( 248131 ) 2025/01/12 06:06:26 0 00 雨竜町で空知総合振興局の職員がクマに襲われた現場から百数十メートルの場所に設置された箱わな=2024年6月
人里近くで出没を繰り返したり、人を襲ったりするなど問題行動を起こすヒグマを駆除しても、公表をためらう自治体が目立ってきた。公表後に全国から「なぜ殺すのか」という抗議や非難が相次ぎ、自治体職員が対応に忙殺される事態が相次いでいるからだ。だが駆除の事実を知らされない地域住民は不安を抱えたまま生活することになりかねず、多くの市町村が対応に苦慮している。
2024年6月に道職員の男性がクマに襲われ、大けがを負う事故が起きた空知管内雨竜町。町が事故後、捕獲用の箱わなを山林に設置したところ、ニュースを見た人から「捕まえても駆除するな」との声が相次いだ。
町職員2人が2日間で約30件の電話に対応。しつこく抗議を繰り返す人もおり、担当者は「業務がまひする恐れもあった」と振り返る。その後、町は駆除したかどうかを公表していない。
道内のヒグマの目撃件数は2021年以降、毎年2千件を超えている。クマによる人身事故も過去3年間で10件発生した。問題行動を起こすクマへの対処は自治体にとって差し迫った課題となっている。
札幌市はクマの駆除直後、地域住民に周知するため報道発表している。人を襲った可能性のあるクマを24年9月に西区小別沢で駆除した際も即日公表した。ただ道内外から100件以上のメールや電話が寄せられ、多くは市の対応を批判する内容だったという。
23年7月に南区北ノ沢の住宅街付近に出没したクマを駆除した際も、1カ月に600件以上の意見が寄せられた。中には「おまえらは殺してばかりだ」と感情的な言葉で担当者を攻撃する人もいた。
札幌市の担当者は「ヒグマを駆除したかどうかの情報を提供するのは、住民の不安を取り除くため。ただ理不尽と思える意見もあり、対応に苦しんでいる」とこぼす。
札幌市のような事態はツキノワグマによる被害が相次ぐ東北などでも起きており、「野生生物と社会」学会(東京)は23年11月に発表した緊急声明で「(クマは)人命を奪うこともあり、一定数の捕獲は欠かせない」と説明。「関係者への配慮の無い電話や執拗(しつよう)なクレームは、関係者の努力をくじき、かえってクマとの共存を妨げる結果を招く」と訴えた。
道ヒグマ対策室によると、自治体に人身事故などを起こしたクマを駆除する義務はなく、公表する決まりもない。このため悪質なクレームなどを受け、駆除の公表を遅らせたり、見送ったりする自治体が今後増える可能性もある。
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