( 248091 )  2025/01/12 05:21:24  
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韓国や中国では、EVに使用するバッテリーが世界をリードする技術として、世界で支持されている。とくにここ10年での進化は凄まじく、まだまだ今後の発展が見逃せない。 

 

グローバルでEVの普及が進むなか、搭載されるバッテリーも世界各国で生産されるようになっている。そうしたなかで、中国製や韓国製のバッテリーの生産量も増加してきた。日本製バッテリーと比較して、性能はどうかという視点をもつ人がいるかもしれない。 

 

また、EV市場規模で見れば、中国が世界最大の生産・販売大国であるので、自ずと中国製バッテリーの性能も、いまや世界の水準以上、または世界的に見て高水準であるはずと思う人もいるだろう。 

 

韓国についても、ヒョンデ「IONIQ 5」の世界累計販売台数が34万台を突破しているなど、韓国ブランド車のEVシフトが着実に進んでおり、バッテリー性能も当然に高いと考える人が少なくないはずだ。 

 

時計の針を少し戻してみると、中国でのEVシフトが鮮明になったのは、2000年代後半から2010年代前半にかけてだ。 

 

当時、3大国家イベントだった2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年の広州アジア競技大会を、中国政府は中国のEV開発実態を内外に示す貴重な機会と位置付けた。それにあわせて、バッテリー、モーター、制御システム等、EV関連部品については、高度な次世代技術開発を国として統括する「863計画」が中核となり、官民連携でEV関連の研究開発を加速させた。 

 

バッテリーについては、サイズの指標を示すなどして、メーカー間の性能差を可能な限り少なくする試みを行っていた。 

 

そうした流れのなかで、BYDやCATLが事業基盤を徐々に築いていった。また、海外資本メーカーが中国国内でEVを製造する際、中国地場のバッテリーを導入することが必須であったことも、中国バッテリーメーカーの知見を増やすために大いに役立ったといえるだろう。 

 

一方で、韓国製バッテリーについては、LG化学が2000年代に米GM用にアメリカ国内で大規模生産拠点を設け、量産効果と技術開発が並行して進んだ。また、独ボッシュとサムスン電子それぞれが出資した、SB.  LiMotiveが立ち上がり、BMW「iシリーズ」向けの研究開発を進めた。だが、両社は経営方針で折り合いがつかなくなり、SB.  LiMotiveは数年で解散するという末路を描く。 

 

そのほか、韓国政府および地方政府が、北米や欧州を視野にヒョンデやキアが電動化戦略で飛躍できるよう、韓国内での燃料電池車やEVなどの次世代技術開発を後押しした。さらに、韓国はリチウムイオン電池の生産設備開発にも力を入れてきたことも特徴だ。 

 

こうして、中国と韓国では過去10年以上にわたり、電動車向けバッテリーの技術開発が着実に進んできた。今後については、バッテリーだけではなく、クルマの材料、部品製造、最終組み立て、販売、リユース、そして最終的な廃棄に至るまでのLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点が重要となる。 

 

バッテリーについては、欧州で2027から「バッテリーパスポート」が導入される。これにより、材料調達時から廃棄までバッテリーの一生をデータとしてトレースできるようになる。そうなると、中国、韓国、そして日本を含めたバッテリーの安全性や耐久性の性能差が明確になるため、結果的に各国のバッテリーの性能の差が縮小すると見込まれる。 

 

桃田健史 

 

 

 
 

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