( 249851 )  2025/01/15 16:47:04  
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「変わらぬ会社の体質に絶望して去っていく社員が後を絶ちません」 

 

 こう嘆くのは、猫用おやつの「CIAOちゅ~る」で知られる缶詰製造大手「いなば食品」の現役社員のX氏だ。 

 

◆◆◆ 

 

人間は喜んでいない 

 

 2024年度の新入社員の大量入社拒否を皮切りに、小誌はいなば食品の稲葉敦央社長(70)と妻の優子会長(55)による著しい会社の私物化を報じてきた。 

 

 いまや社内でも両者の責任を問う声があがっている。 

 

「24年春の役員会では、とある役員が『会長が辞めないなら役員一同辞任します』と迫ったのですが社長が首を縦に振らず、会長解任は雲散霧消しました。会社の実質的なナンバー2で経営面を掌握していた常務は愛想を尽かして24年9月末で会社を去っています」(同社関係者) 

 

 なぜ敦央社長は優子会長を切れないのか。 

 

「社長には後継者にする予定の息子がいるのですが、『俺は息子を人質に取られている。だから会長の解任はできない』と言うのです」(X氏) 

 

 人質とは不穏な響きだがどういうことか。前出の関係者が引き取る。 

 

「夫婦の間で揉め事があると、会長は子供を引き合いに出して社長を脅迫するそうです。息子を溺愛している社長はこの脅しに屈してしまい、家庭の方針はもちろん、会社の在り方に関しても絶対に優子会長の機嫌を損ねることはしません」 

 

 優子会長の権勢は増すばかり。24年9月には子会社の「焼津水産化学工業」の取締役会長に就任。早速混乱を起こしているという。 

 

「会社のロゴを変えろだとか、役職員の給料を全員分教えろだとか、次々と思い付きを口にしては従業員を困らせています」(焼津水産関係者) 

 

 そんな傍若無人の女帝にも意のままにならぬものがある。 

 

「文春をはじめ自分についての報道は気にしていて、弁護士に『私の写真を消せないか』などと相談している」(同前) 

 

 24年4月24日に配信された〈「世界の猫を喜ばす」会社は、なぜ日本中の嫌われ者となったのか…いなば食品の炎上が止まらない根本原因〉(プレジデントオンライン)と題する記事。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授が寄稿したいなば食品の炎上の背景を分析したものだ。配信から約5カ月後の9月、この記事を読んだ優子会長が激怒。部下にこう指示を出した。 

 

 

「なんでこの記事を野放しにしているの。今から大学に電話して、記事をすぐに削除してもらえ」 

 

 意を汲んだ部下は神戸学院大学に連絡を入れたという。女帝の虎の尾を踏んだ鈴木准教授に聞くと、 

 

「確かに大学には連絡があり、先方の社長と弁護士の方が直接大学にお見えになった。私は不在で大学の事務方が対応したのですが、記事を取り消せとおっしゃるようなこともなく、いったいなんのご用件でいらしたのか分からず困惑していました」 

 

 いなば食品に神戸学院大学へ接触した意図を問うと、「鈴木准教授様にご不快をおかけしたと判断いたしましたので、同学院様に訪問の上、謝罪を実施させていただきました」とやや支離滅裂な回答があった。一方、優子会長の解任騒動について聞くと、「役員会」で会長の解任が議論されたことはないとした上で、会長をこう称えた。 

 

「ほとんどの一般社員は既に改革者としての会長の姿を強く認識しています。その先導者の解任など、会社としてありえません」 

 

 キャッという社員たちの声が聞こえてきそうだ。 

 

「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年1月2日・9日号 

 

 

 
 

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