( 251696 )  2025/01/19 04:56:58  
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会社説明会に集まったリクルートスーツに身を包んだ多くの学生ら=令和6年3月1日、横浜市西区(岩崎叶汰撮影) 

 

賃上げ原資に乏しい中小企業が大企業並みの初任給に引き上げるのは極めて困難だ。民間シンクタンク、産労総合研究所(東京都千代田区)の調査によると、2024年度入社の新卒社員の初任給は従業員数299人以下の中小企業で21万8118円(大卒平均)。前年度から3・1%増えたものの、30万円台が相次ぐ大企業の水準には到底及ばない。 

 

中小企業が初任給の大幅増に踏み込めないのは現社員の賃上げが思うように進んでいないからだ。コスト上昇分を価格に反映した割合を示す「価格転嫁率」は49・7%と「道半ば」で、賃上げ原資の確保に苦しむ中小企業はなお多い。 

 

日本商工会議所の小林健会頭は初任給の引き上げについて「中小企業にとってインパクトは非常に大きい」と指摘する。「初任給を引き上げてしまうと、今いる全社員の賃金も(それ相応に)引き上げないといけなくなる」からだ。将来を担う重要な人材であっても、経験が全くない新卒社員の給料を大企業並みに引き上げれば、先輩社員らの士気の低下を招きかねない。人手不足が深刻なことから若手人材を呼び込みたくても、賃金改善がままならない中では、初任給の大幅増に二の足を踏まざるを得ないというのが実態だ。 

 

大和総研の神田慶司シニアエコノミストは25年度の初任給ついて「中小企業も引き上げ率が前年度並みかそれを超えるとみているが、賃上げ競争にはついていけず、大企業との格差は拡大しやすい」と予測する。「とても大企業のような金額は出せない」。中小企業からはため息交じりの声が聞こえてきそうだ。 

 

 

 
 

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