( 243266 )  2025/01/02 16:37:42  
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長野県白馬村のスキー場 

 

 急増する訪日外国人客を呼び込み、にぎわいを回復する足掛かりとしたい長野県内のスキー産業。ただ今冬、北安曇郡白馬村や下高井郡野沢温泉村の宿泊施設では訪日客らの予約が殺到し、収容力が追い付かず予約を断わっている状況がある。背景にあるのは経営者の高齢化だ。機会損失と今後の発展の足かせにもなり、索道事業者らの中には焦燥感も膨らんでいる。 

 

 宿泊需要の増大を意識し、白馬村索道事業者協議会と大町市は21日、村内のスキー場と同市の大町温泉郷とをつなぐシャトルバスの運行を始めた。白馬エリアで宿泊先を予約できずにいる国内客の宿泊の受け皿として、温泉郷一帯の宿に目を付けた。 

 

 村では今冬季、宿泊予約の動きが例年より1カ月ほど早く、空き室がなくなる宿泊施設が続出している。「宿泊施設不足の白馬村と、冬の誘客を強化したい温泉郷のニーズが合致する」。温泉郷近くのホテル、ANAホリデイ・インリゾート信濃大町くろよんの藤井義裕営業部長(49)は、冬場の宿泊客増加に期待を寄せる。 

 

 白馬村の白馬岩岳スノーリゾートの運営会社などは今年、周辺の新田・切久保両エリアにある宿泊施設の収容可能人数を調べた。調査によると、現在44施設あり、1998年と比べ39減った。さらに、今後廃業する可能性があるところを引くと2035年には24まで減ると予想される。同社の斎藤耕平さん(41)は「手を打たなければ、宿泊施設は減る一方。村全体に言えることだ」と危機感を示す。 

 

 県の調べによると、2023年の県内の外国人延べ宿泊者数は前年の7・1倍の95万1217人泊(「人泊」は宿泊者の宿泊数の合計)。国・地域別では台湾が最多で、オーストラリア、香港が続く。宿泊者の市町村別では松本市、北佐久郡軽井沢町、長野市に続き、野沢温泉村が10万978人泊。山ノ内町は6万8683人泊、白馬村は6万2718人泊だった。 

 

 野沢温泉村の野沢温泉スキー場の麓には、温泉を擁する小規模の旅館や民宿が点在する。村によると、スキー場利用者の約8割が村内で宿泊し、約2割が日帰り。特にオーストラリア人は、春以降に翌冬季の宿泊予約を入れ始める。今冬の1~2月は、どの宿泊施設もほぼ満室だ。ある宿泊事業者は「状況を知らない人から問い合わせが来るが、断るしかない」と漏らす。 

 

 

 野沢温泉スキー場の片桐幹雄社長(69)は「宿泊の収容能力の向上は、スキー場の成長に欠かせない」と語気を強める。昨季の来場者数は約37万人だったが、収容能力の減少などを踏まえ、今季の目標は約35万人。「来場者が増えなければ投資ができず、スキー場の魅力が減っていく」とし、村を挙げた抜本対策を訴える。 

 

 村では、外国人による不動産投資が活発だ。高齢の経営者や後継者がいない宿を買い取る動きがあり、宿は減っていない。ただ、かつては大人数を受け入れていたが、近年、部屋を改装して高級感を出し、1部屋の定員を減らす例が増えている。 

 

 ホテルなど20軒弱を運営する野沢ホスピタリティー(野沢温泉村)のピーター・ダグラス社長(63)=英国籍=は「かつての野沢温泉は、値段が安く、たくさんの人を泊めるビジネスモデルだった。訪日客は、おしゃれで設備の良い宿を探している」とし、今後も事業を広げる構えだ。 

 

 

 
 

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