( 242771 )  2025/01/01 16:11:06  
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高齢者を現役世代が支えきれない?(写真:takasu/Shutterstock.com) 

 

 日本は2025年、ついに超高齢化社会に入ります。人口の5人に1人が75歳以上の後期高齢者、3人に1人が65歳以上の高齢者になるのです。介護の人手不足が深刻になる、中小企業の事業継続が困難になる、外国人を招き入れなければ産業が成り立たない……。何年も前から懸念されていた少子高齢化の歪み。「2025年問題」と総称される社会はどんな姿になるのでしょうか。やさしく解説します。 

 

 (フロントラインプレス) 

 

■ すべての「団塊の世代」が後期高齢者に 

 

 日本の総人口は2010年を境に減少を続けています。総務省統計局によると、2023年10月1日時点の総人口は1億2435万2千人で、前年同月比で59万5千人の減少となりました。0.48%のマイナスで、減少は13年連続です。こうしたなか、約800万人いる「団塊の世代」(1947~1949年生まれ)が2025年にはすべて75歳以上の「後期高齢者」となるのです。 

 

 内閣府の高齢社会白書(2024年版)によると、2025年には75歳以上が2180万人に達し、国民の5人に1人が後期高齢者になります。また、65~74歳の前期高齢者も1497万人に到達。年々上昇していた高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)はついに30%台に乗ると試算されています。 

 

 国民の3人に1人が高齢者になるわけで、社会の「老い」はいよいよ顕著になりそうです。 

 

 一方で少子化は止まりません。総務省の資料によると、総人口に占める15歳未満の子どもは2023年4月1日時点で11.5%。実に49年連続で減少しました。そうした結果、日本社会の歪みは一段と鮮明になってくるものと思われます。わかりやすい物差しは、高齢者1人を何人の現役世代(15~64歳)が支えているかという数値です。 

 

■ 高齢者を何人の現役が支えるか 

 

 戦後間もない1950年は高齢者1人に対し、現役世代は12.1人でした。12人で1人の高齢者を支える社会構造だったわけです。その後、1970年には9.8人、1990年には5.8人と低減。高齢世代を支える働き盛りの世代は年々少なくなっていきました。 

 

 そして2025年にはついに2.0人を割り込み、1.9人になると予測されています。現役世代の数値には学生や主婦、無職者なども含まれていますから、実際には高齢者を支える現役世代はさらに少ないはずです。 

 

 若者世代に不安はないのでしょうか。 

 

 日本財団が全国の17~19歳1000人を対象として2023年1月に実施した「第52回価値観・ライフデザイン」調査によると、少子高齢化に関して「非常に危機感がある」は37.3%、「危機感がある」は36.8%となりました。 

 

 7割を超す若者が危機を感じているわけです。他方、こうした問題に対する政府の対応については「不十分」「どちらかと言えば不十分」が82.0%にも達しました。次の世代を担う若者の多くが、2025年問題に象徴される日本の将来に強い不安を感じているのです。 

 

 2025年問題は、具体的には社会のどの分野にどんな影響を及ぼすのでしょうか。具体的な見通しをチェックしていきましょう。 

 

 

■ 社会保障も介護も破綻寸前 

 

 まずは社会保障支出の膨張です。 

 

 内閣官房の資料によると、2021年度の社会保障給付費(予算ベース)は、年金58.5兆円、医療40.7兆円、福祉その他30.5兆円で、総額129.6兆円でした。それが3年後の2024年度には総額137.8兆円に増加。対GDP比も20%を超すことが常態化してきました。2025年度には149.8兆円、さらに2040年度には169兆円になると見込まれています。 

 

 こうした給付の増大を現役世代による保険料、さらには税収や借金(国債)で賄う形になっています。「保険料のみでは負担が現役世代に集中してしまうため、税金や借金も充てています。このうちの多くは借金に頼っており、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況」(財務省)が、今後さらに深刻化することは間違いありません。 

 

 介護分野も深刻です。 

 

 経済産業省の資料によると、2020年に725万人だった要介護・要支援の認定者は、2025年には815万人になる見通しとなりました。5年間で90万人も増加する計算です。認定者はさらに増え続け、2040年の予測は988万人。ほぼ1000万人が要介護者になる見込みです。また、認知症患者も2025年には675万~730万人に達すると予測されています。 

 

 これに対し、介護職員の数は圧倒的に足りません。厚生労働省の介護保険事業計画によると、2025年に必要とされる介護職員は約243万人で、不足は約32万人。2040年には必要な職員は約280万人にまで増える一方、約69万人が不足する見通しです。 

 

 介護サービスの中でも、とくに人手不足が深刻なのは訪問介護の職員です。 

 

 厚労省のまとめでは、2023年度の有効求人倍率は14.14倍で、全職種平均の1.31倍を大きく上回りました。事業者が必要とする人員14人に対し、求職者が1人しかいない状況です。 

 

 不人気の理由は明確で、責任や労働の重さに比べて賃金が低いこと。平均給与月額は約26万円(就労2年未満)で、全産業の平均より8万円前後も低くなっています。しかも介護職員そのものの高齢化も進んでおり、全体の3割近くが65歳以上の高齢者という状態です。 

 

 

■ 深刻な人手不足に 

 

 超高齢化社会は、言うまでもなく、深刻な人手不足を招きます。 

 

 パーソル総合研究所のレポートによれば、2025年には全産業で505万人の労働者が不足し、2030年には不足が644万人に拡大します。すでに人手不足の影響は社会のあらゆる分野で深刻になっていますが、この状況が続けば、企業は生産性の低下や業務の効率化の遅れ、コスト増加などに見舞われ、事業の継続すら困難になる可能性もあります。 

 

 とくに、従業員が比較的少ない中小・零細企業は、人手不足の影響を受けやすく、人手不足倒産が深刻化しかねません。そうした結果、日本全体で経済活動が停滞し、国際競争力のさらなる低下や、社会保障費の急増などが避けられなくなるでしょう。 

 

 「2025年問題」に象徴される超高齢化社会をどう乗り切れば良いのでしょうか。外国人労働者の受け入れ強化をはじめ、地方経済の活性化、女性のさらなる社会進出などを起爆剤にすべきだとの意見はありますが、個別の政策によって解決に向かう段階は過ぎ去ったようにも思えます。 

 

 石破茂首相は首相に就任して初の所信表明演説(2024年10月)でも、衆院選後の所信表明演説(同11月)でも、超高齢化社会をどう乗り切るかについては言及しませんでした。国際的にも飛び抜けて高齢化率の高い日本はこの先、どこに向かっていくのでしょうか。 

 

 フロントラインプレス 

「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年に合同会社を設立し、正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や写真家、研究者ら約30人が参加。調査報道については主に「スローニュース」で、ルポや深掘り記事は主に「Yahoo! ニュース オリジナル特集」で発表。その他、東洋経済オンラインなど国内主要メディアでも記事を発表している。 

 

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