( 251934 )  2025/01/19 16:50:15  
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日本経済の衰退は労働生産性の低さではなく、政府と日銀の金融政策の失敗にあると、経済アナリストの森永氏が指摘している。

彼は、日本の1人あたりGDPが下落している理由として、政府と日銀による財政・金融政策の失敗を挙げており、増税や利上げなどの引き締め策が経済を後退させていると述べている。

森永氏は、昭和恐慌のような「令和恐慌」に陥る恐れがあると警告し、政府と日銀が過去の教訓を学ばないことに危機感を示している。

(要約)

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2025年も利上げをする意向を示す日銀の植田和男・総裁(時事通信フォト) 

 

 闘う経済アナリスト・森永卓郎氏の連載「読んではいけない」。今回は「政府・日銀の金融政策」について。森永氏は日本経済衰退の大きな要因は、労働生産性の低さなどではなく、「政府と日銀の財政・金融政策の失敗にある」と指摘する。 

 

 * * * 

 惨憺たる数字だと言わざるを得ない。 

 

 内閣府が昨年12月23日に発表した国民経済計算の年次推計(2023年)によると、日本の1人あたり名目国内総生産(GDP)は3万3849ドルだった。韓国に抜かれ、経済協力開発機構(OECD)加盟国中22位に後退した。韓国と日本の1人あたり名目GDPが逆転するのは比較可能な1980年以降で初めてのことだ。 

 

 主要7カ国(G7)ではイタリアの3万9003ドルを下回り最下位となった。2022年の3万4112ドルから250ドル以上減少し、G7のなかでマイナス成長となったのは日本だけである。 

 

 日本経済がマイナス成長となった理由について、エコノミストなど専門家と称する人たちのほとんどは、少子高齢化による人口減、円安、労働生産性の低さを挙げている。だが、その分析は本質を突いていない。 

 

 人口減や円安がまったく影響を与えていないとは言わないが、1人あたりGDP後退の大きな理由はズバリ、政府と日銀の財政・金融政策の失敗にある。増税ありきの緊縮財政に邁進する財務省の愚行はいわずもがな、日銀がミスジャッジを重ねており、これが日本経済を衰退させている。 

 

 いまの世界経済は金融緩和が求められているのが実情だ。実際、欧米などの主要国は軒並み利下げをしている。ところが、日銀だけは2024年に2回の利上げを断行。植田和男・日銀総裁は2025年も利上げをする意向を示し、金融引き締めの継続を隠さない。 

 

 財政と金融の同時引き締めなどという暴挙に出れば、GDPがマイナス成長となるのは火を見るより明らかだった。 

 

 問題は政府と日銀が過去の教訓から何も学ぼうとしないことだ。実は約100年前に濱口雄幸政権が同じ失敗を犯していた。財政と金融の同時引き締めを行なった結果、1930年から昭和恐慌に突入。巷には大量の失業者があふれ、農村では娘や妻が身売りを余儀なくされるなど、国民生活は悲惨を極めたのだった。 

 

 当時と同じことを行なえば日本経済は墜落するに決まっている。このままでは昭和恐慌さながらの「令和恐慌」まっしぐらだろう。 

 

 こうした馬鹿げた政策について、新聞・テレビをはじめとする主要メディアは批判の声を上げない。それどころか、多くのエセ経済学者たちは、「2025年の日本経済は好調に推移する」などと、能天気な展望を垂れ流している。 

 

 日本経済を立て直すには、財政と金融の同時緩和政策に抜本転換する必要がある。そして、それを実現させるための最大のチャンスがくる。2025年夏の参議院選挙だ。日銀と財務省の愚策にお墨付きを与える自民党、公明党、立憲民主党を大敗に追い込むことだ。それなくして日本経済の衰退を止めるのは不可能である。 

 

【プロフィール】 

森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。近著に『身辺整理』(興陽館)『投資依存症』『書いてはいけない』(ともに三五館シンシャ)など。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中。 

 

※週刊ポスト2025年1月31日号 

 

 

 
 

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