( 248296 )  2025/01/12 17:05:23  
00

国立大学医学部を卒業し医師免許を取得したものの、動画編集教育ビジネスを選んだ青笹寛史社長 

 

 テレビやラジオといった従来のメディアに代わり、動画メディアの勢いが止まらない。特にYouTubeは多くの人が気軽に配信できるようになり、YouTubeチャンネル数も増加。生き残りをかけた激戦が続くなか、YouTubeでの発信力も活用しながら、事業の成功を収めている時代の革命家たちに迫る。 

 インタビュアーは、出版プロデューサーでビジネス書作家の水野俊哉さん。水野さんは出版プロデューサーとして数々のヒット作を世に送り出し、自らも作家として多くの書籍を出版している。 

 

 今回、「令和の虎」に最年少の虎(投資家)としてレギュラー出演中、『世界一やさしい YouTube動画編集の教科書1年生』(ソーテック社)の著者としても知られる青笹寛史さん。青笹さんは国立大学医学部医学科に在学中、動画編集教育の会社を設立し、法人1期目に売上1.5億円を達成。 

 

 医学部を卒業し医師免許を取得したものの、医師の道ではなく動画編集教育事業に邁進する青笹さんに話を聞いた。 

 

水野:令和の虎チャンネルに出演したことで、知名度が上がった青笹社長ですが出演のきっかけは何だったのですか? 

 

青笹:それまで出演されていたStockSun株式会社の株本(祐己)さんが「出演を辞めます」ということがきっかけで、その代わりに出させていただくようになったんです。もともと株本さんとは、StockSunのフリーランスとして活動し、自身が最上位クラスになったあたりから、目をかけてもらうようになりました。 

 

水野:出演されたのが医学部6年生の時でしたよね。 

 

青笹:そうですね。令和の虎の影響力は知名度という意味でもすごかったのですが、横のつながりもすごく感じました。 

 

 株本さんのつながりでYouTubeの「ヒカルチャンネル」に出演されていた林(尚弘)さんや桑田(龍征)さんとも知り合えましたしね。自分の目の前に来たチャンスに臆せず飛び込んでいくことで道がひらけてきた感覚があります。 

 

水野:青笹さんがヒカルさんに「自分をヒカルチャンネルに出してほしい」と直談判したことがヒカルさんの目に留まったんでしたよね。チャンスを果敢につかみにいくのも印象的です。 

 

青笹:令和の虎の出演と同じくらい、ヒカルチャンネルへの出演でも一気に知名度が上がりました。林社長とはビジネスアイディアの話をしたり、動画CAMPのフランチャイズ化について教えてもらったりという、自身の事業にも大きなプラスをもたらしました。 

 

水野:飲み会も相当な数行かれていたと聞いていますが……。 

 

青笹:はい、一時は週7回、夜の街で林社長と飲んでいましたね。呼ばれたらすぐ行くスタンスでした。今は週1回くらいに落ち着きましたが、林社長は常にビジネス展開のことを考えているので話は尽きません。 

 

 改めて、YouTubeの持つ可能性は無限大だと感じています。自社事業でお客さまを抱えながら、YouTubeによって知名度を上げる。そして新たな商品やサービスをローンチすると確実に売れていく、ということをこの数年間で体験してきました。 

 

水野:なおかつ青笹社長の場合は、さまざまな方に引き上げられて、ご自身でも必要な投資として資金を出し、実績も出されています。合理的にビジネスを進められていますよね。 

 

 

水野:そんな青笹社長は島根大学医学部卒という異色の経歴を持っていますよね。ちなみに島根大学に進学されたのは理由があったんですか? 

 

青笹:父の実家が福岡で、島根のあたりにも親戚がたくさんいたこともあって、島根大学を選びました。大学6年間島根に住んだので、人生の中で一番長く住んだ場所になっています。 

 

水野:どんな大学生活を送られたのでしょうか。 

 

青笹:入学してしばらくは「医師になろう」と思って勉強していましたが、しばらくすると大学も休みがちになって、飲み会やバンド活動に明け暮れる毎日になりました。高校までに感じていた窮屈さから抜け出した開放感がそうさせたのかもしれません。 

 

水野:普通の大学生ならいざしらず、医学部だとそれだとまずい気がしてしまいますが……。  

 

青笹:って思うじゃないですか。だけど周りの優秀な友人たちのおかげで、試験対策もできていたので、単位も問題なく取得できていました。 

 

水野:それはすごいですね。そのあたりの合理性は経営者となった今も健在ですね。その後、青笹社長は在学中に起業されます。どんなきっかけがあったのですか? 

 

青笹:医学部の友達は抜群に優秀で、勉強はできました。ただ逆に言うと、「勉強だけがアイデンティティだな」とも感じていたんです。しかし、自分はそうではない。飲み会やアルバイト、バンド活動を通して自己のアイデンティティを探していたんです。 

 

 そんなとき、NewsPicksを見ていたら「これからはライドシェアが流行る」という記事を見つけました。まさに島根では仲間内でライドシェアのような文化が根付いていたんですね。どこに行くにも車移動が基本で、飲み会があると飲みに行かない友達が送り迎えするという互助関係があったのです。 

 

水野:なるほど、そこに目を付けられたのですね。 

 

青笹:友達関係に頼らず、送り迎えをマッチングするツールがあればみんな使うはずだと。早速アプリ制作をしようと思い立ったのですが、200万円というお金はすぐには準備できません。周りもみな学生ですから、投資するのも期待できません。 

 

 そこでネットで投資家を探したところ、すぐに「200万円出資します」と言ってくれる投資家が見つかったんです。  

 

水野:その後の展開が読めてしまいそうですが……青笹社長はそのときはこの投資家の方に賭けてみようと思ったわけですよね。 

 

青笹:はい、そうです。当時は純粋だったので、「出資してくれる」という投資家の話を精査もせずうのみにしてしまいました。しかし悪いことは続くもので、自分の200万円を投じてアプリは完成したものの、ほとんど誰も使ってくれなかったんです。 

 

 結果がまったく出ないうえに、200万円の投資をしてくれると言っていた投資家ともまったく連絡がつかない。プログラマー代を支払う期限は刻々と近づいてくる。このときばかりはマジで青くなりましたね……。 

 

水野:しんどいですね……。ただこれが、成功につながる失敗経験となったわけですね。 

 

青笹:はい。自分としては真剣に新規事業を立ち上げたつもりだったのですが、今考えれば何も知らない状態で「ビジネスごっこ」をやろうとしていただけ。うまくいくはずがないですよね。 

 

 

水野:このときの経験から「やっぱり医師の道に戻ろう」とならないのが青笹社長らしいなとも感じますが、返済を含め「稼ぐぞ」というモードに切り替わったのでしょうか。 

 

青笹:そうですね。返済もですが、収入を得ないとそもそも生活が成り立たなかったんです。昼は授業、夜はアルバイトという生活を続けました。しかし、もっと大きな収入が欲しい。そう考えたとき「パソコンを使う仕事なら授業の合間にできるんじゃないか」と思い、出会ったのが「動画編集」という仕事だったのです。 

 

水野:最初から動画編集という仕事だけに絞っていたのですか? 

 

青笹:いえ、実は動画編集以外にも、ランディングページ制作や、医学の知識を活かした医療系記事のライティングなども受けていたのですが、そのなかで動画編集だけ異常に仕事が多かったんです。 

 

 2019年頃、ちょうどYouTubeでマネタイズするブームがきていて、チャンネルが乱立し、動画編集の仕事も次々に舞い込んできていました。「ここに商機があるな」と確信して動画編集業務を究めることにしたんです。 

 

水野:まさにゴールドラッシュといえる時期だったのですね。ちなみに動画編集作業自体は独学で学ばれたのですか? 

 

青笹:いいえ、StockSunの迫(佑樹)さんに編集作業を一から教えていただきました。 

 

水野:これが、のちにYouTube×LINEのスペシャリストであり、動画編集CAMPのフランチャイズ展開にまでつながっていく最初の一歩だったんですね。 

 

青笹:はい。しばらくすると自分だけでは案件を受けきれず、外注するようになりました。しかし、それでも依頼は止まりません。なぜだろうと考えたとき、「市場に動画編集をできる人が少ない」ということに行き当たりました。「それなら自分がノウハウ提供することが、ビジネスになるのでは?」とひらめいたのです。 

 

 時を同じくしてフリーランス集団の「StockSun」に参加し、多くの実績を得て動画編集の教育プログラムが確立したことも大きかったですね。 

 

水野:2019年、この段階でもまだ医学生です。当時は今後の進路をどう考えていたのですか? 

 

青笹:このときもまだ医師になるつもりはあったのですが、コロナ禍の時期、外に出歩いていたことが学校側に知られ、厳重な注意を受けたんです。島根は全然感染者がいなかったんですよ。このとき、「自分は保守的な世界ではなく、ビジネスの世界で生きていこう」と決めました。その後、医師免許だけは取りましたが。 

 

水野:2020年にはアズール株式会社を設立し、しかも1期目から売上1.5億円、営業利益が8,000万円出ていたといいますから、医師になるよりもはるかに大きな収益を得ていくことになりましたね。 

 

青笹:ありがとうございます。StockSunで行っていたことを会社組織で行ったおかげで、円期目から成果を出せたのだと思います。 

 

 2期目には利益が約2億円になりました。順調ではありましたが、他にもっと結果を残している経営者も大勢いらっしゃいました。なので、自分のことを「すごい」とは思っていませんでしたね。 

 

 

水野:2022年からは動画編集CAMPをオフラインで開催されています。これはどんな経緯があったのでしょうか。 

 

青笹:オフラインで始める前に、家賃120万円もする活動拠点を持ちました。「せっかくなのでこの場を活かしてマネタイズしたい」という気持ちになり、「それなら動画編集セミナーをオフラインでやってみるか」とノリで始めてみたのです。 

 

水野:受講者さんたちの反応はいかがでしたか? 

 

青笹:当然「オンラインがいい」と思っていたのですが、参加者さんからは「オフラインのほうがいい。わからなかったらすぐ聞けるから」という予想外の反応だったのです。 

 

水野:「まずはやってみるか」の意識で始められたのですね。集客はどうされたのでしょうか。 

 

青笹:YouTubeとXだけです。YouTubeチャンネル「青笹のもっと動画編集を広げたい」は起業した月から始めたのでもう5年くらいになりますが、「動画編集者になるには?」「動画編集者とは?」というテーマに絞って、動画本数は350本を超えています。専門チャンネルにすることで、より動画編集者のリアルな現状を知っていただいていますね。 

 

 Xの投稿に関しては、「動画編集にトライしてみたくなる」内容にしていて、そこからLP(ランディングページ)に誘導しています。 

 

水野:Xの運用は手がかかるイメージがありますが、そのあたりはどのように時間を捻出しているのでしょうか。 

 

青笹:実は投稿している内容のほとんどは大学時代に書いたものなんです。「人が商品を購入する」消費者心理に従って、お金、時間、人間関係、仕事などの各項目に何十個も投稿のストックがあるので、投稿自体は全然楽ですよ。 

 

水野:その投稿を見ていると「どんどん動画編集者になりたくなる」というわけですね。 

 

青笹:そうです。実は、YouTubeも考え方はまったく同じです。ビジネスで集客していくのって実はシンプルで、「買いたくなる」というストーリーに従って、あとは文言を当てはめていくだけです。事業以外の投稿はしない。1テーマで横展開、深堀していくことが原則です。 

 

水野:たしかにそうですね。ちなみに本の出版や、令和の虎に出演していることでの集客効果は感じますか? 

 

青笹:実は「集客」という意味ではそれほど影響がないんです。ただ、出版すると箔が付きますし、銀行取引や不動産契約でスムーズに事が進むメリットは感じています。 

 

 なので、まず経営者は、他の媒体に力を入れるのではなくYouTubeに集中する。そのほうが結果的にメリットは大きいと思います。 

 

 私自身、経営者でもありますが、ビジネスYouTuberでもあるし、インフルエンサーでもあるため、不祥事やトラブルを起こした場合、余計に炎上する危険は増えます。しかし、起きてもいないことばかりを考えて「やらない」のでは、いつまでたっても現状は変わりません。まず軽い気持ちでやってみる。それくらいでいいのではないでしょうか。 

 

 

 
 

IMAGE