( 252461 )  2025/01/20 16:48:56  
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資さんうどん八千代店 

 

北九州で40年以上にわたって愛されてきたソウルフード「資さんうどん」が、念願の関東初出店をはたして約1ヵ月が経つ。開店した千葉県の八千代店は、グループ最大級となる130席の大型店舗ながら、今も連日大行列、深夜まで客足は途絶えない盛況ぶりだという。 

 

今年2月には東京・両国に関東地域2号店の開店も予定するなど、その勢いは止まらない。昨年10月、資さんうどんを傘下に収めた外食大手「すかいらーく」も、まさに「いい買い物をした」と考えているに違いない。 

 

王者「丸亀製麺」と吉野家グループの「はなまるうどん」が独占するうどんチェーン市場に対し、すかいらーく率いる資さんうどんはどんな‟刺激”を与えるのか――。 

 

写真:すかいらーく公式プレスリリースより引用 

 

「ガスト」や「バーミヤン」など6つの子会社、28ブランドを有する外食売り上げ3位のすかいらーくグループだが、足元の業績は好調だ。 

 

2024年1-9月期は、売上2947億円(前年比+311億円)、営業利益193億円(前年比+93億円)、と好調に推移。新規出店と業態転換も計画を上回り、増収増益となっている。通期で見ると、既存店ベースでは売上111.6%、客数106.9%、客単価104.4%とこちらも好調を維持しており、特に売上は2ケタ成長を達成している。 

 

ブランド別に見ると、最も店舗数を増やしたのは「しゃぶ葉」だ。低価格の割に中身が充実していると、ヤングファミリーや若者を中心に人気を集めており、同社も成長業態と位置付けているのだろう。グループ内の不振店舗を次々としゃぶ葉に業態転換していることがわかる。 

 

そのほか、「バーミヤン」や「夢庵」なども同社は成長業態と位置付けている。このように、好調なブランドも多数抱え、業績の見通しも安定しているからこそ、すかいらーくはグループの更なる成長を目指す余裕が生まれたと言っていい。 

 

その足掛かりこそ、2024年10月の、九州を地盤に74店舗('24年12月時点)を構える成長著しい資さんうどんを運営する株式会社資さんの全株式取得だったというわけだ。すでに昨年末に千葉、今年2月に東京と出店を決め、待望の関東進出を実現。今後さらに出店の加速度を高めそうで、目標とする200店舗も時間の問題だろう。 

 

 

そもそも、すかいらーくが資さんうどんを傘下に入れた経緯について解説しよう。すかいらーくは自社で不足する業態は、M&Aを積極的に活用し、スピーディーに傘下に加える経営方針であり、今回のケースもその一環である。 

 

会長の谷真氏が九州に出張する際は必ず行くというくらい惚れ込んだ資さんうどん。資さんうどん側も九州に留まるだけでなく、全国展開を考えており、すかいらーくの量的・質的に盤石な経営資源を活用した方が得策だと、お互いの思惑が合致したようだ。 

 

もちろん、当初はその相性については疑問の声もあった。「効果」と「効率」の対立軸から分析すると、DXをフル活用し効率性を追求するすかいらーくと、従業員満足=顧客満足度の向上といった効果を重視する資さんうどんとでは組織文化や風土が異なるからだ。 

 

しかし、持ち株会社の下で独立性を確保しながら、自主運営できるからこそ、心配は少ないのだろう。すかいらーく自体、今後の方針でグループ内のブランドを、効率を追求するファミリーダイニングと、効果を追求するカジュアルダイニングとで二極化させ整理することを打ち立てたのも追い風になっている。 

 

資さんうどんは、創業40年で年間売上100億円(23年実績、123億円)以上を達成している。すかいらーくによる買収金額はおよそ240億円とのことだが、事業規模から考えて相当な将来性を見込んでいるほか、傘下に収めたことによるグループ全体のシナジー効果など、期待も大きいに違いない。 

 

不動の人気「肉ごぼ天うどん」/資さん公式プレスリリースより引用 

 

筆者も実際に資さんうどんへ行ってきた。入店からは〈自動案内→タッチパネルで注文→水は卓上にてセルフサービス→料理提供→会計はセルフレジ〉といったよくある一連の流れ。だが、うどんなどの料理提供は店員さんが丁寧な接客で提供してくれるから嬉しいものだ。 

 

資さんうどんのこだわりをまとめると、大きく5つに分けることができる。 

 

(1)出汁。手間を惜しまず、鯖や昆布・椎茸などから丁寧にとった黄金の出汁 

 

(2)麺。最高の粉を厳選した資さんうどん専用粉のみを使用し、製法から茹で方まで独自にこだわり抜いた特製のうどん麺 

 

(3)素材。最高の粉を厳選し、配合等もオリジナルの資さんうどん専用粉を用いた「うどん」、鯖、昆布、椎茸等の「出汁」の素材に妥協しない 

 

(4)接客力。お客さまに対する目配り・気配り・心配りを大切にし、全体を見ながら個々のお客さんに安らぎを提供 

 

(5)豊富なメニュー。うどんや丼など100種類以上の豊富なメニューで、老若男女問わず幅広いお客さんに支持されている 

 

こうしたこだわりによって、常連客が延べ客数の8割を占めるという驚異のリピート率こそ資さんうどんの強みである。 

 

そんな常連客たちの間でも不動の人気No.1メニューが「肉ごぼ天うどん」770円(税込)とのこと。ミニ丼のセットも組み合わせ豊富で、価格もリーズナブル。広めの落ち着いた雰囲気で食べることができ、また行きたいと思わせる味だった。 

 

 

Photo by iStock 

 

すかいらーくは約3000店の店舗網を活用し、新規出店や転換により、資さんうどんの全国展開を目指す計画だ。またグループの自社工場や物流網などサプライチェーンのインフラも活用していく。 

 

資さんうどんが独自に有するお客様から支持される品質やサービスを守り、且つ磨きあげていくことで、今後さらなる発展を遂げていく可能性は十分にある。そうなれば、うどんチェーン市場での存在感はますます高まっていくことだろう。 

 

同業界は店舗数・売上と共に、1位の丸亀製麺と2位のはなまるうどんの間とで大きな開きがあるのが特徴だ。2位の吉野家グループのはなまるうどんは、店舗数418店舗、売上334億円、(2024年2月期)だ。丸亀製麺の方が、出店数は2倍以上、売上は3倍以上の差があり、圧倒的な優位性を確保している。 

 

丸亀製麺の売上実績は1021億円(2023年3月期)→1149億円(2024年3月期)と12,4%増と伸ばしており、過去最高を更新。営業利益も116億円(2023年3月期)→183億円(2024年3月期)と、59%増と伸ばしている。営業利益の16,0%は驚異の収益力と言っていい。 

 

今期も約100店ペースで改装を予定しているなど、事実、丸亀製麺の勢いはうどん市場を牽引している。そこに、資本力あるすかいらーくの傘下に入り、そのインフラを活用して成長を目指す資さんうどんが割って入ることができるのか――うどんチェーン市場がより刺激的、競争的になることを願うばかりだ。 

 

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中村 清志(中小企業診断士・中村コンサルタント代表) 

 

 

 
 

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