍制度を導入しているのは巨人、広島、西武、オリックスの4球団ですが、ソフトバンクは唯一の4軍制度を運営しています。10月24日のドラフト会議で、育成枠の指名が最も少なかったのは楽天の1人。3軍を持つ西武は7人、巨人とオリックスは6人を指名しました。ところがソフトバンクは13人と12球団最多の指名でした。これには野球ファンから『さすがに多すぎる』、『大半が3軍以下で終わってしまう』と疑問の声が上がったのです。乱獲のように指名して、若い野球選手の人生に責任を持てるのかという問題意識だと言えます」 

 

 異論を唱えたのはファンだけではない。野球解説者の高木豊氏は12月4日、自身のYouTubeチャンネルに動画をアップし(註1)、ソフトバンクの“貪欲”を疑問視した。 

 

「高木氏はストレートに『育成選手が多すぎるのはよくない』と問題提起しました。40人で競い合うのと100人で競い合うのは訳が違うという理由です。球団の側から見れば、育成選手が多すぎると目の届かないところが出てくるでしょう。選手側から見れば、過度の競争で『自分は埋没してしまった』と引け目を感じ、やる気をなくすケースも増えてしまうはずです」(同・担当記者) 

 

 高木氏の指摘は「過ぎたるは及ばざるがごとし」の格言に集約できるに違いない。そして実際、ソフトバンクが抱える分厚い選手層は“宝の持ち腐れ”ではないかと思わされる動きが出てきた。 

 

 打者の仲田慶介は2021年のドラフトで、育成14位で指名されソフトバンクに入団した。今季は1軍で16打席に立ち、打率2割1分4厘を記録。2軍では打率4割0分3厘、1本塁打、11打点と好成績を残したが、11月4日に戦力外通告を受けた。ソフトバンクは育成再契約を提示するも仲田は拒否。11月24日に西武と育成契約を結んだ。 

 

 投手の三浦瑞樹は2022年のドラフトにおいて育成4位で指名された。今季は1軍で5試合に登板、打者22人に対し三振4、被安打4、防御率0・00を記録。さらに2軍の防御率は1・60で最優秀防御率のタイトルを獲得した。ところが11月4日に戦力外通告を受け、三浦は中日と育成契約を結んでいる。 

 

 野球ファンの注目を集めた2つ目のニュースは、ウェブメディア「西スポWEB OTTO!」(註2)が12月16日に配信した「ソフトバンク、上沢直之と基本合意 レッドソックス傘下3AからFA NPB通算70勝右腕の獲得で先発強化」との記事だ。 

 

 投手の上沢直之は2011年、ドラフト6位で日本ハムに入団。2022年のオフには推定年俸1億7000万円でサインし、23年のシーズンは24試合に先発して9勝9敗。防御率2・96を記録した。 

 

 

 23年のオフで上沢はポスティング申請を行い、翌24年1月にMLBのレイズとマイナー契約を結んだ。だが開幕メジャー入りを逃し、契約破棄条項を行使してレッドソックスに移籍。だが、やはりメジャー入りは叶わず、傘下の3Aチームでプレーしていた。 

 

「上沢投手は11月にFAとなり、帰国して日ハムの施設で練習を行うこともありました。ところが、それをソフトバンクが横取りした格好になったのです。スポニチアネックスは12月16日、上沢投手に4年総額10億円規模の条件が提示されたと報じました(註3)。ルール上は何も問題はありませんが、Xでは『わずか1年のメジャー挑戦で、しかも日ハム復帰ではなくソフトバンク移籍は納得できない』など、上沢投手とソフトバンクの“モラル”を問題視するポストが相次いで投稿されています」(同・記者) 

 

 昭和のプロ野球には“アンチ巨人”というファンがいた。しかし令和となった今では、“アンチソフトバンク”が増えている印象がある。 

 

 野球解説者の広澤克実氏はヤクルト、巨人、阪神の3球団でプレーした。ヤクルトではアンチ巨人的な発言の多かった野村克也氏が監督を務め、阪神ファンは巨人を目の敵にすることで知られている。巨人ファンもアンチ巨人もよく知る広澤氏に、ソフトバンクに対するイメージの変化について尋ねた。 

 

「日本にプロ野球が誕生したのは1936年、昭和11年のことです。この年には2・26事件が起きました。プロ野球は長い歴史を持ち、ファンの目も肥えており、その楽しみ方も多種多様です。アンチ巨人は、そうしたファンの多様性を象徴していると言えます。アンチ巨人は熱烈な野球ファンですから日本におけるプロ野球人気に大きく貢献しました。ただし、なぜ巨人が野球ファンの一部に敵視されたかと言えば、V9が大きかったと思います」 

 

 プロ野球に限らずメジャーリーグでも「金満球団はファンもアンチも多い」という傾向が認められる。その代表例がヤンキースだ。しかしながら広澤氏は「アンチ巨人の場合は、少し事情が異なります」と言う。 

 

「巨人が金満という印象を持たれたのは90年代でしょう。親会社である読売新聞の発行部数が1000万部を突破したのは1994年でした。一方でアンチ巨人という言葉は60年代から普通に使われています。つまりアンチ巨人の本質はV9に象徴される“常勝巨人”に対する異議申し立てだったのではないでしょうか。そして今の巨人に常勝というイメージはありませんし、新聞の発行部数も減少を続けています。一方、投資会社のソフトバンクは売上の単位が数兆円です。文字通りの金満球団ですから、今後はアンチソフトバンクが増え、アンチ巨人は減っていくと考えられます」(同・広澤氏) 

 

 

 今後はソフトバンクを目の敵にする野球ファンが増えるというわけだが、広澤氏は「とは言え、つい最近までアンチソフトバンクは目立たなかったという事実は重要ではないでしょうか」と指摘する。 

 

「ソフトバンクと言えば、地域密着型チームの優等生というイメージも非常に強かったはずです。親会社の資金力が豊富なことも、『お金に困らなくてうらやましい』と好意的に見られていたと思います。今、批判の対象となっている育成の問題も、『他球団から獲得せず、自前で選手を育てている』と評価されていました。それでは、なぜ突然、ファンの評価が変化したのか。少なくとも私の周りでは、山川穂高くんの獲得が大きな影響を与えたようです。『山川選手のソフトバンク移籍は納得できない』という声は多く、それが今に至るまで尾を引いている印象を受けます」(同・広澤氏) 

 

註1:【異例の入団辞退】ソフトバンク育成1位古川遼が入団辞退!!”彼の判断は素晴らしい!!  今後育成制度の検討が必要か? 高木豊が育成ドラフト1位の入団拒否について語ります!  

 

註2:九州のブロック紙、西日本新聞が発行していたスポーツ紙「西日本スポーツ」が2023年に休刊し、ウェブメディア「西スポWEB OTTO!」へ移行した 

 

註3:ソフトバンクが上沢直之獲得! 4年総額10億円規模の好条件で日本ハムとの争奪戦制す 近日正式発表(スポニチアネックス:12月16日) 

 

デイリー新潮編集部 

 

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