( 242251 )  2024/12/31 15:07:22  
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九州・山口・沖縄 

 

 今年度の公立学校の教員採用試験で、採用予定者数に達せず、異例の追加募集を実施する自治体が出ている。九州・沖縄では受験者増を狙って、試験日を前倒ししたが、受験者数が過去最低となる自治体も相次ぐ。各教育委員会は、志願者の掘り起こしといった対策に乗り出している。 

 

 今月1日、熊本市教委は初めて追加募集の試験を行った。試験会場の市立必由館高では、3年以上の勤務経験がある臨時的任用教員や元教員らが模擬授業をしたり、面接を受けたりした。 

 

 臨時教員をしながら正規採用を目指していた30歳代の男性は「来年受けようと思っていたので、チャンスが増えた」と歓迎した。同市では6~8月に採用試験を実施したが、採用予定者314人に対し、合格者は262人と52人が不足。英語で12人、数学で6人などが足りず、さらに小中高では、これまでで最多の13人が内定辞退する事態となった。 

 

 追加募集では当初、3年以上の勤務経験がある現職や元教員を対象としたが19人しか集まらず、臨時的任用と任期付き採用教員にも対象を拡大。1日は79人が受験したものの、基準点を下回った受験者もおり、合格者は35人にとどまった。 

 

 市教委教職員課の上村清敬課長は「予定人数を確保できなかったことは残念。現場の人員に影響が出ないように、足りない分は臨時講師で補う」と話した。 

 

 近年、教員のなり手不足が深刻化している。文部科学省によると、全国の公立学校教員の採用倍率は過去最高の13・3倍だった2000年度から下降を続け、23年度に実施された24年度採用の選考では、過去最低の3・2倍となった。 

 

 採用日程が教員よりも早い民間企業への流出を食い止めようと、文科省は今年度、各教委に対して試験日程の目安を従来より約1か月早い6月中旬と示した。読売新聞が今年度の教員採用試験について、九州・山口・沖縄の各県と政令市の12教委に取材したところ、山口県を除く、11教委が日程を早めた。一方、受験者数は、山口、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄各県と熊本市の8教委で過去最低となった。 

 

 

 こうした中、熊本市教委のほか、長崎、大分、宮崎各県教委も追加募集の実施を決定。高校で採用予定者数を満たせなかった大分県では、今回初めて追加募集を行った。同県教委教育人事課は、「教員の確保が難しく、複数の受験機会で優秀な人材確保につなげたい」と踏み切ったという。 

 

 また、秋選考として、11月に他県での教諭経験者向けの特別選考も実施。52人の採用予定者数に9人が受験し、全員が 

合格した。 

 

 志願者確保のため、多くの教委が対策を強化する。 

 

 山口県では昨年度から、教員免許の未取得者を対象にした選考を導入。適性検査や面接などに合格すると、授業料などを一部補助し、2年以内に免許取得を目指してもらう。現在、合格した11人が、教員を目指している。このほか、教職から離れたり、教員以外の職に就いたりした取得者向けのセミナーも実施している。 

 

 熊本市では働く現場を知ってもらおうと昨年度から、大学生に有償で小中学校の教員の補助役を務めてもらっている。また、福岡、鹿児島両県では、今年から一部試験で大学3年生の受験を可能にし、合格した試験は翌年度に免除となる。同様の対策を宮崎、長崎両県も来年度から導入する。 

 

 教員採用に詳しい兵庫教育大の川上泰彦教授は、なり手不足の背景について「団塊ジュニア世代に合わせて採用された教員が退職時期を迎え、各地で採用枠を拡大したことで、これまで非正規の講師などをしながら採用を目指していた層が減っていることも一因」と説明し、「教職についていない教員免許保持者の掘り起こしといった柔軟な採用で、対応する必要がある」と指摘。その上で、「教員として働いてみたいと思えるような職場環境作りも、合わせて進めていく必要がある」としている。 

 

 全国の公立小中高校などで、教員不足が顕在化している。全日本教職員組合(全教)が全国の教育委員会などに5月1日現在の状況を尋ね、回答のあった37都道府県と10政令市の結果をまとめたところ、教員不足は4037人に上った。 

 

 全教によると、不足人数のうち、4割が小学校で、3割が中学校だった。担任が配置できずに副校長が務めたり、教員が不足する教科を別教科の教員が兼務したりするなどの影響が出ているという。 

 

 

 
 

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