( 238136 )  2024/12/23 15:31:33  
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モペットの取り締まりをする警視庁の警察官ら 

 

 「止まってください!」。東京都新宿区の靖国通りで、警視庁の警察官が自転車のようなペダル付きの車両に乗った男性を呼び止めた。路肩で車体を念入りに調べ始める。持ち上げてハンドル付近を操作すると、浮かせた後輪が高速回転した。目を光らせた警察官が「免許証、見せてくれますか」と事情を聴き始めた。 

 

モペットの公道走行に必要な装備など 

 

 男性が運転していたのは「モペット」と呼ばれる乗り物だった。自転車ではなく、スクーターと同じく免許が必要な原動機付き自転車(原付き)やバイクに分類されるが、自転車のように利用したことによる違反や事故が増えている。 

 

 実際、取り締まり現場では、利用者が「自転車だと思っていた」と説明していた。新しいモビリティにどう対応するか、警察の動きを追った。(共同通信=武知司) 

※筆者が音声でも解説しています。「共同通信Podcast」でお聴きください。 

 

 ▽モペットは自転車ではない 

 

 モペットはペダルをこがなくても、モーターで自走できるペダル付き電動バイクのこと。「motor(モーター)」と「pedal(ペダル)」の組み合わせが語源とされる。 

 

 道路交通法(道交法)上は原付きやバイクに分類される。運転免許のほか、自賠責保険への加入、ミラー取り付けなどの保安基準を満たさなければ公道は走れない。ヘルメット着用も義務で、歩道走行は不可だ。 

 

モペットの車体を調べる警視庁の警察官 

 

 報道陣に取り締まりが公開された11月1日は、改正道交法が施行される日だった。新宿で取り締まりを受けた男性の車両には、義務付けられているミラーやナンバープレートがなかった。ヘルメットも非着用。警察官に違反を指摘されると、男性は「自転車だと思っていた」と答えた。 

 

 警察はこれまでも、利用者にモペットとの認識があったかなかったかにかかわらず違反を摘発してきた。一方で「知らなかった」と主張するケースも多かった。 

 

 この日、靖国通りでは、1時間半ほどで13件の違反で8人を取り締まった。ただ、警察官の制止を振り切り、多くの人が行き交う歩道をハイスピードで逃走した車両もあった。 

 ▽道交法改正、その狙いは 

 

 今回の道交法改正では、モペットをペダルだけで走行しても原付きやバイクの運転に該当すると明文化された。ただ、モペットには改正前から原付きやバイクと同じルールが適用されてきた。では何のために明文化するのか。 

 

 

利用者を止めて車体を調べる警察官(右側の男性も警察官です) 

 

 その目的はルール浸透で違反者の「言い逃れ」を許さず、事故抑止のため積極的な摘発を可能にすることだ。見た目の似た電動アシスト自転車として、自転車のルールで運転して違反になる人が後を絶たず、事故も相次いでいたことが改正への動きを後押しした。 

 

 モペットの人身事故と違反摘発はいずれも増加傾向にある。今年1~9月に全国で摘発された違反は1606件。ナンバープレートの非表示が514件と最多で、無免許が319件で続き、自転車のように使用している人の多さがうかがえる。人身事故は53件あった。 

 ▽モペットと自転車、見た目では区別しにくい 

 

 実際、モペットと電動アシスト自転車は見分けづらい。車種やデザインもさまざまだ。警察官も詳しく車体を調べなければ判断できず、手間がかかる。 

 

 取り締まりでは、こう訴える人がいた。「これ自転車ですよ。毎回、止められてうっとうしいわ」。警察官が車体調査に協力を求めると、へきえきとした表情を隠さない。モペットのように見えた車両は、調べた結果、自転車だった。 

 

 警察官も苦労する見た目の分かりづらさは、誤利用の一因になっている。ネットでは、モペットが「電動アシスト自転車」といった不適切な表記で販売されることもある。利用者に車両区分やルールをよく確認して使用することが求められる一方、販売者など事業者側の責任も重い。 

 ▽事業者に行動求める 

 

 警察庁は以前から事業者に運転免許が必要な車両と明示して販売するよう求めてきたが、対策強化のため11月にガイドラインを作成し、事業者に行動を求めた。 

 

 モペットの販売事業者に購入者の免許確認の徹底や自賠責保険の加入対策への取り組みを促した。「ウーバーイーツ」など食事宅配サービス事業者に対しても協力を呼びかけた。配達員が使用する場合は免許を確認し、交通違反があった場合は配達員の資格停止などの措置が必要としている。 

 

 

 
 

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