( 249061 ) 2025/01/14 04:28:53 0 00 2004年1月1日、中国・上海の空の玄関口である上海浦東国際空港と市街地をつなぐ「上海トランスラピッド」が開業しました。
世界でもめずらしい超高速磁気浮上式リニア(マグレブ)である上海トランスラピッドは、431km/hという最高速によって約30kmの距離をわずか7分あまりで結ぶことが大きな話題となりました。
開業から21年を経たいま、そんな上海トランスラピッドを体験してみました。
上海浦東国際空港と市街地をつなぐリニアモーターカーが「上海トランスラピッド」だ
一連の入国手続きを終えて到着ターミナルに降り立つと、「磁浮(Maglev)」と書かれた案内板がすぐ目に飛び込んできます。
案内板が指し示す方向を目指してしばらく歩くと、上海トランスラピッドのチケット売り場へと到着します。ちなみに、その反対側には地下鉄のチケット売り場と乗り場があるので間違えないように注意が必要です。
上海トランスラピッドには上海浦東国際空港の「浦東1号2号航站楼駅」と「龍陽路駅」の2つしかないため、チケットの購入方法は比較的シンプルです。
基本料金は片道50元(約1000円)となっていますが、当日の航空券を窓口で提示すると40元(約800円)で購入可能です。そのほか、往復割引やVIPシートなども用意されています。
チケットの購入には現金やクレジットカードも利用できますが、上海ではほとんどの場所で「Alipay(支付宝)」や「WeChat Pay(微信支付)」によるQRコード決済が可能のため、事前にアプリをダウンロードしておき、クレジットカードの登録を済ませておくと便利です。
なお、有人の窓口も自動券売機も中国語と英語のみに対応しており、日本語には対応していません。
チケット売り場のすぐ横にあるゲートで簡単な持ち物検査を済ませると、改札があります。
上海トランスラピッドのチケットは年季の入ったICカードとなっており、それを改札にタッチすることで通過することが可能です。
チケットは年季の入ったICカード
そこからエスカレーターを降りると、いよいよ上海トランスラピッドへと乗車します。
シートは原則として自由席となっていますが、車両によって配列がやや異なります。
長時間の乗車を想定していないためか、日本の新幹線などと比べるとシートはかなり簡素です。
上海トランスラピッドはおよそ20分間隔での運行となっていますが、車両に乗り込むことができるのは発車の直前であるため、シートに座るとほどなくして列車が動き出します。
いわゆる「リニアモーターカー」である上海トランスラピッドですが、乗車した際の感覚は一般的な列車とあまり変わりません。
ただ、車内に掲示された速度計の数字がみるみる間に大きくなっていく点は、鉄道オタクでなくともワクワクしてしまうポイントかもしれません。
しかし、その感動もつかの間、文字通りあっという間に龍陽路駅へと到着しました。
過去に何度か上海を訪れている筆者ですが、上海トランスラピッドに乗るのは今回がはじめてでした。
「上海トランスラピッド」の車内。日本の新幹線などと比べるとシートはかなり簡素だ
結論から言えば、大きくわけて2つの理由から、筆者が今後、上海トランスラピッドを積極的に利用することはなさそうです。
ひとつは、到着駅である龍陽路駅が上海の中心部や人気の観光地からやや離れているという点です。
たとえば、上海のもっとも有名な観光地である外灘(バンド)エリアやビジネスの中心地である陸家嘴(りくかし)エリアへは、龍陽路駅からさらに20~30分ほど地下鉄に乗る必要があります。また、上海ディズニーランドへのアクセスも微妙です。
もうひとつは、上海トランスラピッド以外の交通手段が充実しているという点です。
筆者の場合、中国での移動は基本的にタクシーを利用します。
中国では移動のコストが日本と比べてかなり割安であり、中心部まで約30kmの道のりをタクシーで移動したとしても150元(約3000円)程度です。
最近では配車アプリによってすぐに呼び出すことができるうえ、アプリ上で事前決済もできるため料金が想像以上に跳ね上がるということもありません。
また、よりコストパフォーマンスを重視するのであれば、地下鉄を利用するという方法もあります。
乗り換えの手間などもありますが、中心部までわずか10元(約200円)程度でアクセスできるのは地下鉄の大きなメリットです。
いずれの移動手段を選んだとしても、中心部までの所要時間は大きく変わりません。
つまり、「多少費用がかかっても楽に移動したい」というユーザーにはタクシー、「できるかぎりコストを抑えたい」というユーザーには地下鉄という選択肢があるなかで、アクセス面でもコスト面でも微妙な上海トランスラピッドを選ぶ必然性がないというのが筆者の率直な感想です。
また、かつては431km/hもの最高速度を誇っていた上海トランスラピッドですが、近年では最高300km/hへと制限されていることから、「世界で最も速い鉄道に乗りたい」と思うユーザーのモチベーションを満たすことも難しくなりつつあります。
上海トランスラピッドの車内。近年では最高300km/hへと制限されている
強いて言えば、上海最大級の国際展示場である「上海新国際博覧中心」は龍陽路駅が最寄りとなっているため、そこを目的地とする場合には上海トランスラピッドを利用するメリットはありそうです。
ただ、総合的に見るとやはりそのメリットは感じにくく、かつて話題を呼んだ上海トランスラピッドは現在では過去の遺物となりつつあるのが実情のようです。
※ ※ ※
上海トランスラピッドには、龍陽路駅から上海中心部を経て約180km離れた杭州まで延伸するという計画がありました。
実現すれば利便性が大きく向上することは確実ですが、2025年1月現在、具体的な進捗はありません。
一方、中国の各都市を新たな超高速リニアで結ぶという構想があるとされており、そこに上海トランスラピッドのノウハウが生かされる可能性は大いにありそうです。
Peacock Blue K.K.
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