( 251826 )  2025/01/19 14:50:55  
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清水アキラさん=東京都中野区、菊池康全撮影 

 

 2022年に離婚した夫婦のうち、同居期間が20年以上だった「熟年離婚」の割合は23.5%に上り、過去最高になった。 

 

 「結論を急いじゃダメ」と語るのは、物まね芸で人気を博したタレントの清水アキラさん(70)だ。清水さんは11年前、長年連れ添った妻(68)と「卒婚」をした経験がある。 

 

 卒婚とは、婚姻関係は継続しつつ、束縛せずにお互いやりたいことを自由に認め合うゆるい関係。離婚をせず、あえて「卒婚」を選ぶ熟年夫婦が増えているという。 

 

 清水さん夫妻の「卒婚」のきっかけは移住だった。生き馬の目を抜くような芸能界で長年働いたので、還暦を過ぎたら、故郷の長野県に移住しようと心に決めていたという。 

 

 ところが移住の提案に、妻はどうしても首を縦に振らなかった。 

 

 24歳で結婚し、夫婦仲は悪くないと思っていた。移住が嫌な理由を聞くと、妻は「田舎暮らしがしんどい」。東京生まれの東京育ち。友人もいない長野で生活する気持ちにはなれなかったという。 

 

 当時、夫妻は妻の母親と同居し、孫たちも誕生していた。 

 

 清水さんも譲らず、13年に「卒婚」を実行。移住した当初は故郷の友人と釣りに行き、囲炉裏で魚を焼き、大自然を満喫した。しかし、友人が帰り、1人で後片付けをしていると妙にさみしさがこみ上げた。 

 

 清水さんは洗濯ものを持って、妻のいる東京の家へ夜、車を飛ばして頻繁に帰るようになった。 

 

 「たまには長野へ来たら」と妻を誘うと、「卒婚にならないじゃないの」と迷惑がられながらも、何度か案内したが、妻はさっさと帰ってしまう。 

 

「朝、コーヒーを一緒に飲む相手がいない。テレビを見てしゃべる相手がいないことがこんなにつらいと思わなかった」 

 

 約1年で「卒婚」をギブアップし、東京に舞い戻った。妻は数年前、体調を崩して手術を受けた。これまでさんざん苦労をかけたので、妻とは飽きるほど一緒にいたいと思っている。 

 

 清水さんの周囲でも、よく熟年離婚を見聞きするようになったという。 

 

 「一歩引いてお互いを尊重することも大事。どうしようもない場合もあるけど、修復が可能なら『卒婚』して踏みとどまってみることをおすすめします」「離れてみるとパートナーのありがたさが身にしみてわかる。夫婦が一緒に築いてきた長い歴史を簡単に捨てちゃあ、もったいないと俺は思います」と清水さんは語る。(森下香枝) 

 

朝日新聞社 

 

 

 
 

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