( 244186 )  2025/01/04 15:16:54  
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埼玉県庁。左が本庁舎、右が第2庁舎=さいたま市浦和区(半田泰撮影) 

 

建設から最長70年以上たち老朽化が著しい埼玉県庁舎は新庁舎建設は既定路線になっており、現在俎上にのっているのは新庁舎の場所だ。県が実施した県民向けアンケートでは「移転がよい」が「現在地がよい」より8ポイント高くなり、移転を望む声のほうが大きくなっている。建設地は未定で、大野元裕知事は「ゼロベースで検討すべきものと考えている」と述べるとともに、令和6年度中に一定の方向性を示すとしている。 

 

■築年数は最長73年 

 

さいたま市浦和区にある県庁舎はJR浦和駅西口から徒歩約10分。本庁舎(地上5階、地下1階)や県警が入る第2庁舎(地上10階、地下2階)など8棟の建物からなる。敷地面積は約6万7千平方メートルで、延べ床面積の合計は約9万6千平方メートル。 

 

県庁舎は建て増しを重ね、築年数は一番古い本庁舎が69~73年。一番新しい危機管理防災センターが14年で、新旧の建物が混在している。 

 

今は建て増しによる複数棟化や老朽化の弊害が顕著になっている。県の令和2年の調査では、県庁舎が8棟に分散しているのは関東地方で最多で、県職員からは「使い勝手が悪い」との声も。さらに、エアコンを使った室温は夏で最高28・8度、冬で最低15度となり、厚生労働省が定める規則(夏28度以下、冬17度以上)を満たしていなかった。 

 

■「知事の意向」 

 

新庁舎建設は2年、県議会の「県庁舎建て替え等検討特別委員会」がまとめた「将来の県庁舎の在り方について早急に検討すべきだ」との提言が採択されたことがきっかけになり本格化。以降、老朽化のうえに使い勝手の悪い県庁舎の新築を前提として、今後の県庁舎に求められる機能などについて複数の会議体で検討が進められている。 

 

この会議体での検討議題のひとつが新庁舎の建設場所。単純に建て替えとしなかったのは「知事の意向」(県担当者)だという。 

 

大野知事は新庁舎の場所についてたびたび「地域の人から幅広く意見をうかがいながら、ゼロベースで検討すべきものと考えている」と発言している。 

 

また、県民からは「現在の県庁舎は浦和の一等地。民間に売却して郊外にダウンサイズして移転したほうがいい」との声も寄せられている。 

 

 

■手挙げる自治体なし 

 

こうしたことから県は6年7月、「現在地での建て替えと移転はどちらがよいか」などについて、県民向けのインターネットアンケートを実施。2720人が回答している。結果は「移転」が42・9%、「建て替え」が34・9%、「どちらでもよい」が19・4%だった。 

 

ただ、「移転」との回答は県北部や秩父地域など現在の庁舎から遠い場所に住んでいる人からのものが多く、県は「住んでいる場所の近くに県庁舎があるといいと考える傾向がある」と分析している。 

 

また、移転する場合には新たに用地を取得する必要がある。そこで県は10月、県内自治体に①自分の自治体に県庁の移転を希望するか②その場合、移転用の用地を提供する気があるか-などを尋ねる文書を送付。しかし、これまで返答はゼロで、移転場所となることを希望する自治体は現れていない。 

 

◇ 

 

■埼玉県庁舎 

 

さいたま市浦和区の現在の場所の庁舎は明治2(1869)年に設置された浦和県の県庁舎がルーツ。4年に浦和県と岩槻県などと合併し埼玉県となった後もそのまま使われた。浦和県庁舎が置かれる前は「詳しい資料はないが、畑だったのではないかとされている」(県担当者)。昭和23年に火事で旧庁舎が消失。一時は仮庁舎などで執務にあたっていたが、26~30年に現在の本庁舎が4期にわけて建設された。 

 

■記者の独り言 

 

新聞記者になって最初の赴任地が埼玉県だった。当時の県庁舎への感想が「古くて寒い建物だなぁ」だったことを覚えている。あれから約30年。縁あってまた埼玉に赴任したが、とっくに建て替えていると思っていた県庁舎が以前のままだったのは驚いた。古すぎる庁舎では職員のモチベーションにもかかわるだろう。庁舎建て替えは多額の費用がかかるだろうが、それでも必要だと思うので早めに実現してほしい。(半田泰) 

 

 

 
 

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