( 249076 )  2025/01/14 04:45:38  
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ハンマー殴打事件があった法政大学多摩キャンパス付近に停車する警察車両 

 

 1月10日、東京都町田市の法政大学多摩キャンパス内で、女子学生が学生8人をハンマーで殴り負傷させたとして逮捕された。現場は100名のほどが授業を受けていた教室内だった。女子学生はは「いじめを受け、我慢できなかった」などと供述していると報じられている。 

 

 大学生にもなっていじめがあるのか、と感じる人もいるかもしれない。ところが、この事件に限らず、いじめ問題や対人トラブルで悩みを抱える学生は少なくないのが現実だ。Z世代の学生たちのリアルな人間関係の悩みを探った。 

 

 都内の私立大学で学生相談に対応しているカウンセラーの女性・A氏(50代)は、昨今、多く寄せられる相談内容についてこう語る。 

 

「新入生への啓発活動の効果もあってか、ここ数年、相談室に来る学生の数は増加傾向にあります。とくにコロナ禍以降は、学費が払えない、アルバイトができなくなったという経済的な状況に関する相談に加えて、SNS上の人間関係トラブルの相談が目立つようになりました。 

 

 私が勤務している大学では、現在はほぼすべての授業が対面に戻りましたが、2022年くらいまではオンライン授業を継続していました。そのため、大学に入学したものの友人ができない、人間関係がうまく構築できないという相談や、LINEグループでうまく立ち回れず、孤立感を感じているという相談もありました。 

 

 たとえば、『グループLINEで発言をしても、自分だけが無視されている気がする』『LINEグループを抜けたいが、抜けると大学の課題や試験で友人協力が得られなくなる、どうしたらよいか』といった相談は印象に残っています。大学生になると、ある程度は“大人”になるというイメージがありますが、実際には中学生や高校生と同じ類の悩みを抱えている学生が少なくありません」(Aさん) 

 

 都内の別の私立大学で学生相談に対応するスタッフの男性・Bさん(40代)も、経済的支援を求める相談や就職活動などの進路相談に加えて、対人関係に関する課題を抱えている学生が目立つようになったと語る。 

 

「今回の法政大学のニュースを見た瞬間、『他人事ではない』と身が引き締まる思いでした。というのも、うちの大学でも学生同士の対人関係の悩みの相談が後を絶たないからです。たとえば、3年生になりゼミの所属が決定した際には、『ゼミが決まったが嫌いな子がいたので他のゼミに移りたい』、『あの子と同じゼミが嫌で、ゼミの日に不登校になってしまうので単位が心配だ』といった悩みが寄せられたりします。 

 

 このような対人トラブルは、ゼミの指導教員に相談してもなかなか解決できないため、相談室に来るのでしょう。あくまでも私の印象論ですが、最近では人間関係のトラブルを自分で解決しようとせず、学務課や学生課といった事務室や相談窓口に来て、第三者に解決してもらおうとする学生が増えた気がします。『退職代行サービス』のように、友人や知人との直接の軋轢を避けたいと考えるのかもしれません」(Bさん) 

 

 

 一方で、大学に通う学生たちは今回のニュースをどのように受け止めているのか。都内の私立大学法学部に通う女性・Cさん(20歳)は、このように語る。 

 

「私の友人にも対人関係で色々な悩みを抱えている学生はたくさんいるので、他人事ではないなと感じますね。同じサークルの男子学生は、同級生彼女からのデートDVに悩んでいると聞かされました。SNSで常に位置情報を監視されたり、彼女以外の女友達のLINEアカウントをすべて削除するように強要されたりしていて、八方塞がりだと悩んでいました」(Cさん) 

 

 Cさんと同じ大学の経済学部に通う男性・Dさん(21歳)も、悩みを抱える友人は少なくないと話す。 

 

「サークル内でのいじめの問題はよく耳にします。目の前で行われるような、明からさまな行為ではなくて、『その子のSNSにだけ反応しない』『(Instagramの)ストーリーの投稿を全部スルーする』『本人にだけわかるように、X(旧Twitter)に悪口やいじり投稿をする』とか。本人だけが察するような、小さないじめが横行していると思います。 

 

 これ以外だと、最近ではいきなり投資詐欺系のLINEグループに追加されたり、『簡単に稼げます』系のインスタアカウントからマルチ商法に首をつっこんでしまったりと、そういうSNS関連のトラブルも耳にしますね。親にも友達にも相談できない悩みを抱えている学生が多いと思うので、大学のなかで相談できる場所や、助けてくれる専門家がいるのはありがたいことだと思います」(Dさん) 

 

 SNSが普及して人間関係がさらに複雑になる現在では、大学生のあいだでも対人関係の悩みやトラブルが尽きない。次の加害者と被害者を生まないためにも、先手を打った対策を講じる必要があるだろう。 

 

 

 
 

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