( 250984 )  2025/01/17 18:46:03  
00

イチロー氏が資格1年目で野球殿堂入りしたが、満票でなかったことに波紋が広がった。

彼の功績や人間性を巡って論争が巻き起こったが、広岡氏や他の専門家によると、殿堂入りの選出は主観的な要素も含まれるため、多様な意見があっても良いと述べられた。

イチロー氏自身は感謝の意を表明し、将来の米野球殿堂入りも期待されている。

野球殿堂入りの選考基準が曖昧な面もあるが、イチロー氏の偉大さは、満票での殿堂入りが逃したことで浮き彫りになったと言える。

(要約)

( 250986 )  2025/01/17 18:46:03  
00

イチロー氏が資格1年目で殿堂入りを果たしたが満票でなかったことに波紋(野球殿堂博物館のライブ映像より引用) 

 

野球殿堂博物館は16日、東京ドーム内の同所で2025年度の殿堂入りを発表し、プレーヤー表彰でオリックス、マリナーズなどで日米通算4367安打をマークしたイチロー氏(51)、通算1002試合登板、407セーブの日本記録を持つ元中日の岩瀬仁紀氏(50)、指導者での功績などが加味されるエキスパート表彰では、阪神で2軍監督を務め、現役時代に本塁打王を3度獲得するなどした掛布雅之氏(69)が選ばれた。また特別表彰では審判員の富澤宏哉氏(93)が入った。SNSなどで波紋を広げたのはイチロー氏が満票ではなかった問題。26人の記者が投票しなかった。1992年に殿堂入りしている巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗氏(92)が独自の見解を述べた。 

 

 イチロー氏の殿堂入りのゲストスピーカーを務めた王貞治氏が「イチロー君の場合、5年を待たなくても良かったんじゃないか」と「引退後5年」の殿堂入りの資格にジョークを交えて物言いをつけた。 

 野球史に燦然と輝く日米通算4367安打を放ち、9年間プレーしたオリックスでは、史上初のシーズン200安打超えの最多安打記録の210安打をマークして、7年連続で首位打者を獲得。マリナーズに移籍すると、いきなり首位打者&盗塁王で日本人初のMVPを受賞し、2004年にはメジャーのシーズン最多安打記録である262安打を記録した。 

 当然、史上初となる満票での殿堂入りが期待されたが、有効得票数349票のうち獲得したのは323票で得票率は92.6%。26人の記者がイチロー氏に投票しなかった。候補1年目の殿堂入りは史上7人目だが、得票率は97.3%でトップのヴィクトル・スタルヒン氏、三原脩氏、稲尾和久氏、若松勉氏、王貞治氏に次いで歴代6位だった。 

 通知式に出席したイチロー氏は「日本で9年、アメリカで19年、選手としてプロ野球選手生活を過ごしました。にもかかわらず日本の野球殿堂へ迎え入れていただいたことに大変感謝を申し上げます」と感謝の意を伝えた。 

 さらに「2019年の3月に東京ドーム、まさしくこの場所で、引退試合を終えてから5年間、あっという間でした。ファンの方々が作ってくれたあの瞬間を支えに引退後も野球に携わってきました。野球に対し、プロ野球に対し未練など後ろ向きな気持ちなくここまで過ごしてこられました」と続け、ユーモアを交えながら、列席者とのエピソードや、阪神・淡路大震災の記憶の伝承者となること、高校生など若い世代へのメッセージなど、素晴らしいスピーチを行い、最後に「いつかわからないが、動けなくなるまで野球に携わって力になりたい」と誓った。 

 だが、SNSでは満票での殿堂入りでなかったことが大炎上となった。 

「投票しなかった人がいたのは信じられない」「感情論で投票するな」「イチローでなければ誰が満票になるのか」など、投票しなかった26人の記者への批判の声が殺到した。 

 イチローは日本時間の22日に発表される米野球殿堂入りも確実視されており、こちらもヤンキースの守護神だったマリアノ・リベラ以来となる史上2人目の満票での殿堂入りが期待されている。 

 プレーヤー表彰の投票資格のあるのは、野球報道に関して15年以上の経験を持つ記者(約350人)で一人が候補者の中から7人まで列記できる。記名投票だが、誰が誰に入れたかは非公開。エキスパート表彰は、殿堂入り者にも投票権があるが、プレーヤーズ表彰は取材記者だけだ。 

 殿堂入りでイチロー氏の先輩にあたる広岡氏は、「もし私が投票権を持っていればイチローには入れない」と、自らの見解を述べた。 

 

 

「イチローに入れなかった記者の考えは理解できる。殿堂入りには決まった定義はない。それぞれの記者の価値観で判断するわけだから、多様な見方があっていいと思う。7人を列記しなかった記者もいるだろう。私もそうだ。殿堂入り者には、エキスパート表彰の投票権があり、6人を列記できるが、私は毎年一人しか書かない。殿堂入りとはそれだけ格調高きものでなければならないとの考えからだ。今回は掛布ではなく、私がヤクルトの監督時代にエースだった松岡弘に入れた。弱小のヤクルトで責任を負い苦労した。その中で2桁勝利を12度も記録し、通算190勝をした功績こそ殿堂入りにふさわしいというのが私の見解だからだ。イチローの殿堂入りを認めない記者がいてもおかしくない」 

 広岡氏が説明したように、野球殿堂入りの選出の定義としては、表彰委員会規則の総則に「日本野球の発展、振興、普及に多大な貢献を成した方々の功績を永久に讃える」とあり、第16条の「選考の要件」としてこう規定されている。 

(1)試合で表現した記録、技術が優れている者  

(2)所属チーム及び野球の発展に顕著な功績をあげた者  

(3)野球に対し誠実であり、スポーツマンシップを体現した者  

(4)ファンに野球の魅力を伝えた者  

 そして「なお、完全試合の投球、未曽有の長距離本塁打、単年度の大記録、実働が短期間での活躍等をもって、野球殿堂入りとして選考してはならない」とのただし書きがある。 

 時代が変わり、メジャー挑戦する選手が増え、日本だけではなく、日米の活躍を含めた功績で評価することになっているが、曖昧な基準ではある。 

 広岡氏は、こうも続けた。 

「イチローは今回全米でも殿堂入りする選手だ。相当の記録を持っている選手でさえ米では殿堂入りできない。それだけの素晴らしい実績を残した。ある意味、日本の殿堂よりもメジャーの殿堂は価値あるもの。そこで選ばれるのであれば、日本の殿堂に投票する必要はないという考えもあったのではないか。『日本野球の発展、振興、普及に多大な貢献を成した』という定義を『メジャーでの活躍は関係ない』と解釈した記者もいると思う。日本では7年連続首位打者を獲得しているが、プレーしたのは、9年でメジャーの19年より少ない。安打数も1278本に留まっているという点も加味されたのだろう」 

 

 

 イチロー氏のオリックスでの9年は決して「短期間の活躍」の範疇には入らない。阪神・淡路大震災の起きた1995年には「頑張ろう!神戸」を合言葉にオリックスのリーグ優勝に貢献。1996年には連覇にも貢献した。だが、広岡氏が指摘するようにメジャーでの19年の偉大な功績が、日本の殿堂入りに関して“反作用”した可能性もある。 

 また広岡氏は、「殿堂入り者には、人間性や品位、品格が求められる」との持論を展開させた。 

「イチローは何かとこだわりを持っている性格に見える。特別な事情があったのかは知らないが、通知式には出たが、会見には出なかったとも聞いた。そういう部分を含めて、イチローの人間性を毛嫌いした記者もいたのだろう」 

 それは「選考の要件」である「野球に対し誠実であり、スポーツマンシップを体現した者」に対する見解の相違なのかもしれない。 

 イチロー氏は、記者会見には出なかったが、表彰委員会の代表質問に答え、日米での活躍の原動力について「多くの人が常識だと思っていることを疑い、大事な決断は自らしてきました。第三者の常識ではなく感性にもとづき行動してきたことは大きな要因の一つだと思います」と返答している。 

 イチロー氏に投票しなかった26人の記者は、同じく「第三者の常識ではなく感性にもとづき行動」したのかもしれない。満票での殿堂入りを逃したことが話題になることこそ、そもそもイチロー氏の偉大さを証明している。 

 (文責・駒沢悟/スポーツライター) 

 

 

 
 

IMAGE