( 241791 )  2024/12/30 16:26:48  
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※写真はイメージです/PIXTA 

 

今年も色々と大変なことばかりでしたが、すべては水に流して、来年こそは良い年になりますように願う、2024年の年末。しかし、すでに2025年も希望すら持てないことが確定してしまっている人たちがいます。 

 

年末になるとなぜか増える道路工事。そこで交通誘導のアルバイトをする佐々木浩一さん(仮名・75歳)。 

 

――やっぱり寒さがこたえる。どんなに着込んでも、仕事が終わったころには、指先の感覚はなくなっているよ 

 

交通誘導のアルバイトはいつでもあるわけではなく、今は稼ぎどきだという佐々木さん。日給1万2,000円弱。時給に換算すると1,480円。この時期は1ヵ月で24万円を下回るくらいの給与になるとか。手取りにすると18万円くらいでしょうか。それと年金を合わせると、結構な金額になるのでは? 

 

――年金なんて、月に5万円もいかないくらいだからさ。俺、働かないと生きていけないの 

 

高校を卒業してから、いくつか仕事を変えてきたという佐々木さん。今思えば後悔でしかないというのが、20年近く働いていた会社で厚生年金に未加入だったこと。「昔はそういうの緩かったんだよ。年金への意識も低かったから、自分で確認することもなかった。いまさらびっくりだよ」と佐々木さん。きちんと年金保険料を払っていたつもりでいましたが、年金を受け取る段階になって初めて知る事実だったといいます。 

 

――きちんと給与明細とか見ていたら気が付いたかな……まあ、すでにその会社もないし、国が助けてくれるわけでもないし。どうしようもないよ 

 

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金受給者の平均月受給額は、併給の国民年金合わせて14万6,429円。その分布をみていくと、下位25%が「10万~11万円未満」、下位10%が「月8万~月9万円未満」。佐々木さんのように、厚生年金を受け取りながらも「月5万円未満」というのは、わずか1.87%。全体からみても、相当「低年金」といえるでしょう。 

 

 

家族で紅白歌合戦を観て、翌日にはおせち料理とお雑煮を食べて、昼からお酒を飲んで……そんなどこにでもある年末年始はしばらく過ごしたことがないという佐々木さん。 

 

――ひとり身だし、きょうだいもみんな死んだし。甥や姪はいるけど、きょうだいがいなくなってからは、会ってもいない。親戚付き合いなんてまったくない 

 

75歳、いわゆる後期高齢者。今はまだ働けるけど、70代になるといつ何があるかわからないという不安を抱くことが多くなったといいます。そんな意識から、残ったアルバイト代を貯金するようになりましたが、最近のインフレには本当に困っているとか。 

 

――時給はそれほど上がってないのに、何を買うにしても今は高い。買い物に行くたびに値段があがっている。お金が足りなくなるんじゃないかって怖くて怖くて、今年は餅すら買えないよ 

 

寒い時期、アルバイト終わりに好物の温かいそばを食べるのが何よりも贅沢なひととき。1杯420円。さらに奮発するときは、コロッケを1つ注文。ちょっとふやけて、味が染みるのが絶品なんだとか。そんなささやかな贅沢も、最近は我慢するときもあるとか。 

 

――来年に良いこと!? ないだろうね。ただ生きるために働く……そんな毎日の繰り返しだよ 

 

内閣府『国民生活に関する世論調査(調査期間:令和6年8月8日 ~ 9月 15 日)』によると、「あなたのご家庭の生活は、去年の今頃と比べてどうでしょうか」の問いに対して、「向上している」と回答した70歳以上はわずか0.7%。「低下している」は38.3%でした。 

 

また「あなたは、日頃の生活の中で、どの程度充実感を感じていますか」の問いに対して、「不満」と回答した割合は、70代で35.1%と、ほかの年齢のなかでも高水準となりました。そして「あなたのご家庭の生活は、これから先、どうなっていくと思いますか」と、今後の見通しについて尋ねたところ、70代で「良くなっていく」と回答したのは1.8%。どの年代よりも低く、明るい見通しが立たない現状が浮き彫りになりました。 

 

 

 

【今後の生活の見通しが「良くなっていく」の回答割合】 

 

18~29歳…13.1% 

 

30~39歳…16.9% 

 

40~49歳…10.9% 

 

50~59歳…8.8% 

 

60~69歳…2.9% 

 

70歳以上…1.8% 

 

収入のうち年金の占める割合が大きい高齢者。インフレが続くなか、給与のある現役世代よりも苦しい日々が続いています。給与に対してはわずかながら希望を見いだせても、年金が増えるという声はまったく聞こえてくることはなく……とても明るい未来を描けずにいます。 

 

[参考資料] 

 

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』  

 

内閣府『国民生活に関する世論調査(調査期間:令和6年8月8日 ~ 9月 15 日)』 

 

 

 
 

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