( 238269 )  2024/12/23 18:03:45  
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スバルの水平対向エンジンは、過去は燃費が悪いというイメージがありましたが、最近では改善が見られ、今後の進化が期待されています。

このエンジンはオーバースクエアな仕様で、ボアがストロークよりも大きい設定となっており、幅広いエンジンルームへの搭載が難しいという課題がありました。

オーバースクエアエンジンのメリットは高速回転型のエンジンを作りやすいことですが、デメリットとして熱効率の悪さと燃費性能の低下が挙げられます。

最近では環境性能を重視する時代であり、スバルも新たなエンジンを開発し、燃費性能を向上させつつあります。

(要約)

( 238271 )  2024/12/23 18:03:45  
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スバルといえば水平対向エンジンが何よりもアイデンティティだ。しかしこのエンジン、構造上熱効率の悪いエンジンとなってしまい、総じて燃費性能にあまり優れないというのが通説であった。しかし、最近ではそれも改善してきているので、今後のさらなる進化に期待したい。 

 

 スバルの水平対向エンジンは燃費が悪い、という認識をもっている方が少なからずいる。確かに、スバルが企業イメージの全面刷新を図った起死回生の新型車、1989年登場の初代レガシィ(BC型、BF型)用EJ型水平対向4気筒エンジンシリーズは、パワー/トルク値、ドライバビリティなどの注目される諸性能は、当時のトップレベルに達していていたが、なぜか燃費性能に優れないことが徐々に問題となっていた。 

 

 スバルのエンジンはあまり燃費がよくない、というありがたくない評判がついてしまったわけだが、この時代のスバルの水平対向には、ある共通したエンジン仕様の特徴があった。シリンダーのボア・ストローク値が、量産車としてはかなりオーバースクエアな方向で設定されていたことだ。スクエアとは四角の意味で、ボアとストロークが同値の仕様をスクエアエンジン、ボア値がストローク値より大きな仕様をオーバースクエアエンジン、逆にストローク値がボア値を上まわっている仕様をロングストロークエンジンと呼んでいる。 

 

 初代レガシィの登場から約20年ほど、スバルの水平対向4気筒エンジンはEJ系が基本となり、レガシィ/インプレッサ/フォレスターの主力3モデルに1500ccから2500ccまでのエンジン排気量を用意して臨んでいた。 

 

 そしてこのEJ系エンジンは、1994ccのEJ20型がボア92mm×ストローク75mm、1820ccのEJ18型がボア87.9mm×ストローク75mm、1597ccのEJ16型がボア87.9mm×ストローク65.8mm、1493ccのEJ15型がボア85mm×ストローク65.8mm、2457ccと4気筒系では最大排気量のEJ25型がボア99.5mm×ストローク79mmと、どれもボアがストロークを大きく上まわるオーバースクエア仕様で作られていた。 

 

 なぜか? 水平対向エンジンは、ふたつのシリンダーバンクが対向する形でレイアウトされるため、ストローク値を10mm伸ばすと両側合わせて20mmエンジン幅が拡大することになる。大した数値ではない、と考えるのは大間違いで、車両を設計するにあたり搭載エンジンの幅が20mm違うことは、致命的なハンデとなってしまう。 

 

 もちろん、これが直立レイアウトの直列エンジンならそれほど問題にならないのだが、ふたつのシリンダーバンクが水平に寝かされ対向レイアウトとなる水平対向では、長大なエンジン幅としてエンジンルームへの搭載を一気に難しいものへと変えてしまうことになる。 

 

 エンジン幅を抑えるためにはストローク値を抑えなければならない。そのためには、排気量はボア値で稼ぐしかないという選択肢しか残らないことになり、結果的にスバルの水平対向エンジンは、どれも幅の拡大を嫌ったことからボア値が大きなオーバースクエア仕様になっていた、という経緯がある。 

 

 

 さて、問題はオーバースクエア仕様エンジンのメリットとデメリットだ。ストローク値が小さなため平均ピストン速度を抑えることができ、その結果、高速回転化が可能となることから回転馬力型のエンジンを作ることができる。純レーシングエンジンが、おしなべてオーバースクエア型となるのは、高速回転による高出力化が可能であることによる。 

 

 逆に、ボアが大きくなることで燃焼室は浅く広い形状となり、熱損失が大きくなってしまう特徴がある。要するに、熱効率の悪いエンジンということで、熱損失はそのまま燃費性能の低下につながってしまう。また、ストローク値が短いことから、タンブル流による撹拌効果が小さくなり、これも熱効率を下げる要因となっている。 

 

 もちろん、燃費性能を左右する要素はシリンダーディメンションだけでなく、制御システム(コンピューター)なども大きく影響するが、ボア値とストローク値という基本的な仕様から見た燃費性能に関しては、オーバースクエア型は不利だという客観事実を上げることができる。 

 

 では、スバルはEJ型がもつ燃費の不利を承知のまま、水平対向エンジンを使い続けてきたのだろうか。環境性能(当然、燃費性能の意味も含まれる)が直面する問題となる2010年代以降、じつは、仕様の異なるエンジンを順次送り出している。 

 

 BRZ/トヨタ86用のFA20型エンジン(ボア86mm×ストローク86mm、1998cc)を開発すると同時に、EJ型の後継となるFB型を新たにリリース。1995ccのFB20型はボア84mm×ストローク90mm、1599ccのFB16型はボア78.8mm×ストローク82mmとボア×ストローク比は1:1.07~1:1.04へと完全なロングストローク型にシフトしている。 

 

 燃費性能=二酸化炭素の排出量という関係が成り立つだけに、環境性能を最優先で考えなければいけない現代では、燃費性能の悪さは(というより環境性能をクリアできない)致命傷となり、商品性を成り立たなくしてしまう。 

 

 スバルの近代化に大きく貢献したEJ型水平対向エンジンだが、その実働期間が長かったぶんだけ、良くも悪くも、存在感は強く印象に残る。熱効率50に及ぼうかというトヨタのハイブリッド用エンジンは世界的にも別格と見てよいが、スバルの水平対向エンジンが旧態依然たる状態で燃費性能に不満を残したまま、という認識は明らかに誤りだ。 

 

大内明彦 

 

 

 
 

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