( 250964 )  2025/01/17 18:28:04  
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JR西日本と南海電鉄が進めるなにわ筋線に接続する新大阪連絡線となにわ筋連絡線の建設計画が進行中だ。

これにより大阪の交通網は大きく変わり便利になるが、阪急電鉄の参加には課題も多い。

阪急電鉄は新大阪駅への乗り入れを狙っているが、軌間の違いから専用車両の必要性が生じる。

そして、阪急電鉄の新路線開業に向けたプランは未定であり、具体的な建設計画や費用も不明確である。

なにわ筋連絡線・新大阪連絡線が実現すれば便益が大きいが、まだまだ不透明な部分が多く、今後の展開が注目される。

(要約)

( 250966 )  2025/01/17 18:28:04  
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photo by iStock 

 

JR西日本と南海電鉄が乗り入れるなにわ筋線が建設中だが、阪急電鉄はこれに接続する、なにわ筋連絡線と新大阪連絡線の建設計画を明らかにしている。この計画が実現すれば、大阪の交通事情は大きく変わり、利便性が大幅に向上することは間違いないが、この計画には色々と課題も多い。この計画の実現性について鐵坊主・著『鉄道路線に翻弄される地域社会―「あの計画」はどうなったのか?―』では考察している。本書より一部を抜粋してお届けする。 

 

なにわ筋線は2023年に開業したJR西日本の大阪駅地下ホームと、JR難波駅、南海電鉄新今宮駅を接続する、大阪を南北に縦断する新線であり、2031年度の開業が予定されている。 

 

なにわ筋線へはJR西日本、南海電鉄の関西空港や和歌山方面などからの列車の乗り入れが想定されており、関西空港へのアクセス、大阪の鉄道ネットワーク拡張、交通渋滞の緩和や利便性の向上が期待される。 

 

阪急電鉄の計画とは、なにわ筋線開業に合わせ新大阪駅と大阪駅地下ホームを十三(じゅうそう)駅経由で結ぶ新しい連絡線であり、大阪駅から十三駅をなにわ筋連絡線、十三駅から新大阪駅を新大阪連絡線としている。 

 

阪急電鉄は以前より新大阪駅そばには用地も取得し、乗り入れ計画を温めてきたが、阪急電鉄単独では事業費や需要予測から実現することができず、現在に至っている。しかし、なにわ筋線に接続することで、大阪南部、和歌山、関西空港へのアクセスが可能となり、より大きな効果が得られるとして、新大阪駅への乗り入れ構想の実現に向けて舵をきったというところだ。 

 

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阪急電鉄にとっては悲願ともいうべき、新大阪駅への乗り入れだが、その実現には課題も多い。その一つが、線路規格の違いである。阪急電鉄は標準軌(1435mm)を使用しているが、 JR西日本と南海電鉄は狭軌(1067mm)であり、なにわ筋線もこの規格で建設されている。そのため、なにわ筋連絡線・新大阪連絡線は阪急電鉄の他の路線から乗り入れできない、完全に独立した路線となり、既存の車両を運用することができないため、専用車両が必要となる。 

 

この問題に対し、阪急電鉄では、南海電鉄と同じ規格の車両を製造し、車両の保守管理は南海電鉄に依頼することで解決するとしている。 

 

 

阪急電鉄の路線網は大阪梅田を起点に、京都河原町、神戸三宮、宝塚と、大阪北部から京阪神地区をカバーしている。そのため、難波、天王寺、堺といった大阪南部地区とは縁が薄く、なにわ筋線の乗り入れによって、路線ネットワークの拡大を図ろうとしている。 

 

そして、何と言っても大きいのが関西空港へのアクセスである。インバウンドの多くも入国する関西空港から京都、神戸という人気の観光スポットを擁する阪急沿線へのアクセス改善は、間違いなく大きなメリットとなる。 

 

現在、阪急沿線から関西空港へアクセスする場合、阪急梅田駅で下車して、大阪駅(名前は異なるが、同じ場所である)で特急はるかや関空快速への乗り換えとなるが、多くの乗客が行き交う阪急梅田駅・大阪駅での乗り換えはあまりお勧めできるものではない。 

 

また、南海電鉄の天下茶屋駅を経由して、相互乗り入れを行う大阪メトロ堺筋線を介して阪急京都線へアクセスする方法もあるが、天下茶屋駅発の列車は途中の高槻市駅までの列車がほとんどであるため、京都方面へ行くには天下茶屋駅と高槻市駅での2回の乗り換えが必要と、これも便利なものとはいえない。なにわ筋連絡線・新大阪連絡線が開通すれば、乗り換えは阪急神戸線、京都線、宝塚線が分岐する十三駅での1回のみとなり、関西空港へのアクセスは飛躍的に向上するわけだ。 

 

この乗り入れは新大阪駅への路線を持たない南海電鉄と阪急電鉄の相互乗り入れと思われてきたが、阪急電鉄はJR西日本との相互乗り入れも想定している。 

 

大阪と和歌山の間で南海電鉄とJR阪和線は並行しているが、阪和線がやや山側を走っていることもあり、競合になっていない駅も多い。阪急電鉄は両社の路線に乗り入れることで、より広範囲な市場への参入が可能になるだろう。 

 

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前述の通り、十三駅は阪急京都線、神戸線、宝塚線が分岐するハブ駅であり、多くの乗客で賑わうが、その多くは乗り換え需要であり、乗降人員が阪急全体で6位という数値にも表れているように、さほど多くはない。 

 

駅周辺は大阪の下町風情があるが、土地の有効活用がされているとは言い難く、阪急阪神ホールディングスは地上39階建てのタワーマンションを中心に、図書館や教育施設、スーパーマーケットなど、大規模な再開発、十三駅の拠点化を進めている。 

 

なにわ筋連絡線・新大阪連絡線が開業すれば、十三駅と新大阪、関西空港という大阪の玄関口が結ばれ、十三駅は大阪の新たなハブとして、その存在価値が飛躍的に向上する。これが阪急電鉄が新線開業に前のめりな大きな理由の一つだろう。 

 

 

阪急なにわ筋連絡線・新大阪連絡線であれば、十三駅で多方面からの阪急電鉄の需要を取り込むことが可能だ。 

 

阪急電鉄とJR西日本は京都〜大阪〜神戸において競合しているものの、南海本線と阪和線のように、路線全体がぴったり隣り合って走っているわけではない。例えば、阪急京都線は、祇園地区に近い京都河原町をターミナルとするのに対し、JR京都線のターミナルは京都駅である。同じ京都でも、乗客が行き先に応じて使い分けをすることができるため、一定の棲み分けができている。 

 

また、今後の人口減少を見据え、各鉄道会社の考えは「競合」よりも「共存」へとシフトしている。必要な部分では協力し、共存を図るのが今後のトレンドであり、阪急電鉄とJR西日本、南海電鉄の相互乗り入れからも、そうした考えが垣間見られる。 

 

『鉄道路線に翻弄される地域社会ー「あの計画」はどうなったのか?ー』(ワニブックス刊) 

 

阪急電鉄の経営陣は地元メディアに対し、なにわ筋連絡線・新大阪連絡線を、2031年度になにわ筋線と同時開業させる方針を明らかにしている。 

 

しかし、なにわ筋連絡線・新大阪連絡線は建設に着手されていないどころか、建設費用の概算や具体的なルートについても明らかにされておらず、建設が始まっているなにわ筋線との同時開業はかなり難しい状況である。 

 

なにわ筋連絡線・新大阪連絡線が実現すれば、多様な選択肢が提供されることで、利用者にとってはより便利になることは間違いない。その計画には大いに期待したいが、その道筋を見極めるにはまだまだ時間がかかりそうだ。 

 

鐵坊主(鉄道解説系YouTuber) 

 

 

 
 

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