( 248419 )  2025/01/12 19:11:08  
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NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」が始まり、初回視聴率が12.6%で、昨年の記録を下回る結果になった。

物語は18世紀後半の江戸を舞台にしており、時代背景も教科書に載らない地味な部分も描かれている。

主演は横浜流星と小芝風花で、大物俳優ではなく若手俳優が起用されたことも話題になっている。

視聴者たちは物語の過激さや、キャストの小粒感などから、視聴率の低さにつながったのではないかと分析されている。

(要約)

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横浜流星 

 

 1月5日にスタートした今年のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の初回視聴率は12・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯:以下同)。昨年の「光る君へ」の初回12・7%を下回る歴代ワースト記録となった。べらぼうな数字は一体なぜ?  

 

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 ドラマはいきなり江戸三大大火の一つ、明和の大火(1772年)の描写から始まった。目黒での放火に始まり、江戸城下を焼き尽くして吉原炎上に至った大火事だ。民放プロデューサーは言う。 

 

「セットとVFXを組み合わせた映像は見事でした。火災から逃れるためお歯黒ドブに投げ入れられたお稲荷さんの化身がナレーションを務める綾瀬はるか(39)で、その後、復興した吉原に着物姿で登場。この時点でドラマ『JIN―仁―』(TBS)を思い出した人もいるのではないでしょうか。どちらも脚本は森下佳子さんです」 

 

「JIN―仁―」は、現代の医師(大沢たかお)が幕末の江戸にタイムスリップし、吉原花魁の中谷美紀をはじめとする市井の人々を救うドラマだ。綾瀬は助手として大沢を手伝ううちに惹かれていく。また、森下作品は「義母と娘のブルース」(TBS)など綾瀬を主演に起用することが多いことでも知られる。 

 

「今回の綾瀬はスマホのMAP画面で色里・吉原を解説し、その中をスキップしつつ回る後ろ姿には尻尾がある。男を騙すのに狐や狸のような尾はいらないから“尾要らん(花魁)”といった一説がある中、吉原を尾っぽを出して巡るという斬新な演出は興味深いものがありました」 

 

 そして登場するのが、主演の横浜流星(28)とヒロインの花魁・小芝風花(27)だ。 

 

「大沢たかおでも中谷美紀でもなく横浜と小芝。2人とも当代一の人気者ですが、大河ドラマにはちょっと早すぎるように思いました。近年、大河の主役を演じてきた堺雅人(真田丸)や鈴木亮平(西郷どん)、長谷川博己(麒麟がくる)、小栗旬(鎌倉殿の13人)、松本潤(どうする家康)……らはすでに知られた決定的な代表作がありましたからね。横浜は大河初出演ですし、冒頭から大河『八重の桜』に主演した綾瀬が顔出しで登場しただけに、小芝の小粒感も余計にそう思われました」 

 

 大きな戦(いくさ)がなかった18世紀後半を舞台としているのは大河史上初という。 

 

「かつて賄賂政治と教科書で習った老中・田沼意次の時代です。戦国時代や幕末など戦があった時代じゃないと大河は数字が稼げないといわれましたが、昨年の『光る君へ』も戦のない平安時代を描いて史上ワースト視聴率でスタート。しかし、NHKプラスでの視聴数なども合わせると、結果的にはヒットしました」 

 

 今回も異例のヒットとなるのだろうか。 

 

「戦こそなかったとはいえ『光る君へ』が描いたのは紫式部と藤原道長といった華のある時代で、吉高由里子の演技力と感じの良さ、平安絵巻の美しい画面構成もあって、NHKプラスでは歴代最高の配信数を記録しました。また、これまで大河ドラマでヒットしたのは、いずれも歴史の教科書の王道を行く人物や物語でした。それに比べると田沼意次の時代は地味ですし、主役の蔦屋重三郎は文化的には重要人物かもしれませんが、教科書の隅っこ感が甚だしい」 

 

 それが大河史上ワーストのスタートとなった理由だろうか。だが、初回は話題性には事欠かなかった。 

 

 

「度肝を抜かれたのは番組中盤、愛希れいか(33)演じる情念河岸の女郎・朝顔が亡くなり、投げ込み寺で彼女と折り重なるように衣類を剥ぎ取られてうつ伏せになった4つの遺体でした。元宝塚月組トップスターである愛希の姿にも驚きましたが、彼女と共に並んでいたのは現役セクシー女優の吉高寧々(29)、与田りん(21)、藤かんな(35)ですから、ネット上はオープニングのスタッフロールの時点でザワついたそうです」 

 

 ほかにも、後の“鬼平”こと若き日の長谷川平蔵(中村隼人=31)が引手茶屋で「やらせろ」「やらせない」なんて押し問答するシーンもあった。 

 

「嫌悪感を持った視聴者も少なくないでしょう。投げ込み寺のシーンも『女性視聴者にやさしい作りになっていない』と感じた人もいたはずです。メインキャストの小粒感と相まって、べらぼうな視聴率を記録したのだと思います」 

 

 もっとも、吉原に生まれた蔦屋重三郎を描くのに吉原を出さないわけにはいかない。ちなみに、亡くなった朝顔が働いていた吉原最下層の女郎屋があったのは西側の情念河岸で、東側には羅生門河岸というものもあり、客を蹴転がしてでも引き入れることから“けころ”と呼ばれた。この壮絶な世界を描いた落語が「お直し」で、昭和の名人・古今亭志ん生は1956年にこの噺で文部大臣賞(現在の芸術祭賞)を受賞した。当時、志ん生は「郭の噺で賞をいただくとは大臣さんも粋ですな」と語っている。 

 

「粋なドラマにしてもらいたいところですが、吉原の現実を描くにはそうもいかない。大河の全話平均のワースト視聴率は1964年の東京五輪を描いた2019年放送の『いだてん~東京オリムピック噺~』の8・2%でしたが、それを下回る可能性もあります」 

 

 そういえば「いだてん」のナレーションは志ん生(ビートたけし&森山未來)だった。 

 

「タイトルの語感も似てますね。ともあれ『べらぼう』のほうは第2話以降もプラス材料が見つけにくい。時代背景も没入しにくく、共感も得られそうもない。文字通りべらぼうな作品になる恐れがあります」 

 

 ちなみに「べらぼう」の語源は、一説には穀物を潰す“ヘラ棒”が訛ったものだとか。穀潰しにならぬことを祈る。 

 

デイリー新潮編集部 

 

新潮社 

 

 

 
 

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