( 250381 ) 2025/01/16 17:31:46 0 00 電車内の痴漢イメージ(画像:写真AC)
受験シーズンが近づくと、駅や電車内で痴漢被害が増えることが懸念されている。その中でも特に悪質なのは、「テストに遅刻できない」という受験生の心理を利用し、追い詰められた状況で痴漢行為を行う者や、それを煽るような投稿をSNSに書き込む者たちだ。
これらの行為は、単なる
・悪ふざけ ・軽い犯罪
ではない。それは被害者の尊厳を傷つけ、社会全体のモラルを損なう、極めて深刻な問題である。JR東日本は1月14日にプレスリリースを発表し、
「お客さまにより安心して鉄道をご利用いただけるよう、1月15日(水)~1月19日(日)の入学試験期間において痴漢対策を強化します」 「期間中は、東京都、警視庁と連携し、警戒を強化することで痴漢被害を未然に防止するとともに、痴漢被害に遭われたお客さまが、駅係員等にすぐにお声がけできるよう呼びかけなどを行います」
とし、
・車内や駅構内での放送 ・ポスター掲出 ・デジタルサイネージへの掲示 ・公式SNSによる発信(JR東日本公式Xアカウント) ・警視庁と連携した痴漢撲滅イベントの実施
といった取り組みを明らかにした。
本稿では、こうした行為がなぜ「外道(※)」と呼ぶに相応しいのか、その理由を掘り下げる。
※道徳や正義から外れた行動や非人間的な行動。倫理観や常識に反する行動をする人や、その行動を表す言葉として使われる。
女性専用車両(画像:写真AC)
受験生にとって試験当日は人生の重要な一日であり、電車の遅延やトラブルが原因で試験に間に合わない恐れは、多くの人にとって恐怖心を抱かせる。
そのような状況を逆手に取る行為は、単なる犯罪を超えて、深刻な非道さを持つ。普段なら声を上げることができる人でも、
「試験に遅れたくない」
という思いから、痴漢行為を黙認してしまう可能性が高い。このような意図的な状況作りは、人間性の欠如を示すものといえる。
さらに、SNS上での煽り投稿が状況を悪化させる。NHKでも放送されたように
「受験の日は痴漢日和」
といった書き込みは、行為を助長し、受験生に対する社会的な圧力を強める。これによって、被害者は一層孤立し、声を上げるハードルが高まる。
痴漢行為が特定の環境で起こりやすいのは、犯罪者がその場の特性を巧みに利用しているためだ。満員電車での痴漢が一般的だが、受験シーズンに特化した行為は、さらに環境依存が強い。これに対処するためには、鉄道会社や警察だけでなく、社会全体が環境を変えるための努力を重ねる必要がある。例えば、
・女性専用車両の利用時間を延長したりする ・受験シーズンに特化した防犯カメラの増設を行ったりする
ことで、犯罪の抑制が期待できる。
また、被害者が声を上げやすい環境を整えるために、車内放送やポスターで「被害を受けたらすぐに声を上げてください」というメッセージを発信するなどの施策が必要だ。
電車内の防犯カメラ(画像:写真AC)
痴漢行為の背景には、加害者の病的な性質が少なからず関係していることがある。強迫的な性的衝動や、自分の行動をコントロールできない心理状態が原因であることも多い。しかし、これを理由に犯罪を許すことはできない。むしろ、病的な側面がある場合は、早期発見と治療がより一層求められる。一方で、法的な対応や
「罰則の強化」
だけでは、根本的な解決にはつながらない。社会全体が痴漢行為を「許されない行為」として明確に認識し、その抑止に向けた文化を形成する必要がある。SNSでの煽り投稿を見かけた際には、単に通報するだけでなく、教育的な視点からその問題点を指摘することも有効だ。
受験シーズンの痴漢行為を防ぐためには、被害者を守るだけでなく、社会全体の意識改革が欠かせない。特に重要なのは、「被害者が声を上げやすい環境を作る」ことだ。これには
●周囲のサポート意識を向上させること 満員電車内で痴漢が発生した際、多くの人が「見て見ぬふり」をしてしまう現状を変えるため、痴漢行為を目撃した場合に積極的に介入する意識を高めることが重要だ。
●教育の充実 学校や職場において、痴漢行為がもたらす深刻な被害を伝える教育プログラムの導入が必要だ。この取り組みにより、将来的な加害者や傍観者を減らす効果が期待できる。
●テクノロジーの活用 痴漢行為の防止には、AIを活用した防犯カメラやスマートフォンアプリを利用した通報システムなど、新しい技術の導入が効果的だ。
といった取り組みが必要となる。
痴漢撃退アプリのイメージ(画像:写真AC)
受験シーズンの痴漢行為や、それを助長するSNS上の投稿は、社会のモラルの欠如を象徴する問題である。
この問題を解決するためには、個々の意識改革だけでなく、環境整備や制度改革が必要だ。そして何よりも、
「声を上げることが恥ずかしい」
という風潮を打破し、被害者が安心して助けを求められる社会を作ることが重要だ。
痴漢行為には病的な側面があるが、それを理由に犯罪を許すことはできない。むしろ、そうした行為が起こらない環境を作るために、社会全体が一丸となって取り組むべきだ。
「受験」という特別な日における被害をゼロにすることは、受験生ひとりひとりの未来を守ることに直結する。社会全体がその責任を共有するときが来ているのだ。この問題は加害者となりがちな男性達こそが真剣に考えなければいけない問題である。
こうした卑劣な行為は「外道」と呼ぶに相応しい。
伊綾英生(ライター)
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