( 246926 )  2025/01/09 19:25:52  
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photo by gettyimages 

 

中居正広がテレビから消えた。年末から番組収録が中止になったことが報じられるなど、女性トラブルの報道であやうい状況が続いていたが、年明けに入ると放送を見送る番組が続出。 

 

まず7日の『ザ!世界仰天ニュース4時間SP』(日本テレビ系)は放送こそされたが、中居の姿はすべてカットされ、大きく報じられた。 

 

さらに10日の『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)は映画『花束みたいな恋をした』、11日の『中居正広の土曜日な会』(テレビ朝日系)は他番組の再放送、12日の『だれかtoなかい』(フジテレビ系)は『千鳥のクセスゴ』、13日の『THE MC3』(TBS系)は『クレイジージャーニー』に差し替えられている。 

 

中居と言えば、元国民的アイドル・SMAPのリーダーであり、業界トップクラスのMCだけにその影響が大きいのは当然だろう。「事実上の引退へ」という声もあがっているが、はたして本当なのか。 

 

年末から業界内で聞き込みを続けているが、残念ながら現段階では口をつぐむテレビマンが多かった。しかし、その反応からシビアな現状と今後の行方が読み取れる部分もあっただけに、どこにも忖度せずに掘り下げていきたい。 

 

7日の『ザ!世界仰天ニュース4時間SP』は衝撃的だった。日本テレビが番組を差し替えるのではなく、「中居だけを消す」という選択をしたところに現状の深刻さが現れている。 

 

「手間とお金をかけた大型特番であり、お蔵入りは避けたい」「再現ドラマ中心の構成で中居のみをカットする編集が可能」などの背景はあったとしても、その扱いは「番組からの追放」とみなされてもおかしくないものだった。 

 

ただ、昨年末に日本テレビが今回の決断に至る伏線があった。12月27日に特番『ナカイの窓 復活SP』(日本テレビ系)が放送されると、ネット上に日本テレビへの批判が続出。なかにはCMの放送を見送らなかったスポンサーへの批判も散見されただけに、事態を重く見るのは当然かもしれない。 

 

つまり、「最優先はスポンサーで、次に番組、さらにもう1人のMC・笑福亭鶴瓶であり、中居に配慮している場合ではなくなった」ということだろう。 

 

こうなると「中居だけを消した」日本テレビに限らず、「番組ごと差し替えた」他局も含め、「示談済みだから」「まだ疑惑の段階だから」とみなして出演番組を放送することは難しい。各局の混乱は続くが、このタイミングで「一定のラインが引かれた」と言っていいのではないか。 

 

収録が行われていない現状を踏まえると、最低でも1ヵ月間は番組でその姿を見かけることはないだろう。それどころか「放送中止のまま3月末の改編期を迎えて終了」という見方が広がりつつある。実際、中居の番組を担当している当事者ではないものの、聞き込みをした5人のテレビマンがその可能性を否定しなかった。 

 

 

さらに、「昭和、平成の時代はMCまでのぼり詰めた大物であれば、不祥事のあとに復帰することもできたが、現在は大物だからこそ扱いづらい」という声もあった。かつてMCを務める芸能人はそれほど業界内でのパワーがあり、視聴者も替えの効かない存在として復帰を受け入れたが、令和の現在ではそれが難しいということだろう。 

 

テレビにおける中居の立ち位置はMCであり、ゲスト出演はほとんどない。中居のキャラクターをベースに番組が企画されるなどシンボリックな存在だけに、降板というより打ち切りにせざるを得ないケースが多く、おのずと出演番組は減っていく。たとえば70代のタモリは後任を立てることなく出演番組を終了させ続けているが、現在52歳の中居にもその流れが急速に訪れるかもしれない。 

 

では出演番組の中で最も影響を受けるのはどれなのか。 

 

もはや終了を避けられないのは、中居の名前を含む3つの冠番組。ニュースをベースにした情報番組の『中居正広の土曜日な会』は「キャスター・中居」ありきのコンセプトであり、後任MCは考えづらい。 

 

また、「もし続けるのであれば、今回の問題を扱わないわけにはいかない」という難しさもあるが、もともと土曜昼にひっそりと放送されている番組だけに、そこまで穴は大きくないと言っていいだろう。 

 

同様に『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』も中居ありきの構成であり、「芸能人の本音や素顔に迫る」というコンセプトもあって続行は絶望的。「再現ドラマをベースにしたトークバラエティという番組ジャンルは踏襲する」という一部報道もあったが、後任の人選が困難なほか、「トラブルのあとはガラッと変える」というマーケティングセオリーを踏まえると懐疑的な見方が多い。 

 

金曜21時台は民放各局が「視聴率が取れなくなった」「何をやっても難しい」と苦戦が続く時間帯だけに、2001年から24年超にわたって放送されてきた番組が終了するとなれば、その穴は大きくなりそうだ。 

 

 

『だれかtoなかい』は、松本人志の活動休止によってすでにコンセプトが崩壊していたほか、視聴率の低迷も加わり、業界内でも「いつ終了させるのか」と噂になっていた。中居の問題も発生したことで逆に終了させない理由はなく、「すでに新番組の候補もあがっていたことから他番組よりは影響が少ないだろう」とみられている。 

 

フジテレビの日曜ゴールデンタイムは19時台、20時台に千鳥の冠番組が放送されているだけに、それに合わせて「スタッフも含めて若返りさせるチャンス」という声もあり、思い切った新番組が採用されるかもしれない。 

 

『ザ!世界仰天ニュース』は今回の特番でわかったように、「MCなし」でも成立する上に、今春で放送25年目に突入する人気番組だけに打ち切りは考えづらい。現状では松本人志が不在のまま代役を立てずに放送している『クレイジージャーニー』(TBS系)のように、「笑福亭鶴瓶の単独MCになるのでは」と見られている。 

 

ただ、中居が病気療養中だった2022年末から2023年初は鶴瓶が単独MCを務めたほか、藤ヶ谷太輔や羽鳥慎一が代理を務めた回もあっただけに、後任が検討される番組の1つだろう。 

 

実は「最も中居の穴が大きい」と言われているのが『THE MC3』。「中居正広、東野幸治、ヒロミのMC3人がそろい踏み」というコンセプトの番組で、なかでも真っ先にクレジットされている中居の不在は痛恨であり、続行に向けてあらゆる可能性を探っているという。 

 

昨秋にスタートしたばかりであり、東野とヒロミのためにも終了させづらい。後任を立てない『THE MC2』では引き算になってしまうコンセプトであるが、東野とヒロミに渡り合える人選はさらに難しいなど、最善策が浮かびづらいのが苦しいところ。今回の問題で中居が最も迷惑をかけている番組と言っていいのではないか。 

 

それ以外では、昨年末に6年の時を経て復活したばかりの『ナカイの窓』も、中居ありきの冠番組だけに次回放送は絶望的。 

 

また、『中居正広のプロ野球珍プレー好プレー大賞』(フジテレビ系)、『プロ野球 ドラフト会議』(TBS系)、『音楽の日』(TBS系)などの定期放送されている特番は、中居というより放送内容へのファンが多いことから後任を立てて続けていくことになるはずだ。 

 

トータルで言えば、MCの実績と技術に疑いの余地はないものの、高視聴率を獲得していた番組がないという事実もある。緊急対応を余儀なくされた各局の制作現場は混乱に陥っている一方で、中居がテレビから消えることで生じる穴はあまり大きくないのかもしれない。 

 

最後に話を中居に戻すと、「事実上の引退」と言われても仕方のない状況に追い詰められていることは間違いないだろう。松本人志のようにサブスク型の動画配信で活動することも可能だが、MCが本職だけに問題の特性上、共演者が選ばれるという難しさがある。業界内では実は評価の高かった「俳優になったほうがいい」なんて声もあるが、現段階ではそこに本人のモチベーションがあるとは思えない。 

 

しかし、中居が元国民的アイドルであり、日本を代表する現役MCでもある以上、「何も言わずに消える」という選択はファンのみならず、納得できない国民が多いのではないか。今後も報道が続く中、相手側との守秘義務があるとしても、自分の声で何らかの言葉を発することが求められていくだろう。 

 

木村 隆志(コラムニスト/コンサルタント) 

 

 

 
 

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