( 242854 )  2025/01/01 17:42:23  
00

2024年に始まった新NISAは、税優遇措置を受けられる投資制度であり、口座開設数や投資額が急増している。

しかし、投資にはリスクが伴うため、注意が必要とされている。

2025年以降の投資環境は不透明であり、株価の変動や政治・経済動向によって影響を受ける可能性がある。

投資家はリスク分散や長期的な視点で運用を行うことが重要であり、投資額が増えるほどリスクも大きくなる。

特に収入の少ない若年層は、計画的な投資を行い、生活費を削ることなく資産形成を考える必要がある。

また、投資情報の信憑性にも注意し、自分のお金は自分で守る意識を持つことが大切である。

(要約)

( 242856 )  2025/01/01 17:42:23  
00

(c) Adobe Stock 

 

 2024年に始まった新NISA(少額投資非課税制度)から1年、拡充された税優遇措置の恩恵を得られた人も少なくないだろう。口座開設数はスタートから半年あまりで前年同期に比べ3倍近くに急増し、投資額も膨れ上がる。だが、投資は良い時もあれば悪い時もあるのが常だ。経済アナリストの佐藤健太氏は「2年目は思わぬ『落とし穴』にハマる可能性があり、要注意だ。浮かれて調子に乗っていると手痛い失敗を経験するかもしれない」と警鐘を鳴らす。 

 

 2024年1月にスタートした新NISAは、積立・分散投資に適した「つみたて投資枠」(年間の非課税投資額120万円)と株式・投資信託などを対象にする「成長投資枠」(同240万円)の併用が可能だ。株式や投資信託などに投資すれば通常は売却益や配当に対して約20%の税金がかかるが、NISAの範囲内で投資すれば非課税になる。年間投資枠と最大利用可能額(1800万円)が拡充され、使い勝手が向上した新NISAのメリットは大きい。 

 

 物価上昇によって、お金の実質的な価値が目減りしていくことをにらめば投資収益を期待し、「自己防衛策」に走る人が多いのは当然だ。政府も家計金融資産の半分以上を占める現預金が投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで投資や消費に繋がる「成長と分配の好循環」実現を掲げ、資産運用立国を目指す。 

 

 日本証券業協会のまとめによれば、大手証券とネット証券の10社の口座数は2024年9月末時点で1576万件に上る。つみたて投資枠と成長投資枠を合わせた株式などの買付額は年初来累計(1~9月)で10兆2378億円に達し、前年比3.9倍に膨らむ。さすがに足元の口座開設数や買付額は鈍化してきたものの、 

 

 NISAマネーの株・投信への流入は市場に追い風となる。日証協によれば、NISA買付額のうち国内株と投資信託の割合は「40:57」。成長投資枠の株式買付額を見ると、国内株と外国株の割合は「93:7」で、株式買付額上位10銘柄は国内株で占められている。2024年はかつてないほど資産運用への関心が高まり、その恩恵を得られた人も多かったはずだ。 

 

 3月21日の東京株式市場では日経平均株価が4万815円66銭と終値として史上最高値を更新し、7月11日には初めて4万2000円台をつけた。11月11日には米ニューヨーク株式市場のダウ平均株価も終値として初めて4万4000ドル台をつけ、最高値を更新した。 

 

 

 新NISAを通じた家計から市場への流れは日本株の買い手としても有力なポジションを築き、想定以上のインパクトをもたらせた。筆者も新NISAによる運用益を得られた1人だ。 

 

 ただ、2年目を迎える2025年も同じようにいくとは限らないことは付言しておきたい。その理由は、まず新NISA口座の開設数が今後は伸び悩む可能性があることだ。これまでのように急増していくことは考え難く、日本株投資のペースも落ち着いていくとみられる。言うまでもなく、「経済は生き物」だ。株価は上がる時もあれば、下がる時もある。2024年を振り返れば、1~4月まで日経平均株価は上昇傾向にあり、その後の一服を経て7月まで堅調に推移した。為替レートも4月には1ドル=160円台をつけ、34年ぶりに高値を更新した。 

 

 だが、8月には株価が大暴落し、1987年の「ブラックマンデー」を超える過去最大の下げ幅を記録。さらに9月にも大きな下落を経験した。8月の暴落は、日本銀行による追加利上げ後の円高急伸と米国景気の後退懸念によるものだが、9月は「石破ショック」が原因とされる。自民党総裁選で、安倍晋三政権時代からの金融緩和継続と経済活性化を唱えた高市早苗元経済安全保障相ではなく、「経済音痴」とみられた石破茂元幹事長(現・首相)が予想外に勝利したため負のサプライズと受け止められたのだ。12月12日には日経平均株価が4万円台を回復したが、その勢いは疑心暗鬼を内包しているように映る。 

 

 2025年に気をつけなければならないのは、1月のドナルド・トランプ大統領再登板や3月頃に迎えるだろう来年度予算案をめぐる国会攻防だ。トランプ氏は他国に高い関税を課すと選挙期間中に繰り返し、中国だけではなく日本にも負の影響が生じることが懸念されている。国内においては、先の衆院選で自民党と公明党の与党が過半数割れの惨敗を喫し、日本維新の会や国民民主党など野党からの賛成が得られなければ予算を成立させることができない状況にある。いずれも為替や株価に直結するだろう問題だ。 

 

 新NISAが税制上優遇された制度であることは何ら変わらないが、もちろん投資である以上はリスクも伴う。2024年のように株価が上昇基調にあれば良いだろうが、2025年からの変動リスクをどこまで許容するのか。投資資産の価値が下がった時を想定しておく必要があるだろう。 

 

 

 リスク分散を可能とする投資信託も市場が低迷すれば資産価値が減少し、期待通りのリターンが得られないこともある。 

 

 新NISAスタートに伴い、2024年から投資を始めた人にとっては価格変動リスクに動揺してしまうかもしれない。市場が不安定になった場合、長期的な投資を視野に入れていたとしても不安になるのは当然だ。ただ、新NISAの趣旨からすれば短期的な市場変動をあまりに気にすると、制度のメリットを十分に享受できない可能性があると言える。 

 

 筆者のもとに訪れる相談者には、新NISAの活用をやめる人もいる。40代男性会社員のAさんに理由を聞くと、運用益が面白いように得られていた時はメガバンクのアプリで自らの資産運用状況を眺めるのが好きだった。だが、8月と9月に株価が暴落し、「毎日、ドキドキしながら株価やニュースをチェックするのが精神的に辛くなった」のだという。長期投資を念頭に入れているのであれば、基本的に「一喜一憂」してしまう人は2年目以降の投資継続には向かないかもしれない。 

 

 30代でフリーランスの道を選んだBさんの理由は別だ。口座開設時は毎月3万円の積み立て投資にしていたが、予想以上の運用益を得て月5万円超に増額することにした。最初のうちはボーナスも活用しながら投資熱にウキウキする日々だったが、最近は物価高騰とともに月々の投資額が重く感じるようになったという。 

 

 月末になると、銀行口座から自動的に新NISA口座に移る5万円超は生活費に必要となり、その都度の解約手続きを行うようになった。もちろん、手数料を考えれば毎月マイナスを垂れ流している。現時点ですべてを解約したわけではないが、手数料はリターンを圧迫する原因となるので要注意と言えるだろう。新NISAは長期投資が主眼にある制度なのだが、Bさんのように「追加投資」から生活に余裕がなくなり、「ほぼ退場」を余儀なくされるケースもみられる。 

 

 投資はタイミングやリバランスを誤ると、思わぬ損失を被る可能性がある。資産形成にはリスク分散と長期的な視点で運用を行うことが欠かせない。「老後破綻」を招かないよう新 NISA や iDeCo(個人型確定拠出年金)で資産運用を始めた人は少なくないが、投資額が膨らめば負担も大きくなる。 

 

 

 とりわけ収入が少ない若年層は、結婚や子育てなどのライフイベントを頭に入れながら計画的な運用が欠かせないはずだ。投資に回せば運用益が得られるからと生活費を削ってばかりいると思わぬ失敗を招くこともある。定期的に投資状況を見直し、必要に応じた調整も重要となるだろう。 

 

 新NISA元年の2024年は株価が上昇傾向だったものの、2025年はどうなるのか確実なことは誰にもわからない。SNS上には真贋入り交じった投資情報、偽情報も拡散されている。国は「貯蓄から投資へ」の流れを加速させる方針だが、大事なことは「自分のお金は、自分で守る」という意識だ。新NISA2年目の「落とし穴」に落下しないためには、より自らのアンテナを高くして資産形成プロセスを歩む必要があるだろう。 

 

佐藤健太 

 

 

 
 

IMAGE