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埼玉県川口市でトラブルを引き起こしているクルド人について、異なる意見が存在し、市内の人々が親クルド派と反クルド派に分かれている。

記者が現地に2カ月間滞在し、クルド人たちの状況を報告している。

記事では、クルド人たちの問題行動や地元住民との関係、取材した解体業者に関する情報が紹介されている。

(要約)

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クルドカー 

 

【前後編の後編/前編からの続き】 

 

 埼玉県川口市でクルド人がさまざまなトラブルを起こしている。その一方で、それらの報道を「ヘイト」だと指摘する人たちもいて、市内は親クルド派と反クルド派に割れているとも。いったい真相はどうなのか。実際、現地に住んで2カ月間取材をしてみると――。 

 

 *** 

 

 前編【「日本人も10年後にはわれわれを理解する」 騒音問題を起こしたクルド人の驚くべき主張 「公衆トイレで行為」など数々の問題行動も】では、ここ数年でクローズアップされるようになったクルド人の問題行動について報じた。 

 

 朝6時前に赤芝新田のヤード(解体業者の資材置き場)を訪れると、解体業のクルド人たちが次々と“出勤”してきた。赤芝新田の交差点はちょっとした渋滞に。トラックと軽乗用車が多いが、高級外国車も目立つ。アウディ、BMW、ボルボ、フィアット……など。 

 

「川口のクルド人社会にも経済格差はあります。日本での滞在年数が長いベテラン組は裕福で、日本に来て日の浅い若者を使っている状況です」(川口市議会議員の奥富精一さん・以下同) 

 

 “仮放免”(入管施設への収容が一時的に停止された状態)の外国人による無免許運転も問題になっている。 

 

「事故の事例を確認すると、無免許、他人名義、無保険が横行しています」 

 

 現代の日本でそんなことがあり得るのか。埼玉県警察運転免許センターに問い合わせると、仮放免の外国人が日本の免許を取得するのは現状、困難だという。 

 

「ルール上は自国の免許があり、試験に受かれば、日本で運転できる免許を取得できます。ただ、今は仮放免の方の希望者が多く、提出された書類の住所に本当に住んでいるかの現地確認などに時間がかかり、審査書類の有効期限を過ぎてしまう状況が続いています。また筆記試験は現状クルド語やトルコ語には対応していないので、試験に受かるのは難しいです」 

 

 その結果、免許を取得できないクルド人が無免許や他人名義の免許で運転しているようだ。 

 

 

 赤芝新田に入るクルド人は各ヤードに散っていった。巨大なトラックが舗装されていない水たまりだらけの路地を、両脇の木の枝をバキバキと折りながら進んでいく。 

 

 自転車で追うと、樹々が茂っている奥に小さな空き地が開け、倉庫のような建物があり、テントでパンやドリンクが売られていた。解体現場へ向かう前のクルド人が続々と集まり朝食を取ったり、テイクアウトしたり、活気に満ちている。せっかくなので、焼き立てのオリーブのパンを買った。500円也。無料のチャイ(お茶)とともに食べる。温かくもっちりしておいしい。ボリュームもある。 

 

 そこにはクルド人しかいないので、中東を訪れた気分になる。早朝のヤードを訪れる日本人は珍しいのだろう、流ちょうな日本語で話しかけてくるクルド人もいる。 

 

「ワタシノオクサン、ニホンジン。コトバハカノジョニオシエテモライマス」 

 

 人懐こい人が多い。対面で話すと、刃傷沙汰や婦女暴行やひき逃げをするような人たちには見えない。彼らに住まいを聞くと、川口市の他にもいると分かった。蕨、浦和、越谷……あたりだ。 

 

 赤芝新田は住宅や商業施設が原則として建てられない市街化調整区域。日本人の人口は約330人。世帯数は約170。代々暮らしている地主が多い。お年を召した方が多く、クルマの暴走やレイヴの騒音で迷惑しているはず。 

 

 しかし、話を聞いてみると意外にも穏やかな反応だった。お墓の掃除をする年配の女性に尋ねた。 

 

「早朝はにぎやかです。でも子どもが登校する時間は道を規制しているので、それほど危険は感じません」 

 

 ランニング中の年配の男性も話してくれた。 

 

「迷惑なときもありますが、うるさい! と怒鳴ると、スミマセーンって、日本語で謝って静まりますよ」 

 

 ほかにも住民の人と会話を交わしたが、迷惑なこともあるけれど仕方がない、という発言ばかり。クルド人と地域住民が微妙なバランスで共生している印象だ。本当かなあ? なんとなく違和感を覚える。 

 

 

 しかし、地元の人が寛容なのにはわけがあるようだ。 

 

「ヤードの土地を所有する地主さんたちと、借りているクルド人とは、共存関係が成立しているんです」 

 

 とは、川口市議会議員の青山聖子さん。 

 

「赤芝新田は市街化調整区域なので、土地の借り手がなかなか見つかりません。長い間ずっとヤードだったので土中に金属片も多く埋まっていて、農地にすることができず、クルド人の解体業者に貸すしかないんです。治安の悪化で、賃貸住宅も月極駐車場も借り手がいなくて困っています。クルド人は貴重な店子です。迷惑行為があっても地主さんたちは我慢しています」(青山さん・以下同) 

 

 それでも、2024年度内には市のヤード条例を厳しくする方向で進んでいる。 

 

「ヤードの内部が見えるように、塀を低くすることをはじめ、いろいろ検討中です。敷地面積の基準もより厳しくなるでしょう。罰金は30万円でしたが、100万円までに引き上げる案も出ているほか、懲役まで視野に入れています。今、市民の方々からのパブリック・コメントも尊重して、話し合っているところです」 

 

 こうした現状をクルド人はもちろん知っている。 

 

「解体業は土で汚れて、アスベストの危険もあり、深刻な人手不足の業種・職種です。クルド人たちは、日本人が敬遠する仕事を引き受けているのに、自分たちを排除するのはおかしい、と主張しています」 

 

 議会で青山さんがクルド人に対して厳しめの発言をしたら、匿名の手紙が送られてきたという。 

 

「川口はクルド人のものです 日本人は出ていって」 

 

「日本人こそ私たちのやり方に合わせるべきだ クルド人」 

 

 かつてはSNSを通して脅されてもいた。 

 

「東京湾に沈めてやる」 

 

「窓の外を見ろ。俺は今お前を見張っている」 

 

 怖くなり、SNSの利用はすべてやめたという。 

 

 奥富さんもさんざん脅され、防刃ベストや盗聴チェッカーを購入して自衛していたそうだ。川口の市議は、命がけの仕事になってしまっている。 

 

 

 2週間ほど滞在して、川口市が日本でも特殊な状況にあると分かった。 

 

 23年7月に川口市立医療センターで発生した暴動では7人のクルド人が逮捕されたが、刃物で相手を刺した事件にもかかわらず不起訴になっている。その一人、殺人未遂容疑で逮捕された25歳の男は同11月に自主的に帰国したが、24年5月に再入国をくわだてた。男は羽田空港内の入管施設でハンガーストライキを行い、治療を要求して仮放免を認められ、川口へ。しかし医師の診断は、治療の必要なしとしてトルコに強制送還された。その際、入管への抗議で、空港に約20人のクルド人が集まり騒ぎになっている。 

 

 入管が動かなければ、殺人未遂で逮捕されたクルド人をまた入れてしまうところだった。 

 

 人口の減少で深刻な人手不足の日本。今後移民を受け入れられるのか、川口市は、貴重な実例として注目されている。このような状況下、川口市長、クルド人に仕事を発注している解体業者はどんな対策を講じているのだろうか。 

 

 そのほかにも、10代の女子中学生が20歳のクルド人の男にコンビニの駐車場に停めた車内で性的暴行を受けた問題や、市内の公園で10代のクルド人の少年らが”行為”に及んでいる問題が――。前編【「日本人も10年後にはわれわれを理解する」 騒音問題を起こしたクルド人の驚くべき主張 「公衆トイレで行為」など数々の問題行動も】では、ここ数年でクローズアップされるようになったクルド人の問題行動について報じている。 

 

石神賢介(いしがみけんすけ) 

ライター。1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポルタージュからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手がける。著書に『57歳で婚活したらすごかった』(新潮新書)など。 

 

「週刊新潮」2025年1月16日号 掲載 

 

新潮社 

 

 

 
 

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