( 244329 )  2025/01/04 17:55:32  
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2025年、バス運転士不足問題が深刻化しており、運賃の値上げや路線の統廃合などの対策が取られているが、インフルエンザなどで運転士が休んだり、減便が行われるなど予期せぬ問題も発生している。

バス事業者にとっては運転士不足が頭痛の種であり、若い運転士を養成して継続的に雇用する必要がある。

運転士の養成にはベテランが指導する必要があり、即戦力となる運転士も必要となっている。

不足する運転士は他の事業者間で移動することがあり、金銭面以外にも理想の担当路線や顧客対応などの要因で転職することもある。

バス業界はこれらの課題に対処しながら体質を変える必要がある。

(要約)

( 244331 )  2025/01/04 17:55:32  
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ベストカーWeb 

 

 2025年もバス運転士不足問題は深刻だ。すでに運賃の値上げ、路線の統廃合等、できることはやってきた。この冬は運転士がインフルエンザにり患して、路線維持ができず止むなく減便という不測の事態まで発生している。路線を維持するにはバス車両と運転士が必ず必要なので、バス事業者にとっては頭の痛い問題だ。 

 

 文/写真:古川智規(バスマガジン編集部) 

(詳細写真は記事末尾の画像ギャラリーからご覧いただくか、写真付き記事はバスマガジンWEBまたはベストカーWEBでご覧ください) 

 

 本稿ではさんざん指摘してきた運転士の待遇問題はとりあえず置いておく。バス事業者は生活の足となる路線を維持し、それでも赤字が出る路線は多いので、収益性の高い高速バスや貸切バスで埋めようとするのは今も昔も変わらない。 

 

 バス路線を維持するにはバスの車両とそれを運転する運転士が最低限必要だ。もちろん運行管理者や整備士も必要なのは言うまでもない。収益性の高いあるいは乗客が多い路線は便数を増やしたいところだがダイヤを密にするにはそれだけバスの台数を増やすことを意味する。 

 

 車両はお金を出せばいくらでも買える。地方のバス事業者ならば資本的に関係の深い都市部の事業者から中古バスが優先的に導入される。いずれにしてもお金で解決できる問題だ。 

 

 しかし、運転士はそうはいかない。免許を持っている人ならば訓練をすればよいが、若い運転士を養成して長く勤めてもらい、路線を維持するのが最も良い方法なのだ。よって事業者は積極的に若い人材を採用して免許を取得させる養成を行っている。 

 

 しかし、若い運転士の養成をするにはベテランの運転士が指導しなければならず、現状のダイヤを維持するためにはベテラン運転士が指導をしている余裕はない。自動車教習所に基礎訓練を委託してなるべく社内の運転指導を路線訓練に限る等の努力はしているが、それも限界なのが現状だ。そこで必要となるのが即戦力だ。 

 

 運転免許を持っているが経験のない人は免許取得のプロセスは省けるものの、基礎訓練から必要だ。職業ドライバーとして経験のある運転士は、これらの訓練を大幅に省略でき、即戦力となる。現在のダイヤを維持するためには即戦力も必要なのだ。 

 

 

 こうした努力で養成して戦力となった運転士が他の事業者へ流出するのも悩みどころだ。つまり、即戦力として採用した運転士は一度退役したリターン組とは限らないのだ。他の事業者からの転職もあれば、他の事業者へ転職してしまうケースも多い。 

 

 実態としてはダイヤに比較して絶対的に不足している運転士が事業者間で取り合いになっているのが現状だ。これら現役運転士の転職理由を聞いてみると、なにも経済的な待遇に限ったことではないようだ。 

 

 バス運転士に限ってお金以外の転職理由として挙げられるのは、「担当路線が理想と異なる」「クレーム処理がお客様は神様型」などだろうか。 

 

 バス運転士は運転する車両や路線により大まかに「貸切」「高速」「路線」に分けられるだろうか。大手の事業者はこれらすべてを事業とするが、最初は路線バスからというのが一般的だ。そして適正と慣熟により高速バスや貸切バスにステップアップしていくのが一般的な流れだ。 

 

 バス運転士を目指すマニアックな若い方に聞くと路線バスが大好きという声もあるにはあるが、一般的には高速バスを担当したいという考えが圧倒的に多い。ところが、いくら路線バスを担当していても路線バスのダイヤで手一杯なのでなかなか高速バスの担当になれないという不満があるようだ。 

 

 すると会社や待遇、運転士という仕事が嫌になったわけではなくても、高速バス専業の事業者に転職すれば最初から高速バスの運転士になれるという考えになっていくというのである。貸切でも同様のことがいえる。 

 

 現代社会では「カスハラ(カスタマーハラスメント)」という言葉が一般名詞化されるほど認知され、一人ですべての処理を行なわなければならないワンマンバスの運転士には負担が大きい。処理自体は事業者のマニュアルに沿っていれば」いいのだが、問題はカスハラが営業所へのクレームになった場合だ。 

 

 この取り扱いに不満を抱く運転士はすぐに辞めてしまう傾向にある。最近のバスには客室も記録するドラレコが搭載されているので、すべてのクレームに対してドラレコを確認してカスハラ認定したものについては運転士をとがめない事業者もあるが、全体としては少数派だろう。 

 

 こうした様々な待遇だけではない理由から悪い意味での「運転士の流動性」が起こっているのもバス業界の実態だ。事業者ではこうしたことに対処しながら体質を変えていかなければならない時期に来ているのかもしれない。 

 

 

 
 

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