( 247581 ) 2025/01/11 05:10:54 0 00 女性スキャンダルが報じられている中居正広さんと松本人志さん。2人に共通する「不信感」の正体とは?(写真:時事)
中居正広さんが、女性スキャンダルと約9000万円の解決金支払い報道をめぐり、謝罪する声明文を発表した。トラブルの存在を認めつつ、暴力については否定し、芸能活動を継続する方針を示した。
SNS上では、ちょうど1年前の年末年始に女性スキャンダルが報じられた「ダウンタウン」松本人志さんを絡めた反応も多々見られる。
ネットメディア編集者である筆者の視点から、両者に共通するネットユーザーの嫌悪感と、その背景にある「オールドメディア」への疑念について考えたい。
■CM削除、出演番組は放送休止へ
一連の報道の発端となったのは、2024年12月19日発売の「女性セブン」だ。ここでは中居さんが、なんらかのトラブルにより、9000万円にのぼる「解決金」を支払ったと報じられていた。
【画像6枚】9000万円もの示談金…一体、女性に何をした? 中居正広、公式サイトで“声明”を公開
そして12月25日には、「週刊文春」電子版が「中居正広9000万円SEXスキャンダルの全貌 X子さんは取材に『今でも許せない』と…」と題した記事を公開。
「20代の芸能関係者X子さん」が、中居さんとフジテレビの編成幹部らによる会食を行うことになったが、編成幹部が欠席し、その場で中居さんが性的行為を行ったとの経緯を伝えた。
これらの記事によると、中居さん側はトラブルの存在を認めている。そして中居さんは12月27日、有料会員向けに謝罪文を掲載し、「今向き合わなければならないことを真摯に、懸命に取り組んでおります」とコメントした。
またフジテレビは同日、「内容については事実でないことが含まれており、記事中にある食事会に関しても、当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません。会の存在自体も認識しておらず、当日、突然欠席した事実もございません」などと声明を出した。
そのまま2024年中は、それほど変化が見られなかったが、年明けから動きが。ソフトバンクやタイミーのCMが削除され、「ザ! 世界仰天ニュース」(日本テレビ系)の出演カットをはじめ、冠番組である「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS系)、「中居正広の土曜日な会」(テレビ朝日系)、「中居正広 ON&ON AIR」(ニッポン放送)、「だれかtoなかい」(フジテレビ系)の放送休止も決まった。
■「今後の芸能活動についても支障なく」
そして1月9日、中居さんは公式サイトで、「お詫び」と題した文章を公開。報道内容には「事実と異なるもの」もあるとしつつ、「トラブルがあったことは事実です。そして、双方の代理人を通じて示談が成立し、解決していることも事実」とした。
また、「示談が成立したことにより、今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」と報告。フジテレビ関係者については「当事者以外の者の関与といった事実はございません」とした。
謝罪文を読むかぎり、中居さん自身は、芸能活動の継続に前向きだ。しかし、SNS上では、批判的な反応が多い。
■松本人志も、復帰に意欲を見せる
本人は意欲的ながら、ネットユーザーからは反感を買っているという点で思い出すのが、2023年末に「文春砲」が放たれ、翌年1月から活動休止している松本さんだ。
2人の事案は、大手事務所の看板タレントによる女性スキャンダルとあって、当初から比較対象にされてきた。また、どちらのケースも、部分的な否定と肯定を行っている。
今回の「お詫び」では、トラブルそのものは認めつつ、暴力行為については事実ではないと説明。しかし具体的に書かれていないため、読者は「真実はどこにあるのか」が読み取れず、「結局何が言いたいのか」といった読後感を覚えてしまう。
松本さんの裁判終結にあたり、代理人弁護士から出されたコメントも、会合への出席を認める一方、「強制性の有無を直接に示す物的証拠はないこと等」を確認したというものだったが、これもどこか奥歯に物が挟まった表現に感じさせた。
極論を言えば、文春をはじめとする各種報道の「ここは正確」「ここは不正確」を、1文ごとに赤ペンを入れつつ反論するしかない。
しかし、おそらく守秘義務や被害者保護などの観点で難しく、こうしたモヤモヤの残る文章となるのだろう。フジテレビの声明が、よく頭に入ってこないのも、同様の理由と考えられる。
ただし、臆測が急速に広まるSNS時代において、重要なのは「早期かつ具体的にファクトを伝える」ことだ。その点において、中居さんと松本さんのケースに共通する「『疑惑』のまま越年した」ことは、今後に影を落とす可能性がある。
年末年始は、とくにエンタメに触れる機会が多く、NHK紅白歌合戦など注目のコンテンツも多々ある。SMAPが解散したのも、2016年の大みそかだった。
松本さんの相方である浜田雅功さんは、特番に引っ張りだこ。木村拓哉さんの新CMや、香取慎吾さんの主演ドラマなども始まり、「そういえば」と思い出す場面もあっただろう。
そんななか、突然テレビやネット広告から消えた中居さんの動向を、視聴者が気にするのは当然だ。しかし本人サイドによる公式発表が(ほとんど)ないまま、CM打ち切りや出演番組のカットが相次いで報じられる。記事の多くは「取材でわかった」と書かれており、「聞かれないと答えない」ような印象を与えてしまう。
■今回、テレビ局が“疑惑の対象”に含まれている
中居さんと松本さんの事案で、最大の相違点となるのは、今回は(事実関係は不明ながら)フジテレビというテレビ局が、疑惑の対象に含まれていることだ。中居・フジ双方が、フジ社員の関与を否定しているが、ネットユーザーは「芸能界ならさもありなん」と疑いの目を向けている。
その背景には、昨今の「オールドメディア」批判も多分にあるだろう。SNSなどのネットメディアが、旧態依然とするマスメディアと互角の影響力を持った、もしくは上回ったと認識している人々は、今回のようなスキャンダルを「既得権益打破」の足がかりにしようとしているように感じられる。
そんな状況下で、芸能界の「村社会」を印象づけるような対応が、どれだけネガティブに働くか。視聴者そっちのけで、事務所や放送局、スポンサーからなる「ギョーカイ内」で完結しているように見えてしまい、それがさらに嫌悪感を増幅させているのではないか。
民放テレビはメディアでありながら、商業的な側面も持つ。どれだけ視聴率が伸びても、スポンサー企業の購買につながらなければ、ビジネスとしては失敗となる。だからこそ、視聴者を横に置き、内輪で解決させようとしていると感じさせるのは、あまり得策でない。
■「テレビ業界のコンプライアンス問題」に発展している
もちろん、被害が表に出ていなければ、内輪での解決も問題ないだろう。しかし、今回の事案は、相手が納得していないから、事が公になっている。示談してもなお、根本的な問題解決になっていないと考えているからこそ、雑誌メディアの力を借りたのではないか。
昨今の「オールドメディア」批判の根底にあるのは、「メディアは真実を隠している」といった疑念だ。たとえ真実を伝えていても、一度でも疑われたら、なかなかフィルターを外すことは難しい。しっかり視聴者なり読者なりに向き合って、地道に「真実である理由」や「公にできない理由」を説明するほかない。
今回の事案は、すでに「中居さんの個人的なスキャンダル」ではなく、「フジテレビをはじめとする、テレビ業界のコンプライアンス問題」に発展している。中居さんの声明では、テレビ局の職員は関与していなかったことを間接的に述べているが、フジテレビ側の対応を見る限り、そこまで大ごとになっていると認識できていないのではないか、と思えてしまう。
中居さんの謝罪文にあった「今後の芸能活動についても支障なく続けられることになりました」は、まさにその象徴だ。この1文が与える印象が、中居さんの今後を左右する可能性は高いと考えている。
「続けたい」といった願望ではなく、決定事項として「続けられることになった」とする言い回しは、誰かがお墨付きを与えたことを意味する。
主語が書かれていないが、中居さんが現在、個人事務所「のんびりなかい」の所属であることを考えれば、常識的にはマスメディアまたはスポンサーであろう。
示談による和解条項として、相手方の承諾を得たという意味合いの可能性もあるが、各報道での女性コメントを読む限りは、そうは見えない。
であれば、各社は「活動継続を支持する理由」を一刻も早く説明するほかない。その対応によっては、嫌悪感もより濃いものになり、中居さんの復帰どころか、立ち直れないほどの「テレビ離れ」に至ってしまうだろう。
城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー
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