( 242681 )  2025/01/01 14:24:25  
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Amazon配達“過酷な現場”に密着 

 

「こんちわーアマゾンの配達です」 

 

 インターネットで注文し、モノが届く。その日常を、当たり前にしてくれているのが、宅配ドライバーです。彼らは日々、戦っています。 

 

(宅配ドライバーAさん)「なるべく再配達はしたくないです。“定額働かせ放題”ですね」 

 

 2024年夏に公開された大ヒット映画「ラストマイル」の題材にもなった、便利さと引き換えに生み出された膨大な荷物と宅配ドライバーの過酷な現実。宅配ドライバーのある1日を追いました。 

 

Amazonの荷物を配達するAさん(50) 

 

 ある日の午前8時半。ネット通販大手「Amazon」の荷物を配達するAさん(50)の軽ワゴンの荷室はいっぱいになっていました。 

 

(宅配ドライバーAさん)「これは朝の積み込み分で。また夕方、取りにいかないといけないです」 

 

 朝、配送センターで積み込んだ荷物は、99個。夕方からさらに、同じくらいの量を配るといいます。 

 

(宅配ドライバーAさん)「遅いときにはセンターに戻るのが午後10時を過ぎたりだとか。そうなると厳しいですよね。遅い時間に行くのはご迷惑やと思うんですけど、荷物配りきれないとペナルティになるんです。未配っていって」 

 

 Aさんがこの日担当するのは、配送センターから車で40分ほどかかる、郊外の住宅地。配達ルートはすべて、Amazon独自のアプリが管理しています。自動音声に従って、目的地に向かいます。 

 

(宅配ドライバーAさん)「この家は結構来ているところですね。月に3回か4回来ますね」 

 

「置き配」には細やかな配慮も 

 

 この日最初の荷物は「置き配指定」。在宅不在にかかわらず、依頼者が指定した場所に商品を届けるサービスです。外出で家を空けることが多い昼間の時間帯は「置き配」を利用する人が多いといいます。 

 

(宅配ドライバーAさん)「玄関前ですけど、こうした道に面している場合はなるべく個人情報が見えないように、荷札を反対に向けて置かないと」 

 

 客とドライバーが直接対面しない「置き配」。だからこそ、細やかな配慮が求められます。 

 

 配達のルートだけでなく、配達のペースもAmazonで決められているといいます。その数は1時間で30個。 

 

(宅配ドライバーAさん)「1時間に30個やったら1件あたり2分ですか。荷物探す時間、置く時間、処理する時間、その上で移動する時間も入ってるんです」 

 

 

Aさん「“定額働かせ放題”ですね」 

 

 配達に使うのは小回りが利く軽ワゴン車。その分、荷室は決して広くありません。配達の序盤は、荷物の山との格闘です。 

 

(宅配ドライバーAさん)「次は3個口ですね。荷物3つ減りますね。こういうところが多いといいんですけどね」 

(記者)「残りの荷物を何時までに終わらせないといけないとかはありますか?」 

(宅配ドライバーAさん)「だいたい目安としては午後3時すぎくらいまでには終わらないと。3時半くらいからまた積み込みがあるんで」 

 

 Aさんは、Amazonの下請け運送会社と請負契約をかわす個人事業主です。かつては、配った個数あたりで報酬がもらえたそうですが、いまは・・・。 

 

(宅配ドライバーAさん)「“定額働かせ放題”ですね。いま手取りで消費税込みで日給1万7000円くらいです。ガソリン代も個人負担なんです。最初はうまいこというんですわ。荷物は100個もないからっていって。で、どんどん荷物が増えていって、いまは1日あたり150個以上が当たり前ですからね。ヘタしたら200とか300とかの所もあると思います。個数契約なら300個で5万円近くになると思うんですけど、いまの契約なら高いところでも2万円しか出さないんでしょうね、たぶん」 

 

報酬の妥当性についてAmazonジャパンの回答は 

 

 取材班は「Amazonジャパン」に対し、ドライバーの報酬の妥当性について質問を投げかけました。 

 

(Amazonジャパンの回答)「配送に従事する方々の雇用・契約・稼働管理・支払いは、委託先配送業者にて、責任をもって行っていただいております」 

 

「置き配不可」の荷物なのに…受け取り人が不在 

 

 ここまで順調に配達をこなしていた、Aさん。しかし、「壁」が立ちはだかりました。 

 

 住宅街の一角にある一軒家。こちらに届けるのは「置き配不可」の荷物。受け取る人が在宅している、それが大前提です。しかし、インターホンでの呼びかけに、応答がありません。電話をかけますが・・・ 

 

(宅配ドライバーAさん)「不在ですね。35秒鳴らしても出なかったので」 

 

 電話をとるまで35秒待つというのもマニュアルで決められているんだそうです。 

 

(宅配ドライバーAさん)「こういうときは不在票を投函します。まあ余裕があったらまた回りますけど・・・」 

 

 

宅配ドライバーが恐れる“初日配完率” 

 

 Aさんら宅配ドライバーが恐れているという「数字」があります。 

 

(宅配ドライバーAさん)「“初日配完率”って何か特殊な数字を出しているんでね。最初に再配達を含まない状態で、どれだけ配達できているかの率ですね。不在がゼロやったら100%になります」 

 

 「初日配完率」とは荷物が最初に配達される、つまり「初日」のタイミングで配達が完了した割合を数値化したもの。Aさんによると、「初日配完率」が低いドライバーは出勤日数を減らすなどのペナルティーが課されるといいます。そうなると当然収入が減ります。 

 

(宅配ドライバーAさん)「(受取人が)電話に出ないっていうのが一番つらいですね。置き配不可で電話に出なかったら置いていけないじゃないですか?何時くらいに帰るかも分からないじゃないですか?空いてる時間があったら、またまわりますけど、それはそれでコストがかかるんでね。なんでもかんでもお客さんや、って思っとったら、そのサービスが維持されるかっていったら、難しいですよ」 

 

 Aさんはこの日、午前中の便だけで5件の「未配」を抱えました。配れなかった荷物は、後から別のドライバーが「再配達」することになります。 

 

セール期間中はより多くの荷物を担当 

 

 午後4時、配送センターで「午後便」の荷物をピックアップしてきました。最初の連絡では100個以上の荷物を引き受ける予定だったAさんですが、配送センターで20個ほど間引いてもらい、82個を担当することになりました。 

 

(宅配ドライバーAさん)「80個あったら多いですよ。20くらい多いんじゃないですかね?適正なのが60個くらいだと思うんですけど」 

 

 午後は普段なら午前よりも荷物が少ないそうなんですが、この日はセール期間だったため多くなったのではと、Aさんは話します。 

 

Aさんがいま思うことは・・・ 

 

 宅配ドライバー・Aさんが、いま思うことは・・・。 

 

(宅配ドライバーAさん)「ここのウチなんでいつも不在なんや?とか。4階とか5階に住んでいるお客さんで、水モノ頼んどいて時間指定でいないとか。ドライバーも人間なんで、感情を持っています。なるべく再配達したくないです。それだけですね」 

 

(『newsおかえり』2024年12月24日放送分より) 

 

 

 
 

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