( 250851 ) 2025/01/17 16:09:11 0 00 Photo by gettyimages
前回の総選挙で、日本人は自民党に「ある程度のお仕置き」をした。しかし結局、政権交代には至らなかった。
なぜ、政治とカネであれほどの不信を生んだ自民党が、政権の座から転がり落ちることがなかったのか。
その理由を、もっともリアルに、もっともロジカルに、もっともドラスティックに解説するのが、維新の創始者・橋下徹氏だ。
そしていま、国民民主党の玉木代表が採っている戦略は、まさに橋下氏が『政権変容論』(講談社刊)で提言したものだ。稀代の戦略家・橋下徹の「政界を見通す目」はいまだに衰えていない。
『政権変容論』連載第51回
※この記事は選挙公示前(2024年7月19日)に発売された本からの転載です。
『「ポピュリズム上等」…「トランプは愚かだ」と決めつける「知ったかぶり」エリート層を橋下徹が大批判!』より続く
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—本来、自分たちが理想と考える政策の王道ではないが、国民から望まれているものは、柔軟に取り入れて我がものとする—。そのあたりの行動力が、自民党にはある。野党が学ぶべき点かもしれません。
橋下:野党は「多様性」というキーワードを、いま一度見つめ直したほうがいいでしょう。彼ら自身よく「多様性のある社会を」「インクルーシブな社会を」と言いますが、その言葉の意味をどれだけ理解して実践しているのか。
これまでどれほど多くの野党が誕生しては消え、分裂してはくっつき、再び分裂し、新党が結成されてきたことか。結党以来、脈々と続いてきた自民党との大きな違いです。
先に僕は新党乱立の状態を、多様な価値観を認める日本らしさと肯定的に捉えましたが、「多様な価値観」は口で唱えるだけでは意味がありません。立場が異なる人々が共存しなければ、それは口先だけの「多様性」になってしまう。
今も世の中には、たくさんの社会問題が未解決なまま棚上げされています。たとえばLGBTQなどのジェンダー問題もあるし、経済格差、教育格差の問題もある。夫婦別姓の問題も。いずれも旧弊な頭の固い自民党だけでは、なかなか前進しない問題ばかりです。
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でもここで自民党がすごいのは、こうした課題において真逆な意見を持つ人々をも党内に包括し、存続し続けていることです。
原発問題にしても、自民党の中には原発推進派もいれば、反対派もいます。一般ドライバーが有償で人を乗せる「ライドシェア」も、自民党は賛成派と反対派に分かれています。各グループで勉強会を行い、侃々諤々の議論をしています。
自民党内で、真逆に対立する意見が併存していることはすごいし、もっとすごいのは、そうした多様な意見があっても、いざ党全体として最終決定が出れば、反対派もそろってその結論に従うところ。とにかく最後はまとまる。
これって民主主義の大原則だと思うんです。どんな意見が出てもいい。自分の意見と同様に他者の意見も聞く。そして最後、組織として決まったことには、従う。
ところが一方の野党はどうか。新党乱立という現状を「多様性」の表れとすれば聞こえはいいけれど、実際は「政策の不一致」が少しでも見られれば、すぐにケンカ別れして新しい党をつくってしまう。その結果、小さな新党が次々と生まれては、それぞれの主義主張を声高に唱えるだけで、一致団結して力を生み出すことができない。
これではもったいないし、日本の野党の一番の弱みですね。
「ブレない意見」も大事だけど、他者の意見を認めなくなってしまったら、それは「多様性」とは真逆になってしまう。民主党政権がわずか3年で瓦解したのも、そうした異なる意見を認めない狭量な姿勢が、関係していたと思います。
『橋下徹「だから永遠に支持率一桁から抜け出せない」…いつまでも自民党に負け続け野党に足りない“ある資質”』へ続く。
橋下 徹(元大阪府知事・元大阪市長)
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