( 251421 )  2025/01/18 16:41:09  
00

セダン(画像:Pexels) 

 

 自動車市場において、かつてセダンは非常に人気があった。しかし、時間が経つにつれてその人気は減少し、今ではSUVやクロスオーバー車、軽自動車が主流となっている。それでも興味深い調査結果がある。2024年7月、車に関する最新情報を発信するウェブサイト『くるまはっく』を運営するアント(東京都渋谷区)が実施した「モテる男性の車」に関する調査によると、20代~30代の独身女性1005人を対象にしたアンケートで、「男性に乗ってほしい車のボディタイプ」としてセダンがSUV(38%)に次ぐ33.1%で2位にランクインしている。ミニバン(14.3%)も上回った。 

 

 この結果を受け、多くの人が抱く疑問は、 

 

「なぜ、現在の自動車市場でセダンが再び注目されているのか?」 

 

という点だ。 

 

セダン(画像:写真AC) 

 

 まず、前述の調査結果を6位まで示す。 

 

・1位:SUV(38.0%) 

・2位:セダン(33.1%) 

・3位:軽自動車(17.8%) 

・4位:ハイブリッド(17.5%) 

・5位:ミニバン(14.3%) 

・6位:ステーションワゴン(11.4%) 

 

 セダンとは、一般的に4ドアの車体を持ち、前席と後席が分かれている構造の乗用車を指す。セダンの特徴的なデザインは、車両のボディが一体化した形状で、 

 

・エンジン部分(フロント) 

・乗客スペース(キャビン) 

・荷物を収納するトランク 

 

が明確に分かれている点だ。この構造は、車両の外観に洗練された印象を与え、効率的な荷室空間を提供する。 

 

 セダンの長所は、その均整の取れたデザインと優れた走行性能にある。通常、低重心で設計されているため、高速道路や長距離走行での安定感が高く、乗り心地が良いとされる。さらに、セダンは一般的にエンジンの排気量が大きく、パワフルな走行が可能であるため、スポーティーな走行を楽しむドライバーにも人気がある。 

 

 また、セダンはその形状から、上級車や高級車のラインアップにも多く見られる。例えば、メルセデス・ベンツやBMW、アウディなどの高級ブランドは、セダンタイプの車両を中心にラインアップを展開しており、その洗練されたデザインや上質な走行性能が、セダンのステータス性を高めている。 

 

 セダンという名称が車体として記録されたのは1912年。名前の由来は、17世紀に作られた「セダン・チェア」と呼ばれる窓付きの一人用密閉箱にある。運搬人が担いで移動させるこの輿から、その名が自動車にも受け継がれた。自動車の黎明期には、セダンは上流階級やビジネスマンに愛される高級車種として確固たる地位を築いた。そのエレガントなデザインと快適性は時代を超えて評価され、長く人々に支持されてきた。 

 

 しかし、近年はSUVやクロスオーバー車、軽自動車が市場を席巻し、セダンのシェアは縮小傾向にある。それでも、安定感、快適性、そして上品さを重視するユーザーにとって、セダンの魅力は依然として健在だ。伝統と機能美を併せ持つセダンは、今も多くの車愛好家の注目を集め続けている。 

 

 

セダン(画像:写真AC) 

 

 セダンが20代~30代の女性に人気がある理由は、見た目や機能性だけでなく、心理的な要素や社会的な背景にも深く関わっている。この調査結果を掘り下げるために、いくつかの視点からその背景を探っていこう。 

 

 まず注目すべきは、セダンが持つ 

 

・成熟した 

・落ち着いた 

 

といったイメージだ。多くの20代~30代の独身女性が「モテる男性」の条件として求めるのは、成熟した印象や落ち着いた雰囲気を持つことだ。若い世代が好むのは、力強さや派手さよりも、安心感や安定感を感じさせるものだという傾向が強い。セダンはそのデザインから、シンプルでありながら上品さを漂わせ、成熟した男性を連想させる。このイメージが、若い女性の間で「モテる男性」の象徴として評価される理由のひとつだ。 

 

 また、セダンはSUVやミニバンと比べて、サイズが比較的小さく、都市部での駐車や取り回しがしやすい点も、若い女性にとって魅力的に映る要素だ。特に都市部に住む人々にとっては、セダンの方が扱いやすく、機能的なメリットが多いと感じるだろう。 

 

 セダンの人気が再び注目されている背景には、ライフスタイルの変化も大きな要因となっている。SUVやミニバンは、家族を持つことを視野に入れた車選びの象徴である一方で、セダンはより個人主義的な価値観に基づいた選択肢といえる。現在の若年層の中には、結婚や子どもを持つことに対して消極的な考えを持つ人が増えており、そのため家族向けの車であるSUVやミニバンよりも、セダンが好まれる傾向がある。 

 

 さらに、セダンはそのデザインや走行性能が優れており、ドライビングの楽しさを重視する層にも支持されている。若い女性が求めるのは、ただ単に移動手段としての車ではなく、心地よく快適な移動体験だ。セダンはそのバランスが絶妙であり、特に高速道路での安定感や長距離運転時の快適さが、若年層にとって魅力的な要素となっている。 

 

 

セダン(画像:写真AC) 

 

 しかし、セダンが再評価されている一方で、自動車市場全体ではセダンの品揃えが減少しているのも事実だ。近年、メーカー各社はSUVやクロスオーバー車を中心にラインアップを強化しており、セダンはその存在感を徐々に失いつつある。これは、SUVの市場拡大と消費者が求める車の用途が多様化したためだ。特に、家族向けの車としてSUVが支持を集め、オフロードやアウトドアといったアクティブなライフスタイルを反映した車としての位置づけが強化されてきた。 

 

 加えて、燃費の良さや環境への配慮を重視する層には、ハイブリッドや電気自動車(EV)が人気を集め、セダンが一部の消費者層に限定される傾向にある。特に、若年層においては、燃費や維持費の面でよりコストパフォーマンスに優れた車が求められるため、SUVや軽自動車が選ばれるケースが増えている。 

 

 それでも、セダンが未だに一定の人気を誇っているのは、そのデザイン性やドライビングの楽しさに対する評価が根強いためだ。市場において減少傾向にあるとはいえ、セダンを好む層は依然として存在し、その需要は少なくない。 

 

 セダンの人気を支えているもうひとつの要因は、社会的な背景だ。若年層においては、従来の車に対する価値観が変化しているものの、依然として「車=ステータスシンボル」という認識が強く残っている。特に、セダンは高級車ブランドと結びつきが強く、そのためセダンを選ぶこと自体がひとつの社会的なステータスを示す手段となっている。 

 

 若い女性にとって、セダンはその高級感や上品さが、魅力的な男性像を作り上げる要素となる。セダンに乗ることは、ただの移動手段以上に、「成熟した男性」「社会的に成功している男性」というイメージを作り上げる手助けをするのだ。この点において、セダンは単なる車としての機能を超えて、社会的な価値を持つアイテムとして捉えられている。 

 

セダン(画像:Pexels) 

 

 20代~30代の独身女性にとって、セダンはただの「移動手段」ではなく、成熟した男性や安定した社会的地位を象徴する存在としての役割を果たしている。そのため、セダンは依然として高い人気を保っている車種といえる。 

 

 しかし、現在の自動車市場ではセダンの選択肢が減少しており、消費者のニーズが変化していることが伺える。今後もセダンの人気が続くかどうかは、市場の動向次第といえるだろう。 

 

 それでも、セダンが持つ独特の魅力は、特に若年層の女性にとって変わらず大きな意味を持ち続けるだろう。 

 

作田秋介(フリーライター) 

 

 

 
 

IMAGE