( 252469 )  2025/01/20 17:01:01  
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2024年度の「駅と電車内の迷惑行為ランキング」で、1位は「周囲に配慮せずせきやくしゃみをする」でした。

この項目は新型コロナ感染拡大があった2020〜2022年よりも順位が上昇しました。

他の迷惑行為には「座席の座り方」や「騒々しい会話」がランクインしており、マスク着用の減少や列車の混雑が香りに影響していることも指摘されています。

ランキング結果は男女別や年代別でも発表され、70代以上では「優先席のマナー」が1位となった点が特徴的です。

マナー改善に向けて乗客一人ひとりが気をつけることが重要とされました。

(要約)

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2024年度の「駅と電車内の迷惑行為ランキング」1位は「周囲に配慮せずせきやくしゃみをする」だった(写真:World Image/PIXTA) 

 

 全国の私鉄が加盟する日本民営鉄道協会(民鉄協)が毎年実施している「駅と電車内の迷惑行為ランキング」の最新版(2024年度版)が2024年12月19日に発表された。 

 

 同年10月1日から11月30日までの2カ月間にわたって民鉄協のホームページ上でアンケート調査が行われ、5314人から回答が得られたという。今回ははたしてどのような結果となったのだろうか。 

 

■2024年度1位は「せきやくしゃみ」 

 

 2024年度迷惑行為ランキングの1位は、「周囲に配慮せずせきやくしゃみをする」。2019年度に新設された項目で、2019年度は6位、2020〜2021年度は4位、2022年度は5位、2023年度は2位と順位は上昇基調にあったが、今回ついに1位となった。 

 

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっていた2020〜2022年よりも現在のほうが高順位というのは不思議な感じもするが、コロナ禍のときは乗客全員がマスクを着用していたからせきやくしゃみが気にならなかったと考えれば納得がいく。 

 

【表でわかる】10年間で順位はどう変わった? 2015〜2024年度の「迷惑行為ランキング」を一挙集計 

 民鉄協は「鉄道利用時に限らず日常生活でマスクをつけることが当たり前となっていたコロナ禍から、2023年5月の外出時における行動規制の緩和を機に、電車内でマスクを外す人が徐々に増えたことで感染症に対する不安や危機感を感じた方が多く回答したとみられます」とコメントしている。 

 

 アンケート調査期間中の11月8日に「インフルエンザが全国的な流行期に入った」と厚生労働省が発表した。アンケート後には過去最悪ペースで流行が急拡大した時期もあり、周囲に配慮せずせきやくしゃみをする行為はアンケート期間中よりもさらに迷惑と感じられている可能性がある。 

 

 商業施設や飲食店内、あるいは職場や学校などでも周囲に配慮せずせきやくしゃみが気になる人は多いだろう。ましてや混雑する電車内でのせきやくしゃみが「嫌だ」という人はコロナ禍以前よりも増えているのではないだろうか。 

 

 

 自分は大丈夫と思っている人も突然せきやくしゃみをしないとも限らない。まさかのときに備えて、マスクを着用しないまでも、つねに携帯しておくといった対策は必要かもしれない。 

 

 迷惑行為の2位は詰めない、足を伸ばすといった「座席の座り方」。昨年度は1位で、過去10年間で見ても1位になった年が4回ある。つねに3位以上をキープしており、迷惑行為の常連組だ。鉄道会社はロングシートにくぼみを付けるなどして座席間隔を空けずに座ってもらうようにするといった対策をしているが、なかなか解決には至らない。 

 

■マスク着用減で「香り」気になる?  

 

 3位は「騒々しい会話・はしゃぎまわり」。過去10年間では2015〜2017年度と2021年度の4回にわたって1位となっている。今回は訪日外国人旅行者の迷惑行為についても調査を行っており、この項目が1位だった。列車内でインバウンド客が数人で会話している場面に出くわした人は少なくないだろう。彼らが当たり前の行為として考えていても、沈黙している乗客が多い日本の電車では目立ってしまうのは仕方がないのかもしれない。 

 

 4位は「強い香り」。具体例として香水、洗剤、柔軟剤、化粧品の香りが挙げられている。2023年度に新設され、その年は7位だった。 

 

 民鉄協は「化学製品類から発せられる香りを吸うと体調を崩されるなど、とくに通勤・通学時の人との距離が近く密接する満員電車内における懸念に対する回答とみられます」とコメントしている。コロナ収束によりマスクを着用する人が減ったり、列車が混雑するようになったりしたので、以前よりも香りが気になるようになったということなのだろう。 

 

 5位は「乗降時のマナー」。扉付近に立ち、ほかの客の乗降の妨げになる行為もここに含まれる。2020年度から4年連続で3位だったが今回は順位を落とした。 

 

 6位は「酔っ払った状態での乗車」。コロナ禍のさなかでは8〜9位だったが順位が上がった。コロナ禍が収束し、外で酒を飲む機会が増えたためのようだ。 

 

 7位は「荷物の持ち方、置き方」。リュックを背負って通勤・通学する人が目立つようになった2018年には1位になったが、その後は啓発活動が進み、多くの乗客が周囲に配慮して荷物を持つようになった。9位の「スマートフォン等の使い方」、13位の「ヘッドホン・イヤホンからの音もれ」もそれぞれ2019年に4位、2018年に5位だったが、啓発活動により徐々に改善した。これらの項目の順位が低下したことは啓発活動が功を奏した好例といえる。 

 

 

■エスカレーター「片側空け」は 

 

 一方で気になったのは16位の「エスカレーター・エレベーターの利用の仕方」である。鉄道各社は事故防止の観点からエスカレーターは歩かず立ち止まって乗るように呼びかけており、その意味では16位という順位の低さは啓発活動に効果があったということになるが、エスカレーターの空いている片側を歩いている人が依然として絶えない。 

 

 民鉄協の担当者は「順位にかかわらず重要な課題であることには変わりない」と話した。 

 

 迷惑行為ランキングは男女別、年代別でも発表されている。男女別のランキングを見ると、男女ともに1位が「周囲に配慮せずせきやくしゃみをする」だが、2位は男性が「座席の座り方」、女性が「強い香り」と違う結果になった。ちなみに「強い香り」は男性のランキング上位には見当たらない。つまり、香りが気になるのは男性よりも女性のほうが多いということになる。 

 

■70代以上の1位は「優先席のマナー」 

 

 年代別では10代以下、20代、30代、40代、50代、60代、70代以上についてランキングが発表されており、20代から60代まですべて1位は「周囲に配慮せずせきやくしゃみをする」だったが、70代以上の1位は「座席の座り方」と「優先席のマナー」が同着。これもほかの世代にはない特徴である。 

 

 70代以上の乗客が優先席に関心を持つのは納得だが、60代はどうなのだろう。この点について民鉄協の担当者に尋ねると「60代で仕事をしている人も多く、優先席は自分には不要と考えているのではないか」とのことだった。 

 

 最後に、マナー改善の傾向に関して。「駅や電車内のマナーが以前と比べて改善されたと感じるか」という設問に関して2023年度は「やや悪化した」14.4%、「悪化した」18.7%だったが、2024年度は「やや悪化した」19.9%、「悪化した」27.5%という結果となった。昨年度と比べてマナーが悪化したと感じる人の割合が増えている。乗客一人一人が気をつけることで、次回の調査ではマナー悪化の流れが改善に向かうことを願いたい。 

 

大坂 直樹 :東洋経済 記者 

 

 

 
 

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