( 247871 )  2025/01/11 17:53:02  
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現在の滑走路(中央)の左側で整備が進む2本目の滑走路(昨年9月1日、福岡市で、本社機から)=三浦邦彦撮影 

 

 国土交通省が福岡空港(福岡市博多区)で整備を進めている2本目の滑走路について、中野国交相は10日、3月20日から供用を開始すると明らかにした。ただ、安定的に発着できる「滑走路処理能力」は、1時間あたり38回から40回への2回増にとどまり、効果は限定的だ。2本目の運用が開始されても、国際線など拡大する航空需要には対応できない状況が見込まれ、処理能力のさらなる向上を求める声もあがっている。 

 

(写真:読売新聞) 

 

 福岡県の服部誠太郎知事と福岡市の高島宗一郎市長は10日、東京都内の国交省で中野国交相に、2本目滑走路の早期供用開始などを求める要望書を手渡した。中野氏は「順調に準備が進んでいる」と述べ、3月20日から供用開始する方針を正式に伝えた。 

 

 面会後に報道陣の取材に応じた服部知事は「地元の思いをしっかり受け止めていただいた」と述べた。一方、「現行の38回から2回増にとどまっていると受け止めている。より処理能力の向上を果たしていかなければならない」と語った。 

 

 中野国交相に処理能力拡大を要望したところ、「国としても地元自治体と力を合わせて取り組んでいく」との返答があったという。 

 

 福岡空港を巡っては、国、県、福岡市が2003年度から総合調査を実施。海上での新空港建設と現空港での滑走路増設の2案を検討し、09年度に麻生渡知事と吉田宏市長(いずれも当時)が、地元意見として滑走路増設を求める意見書を国交省に提出した。国交省は15年度に事業に着手した。事業費は約1643億円。 

 

 滑走路が2本になるにもかかわらず、処理能力が抜本的に増えないのは、市街地に近い福岡空港の敷地は約350ヘクタールと狭く、滑走路間の距離が近いためだ。2本目の滑走路(長さ2500メートル、幅60メートル)は、現滑走路(長さ2800メートル、幅60メートル)の西側(国際線ターミナル側)210メートルの場所に整備されており、航空機の同時発着はできず、処理能力は微増にとどまる。 

 

 

 一方、福岡空港は90秒に1回のペースで航空機が利用し、「日本一過密」と言われる。さらに空港の運営会社「福岡国際空港」によると、24年度ダイヤでも1日の発着枠を超える要望が航空各社からあったという。 

 

 こうした中、さらなる処理能力の向上には、航空機の進入経路の変更が必要になる。国交省によると、変更で1時間に45回まで拡大できるが、新たに航空機が上空を飛行する自治体の理解を得る必要がある。 

 

 滑走路が2本になっても、利用時間は原則午前7時~午後10時で「門限」があり、24時間使えないという制約は残る。有識者からは利用時間を延長すべきだとの指摘も出ているが、議論は進んでいない。騒音や市街地上空を航空機が飛ぶことによる墜落、部品落下の危険性の問題も解決できないままとなっている。 

 

 処理能力の向上が限定的となる中、経済界の一部からは「すぐに満杯になるのは明らか。アジアの拠点空港にしていくためには、もう一度、海上での新空港の議論を始める必要がある」との声も出始めている。 

 

 

 
 

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