( 253021 )  2025/01/21 17:15:53  
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 2025年1月18日午前2時35分。首都高羽田線をクルマで走行していたAさんが、ありえない乗り物に遭遇しました。 

  

 それは、本来絶対そこにいるはずのない電動キックボード「LUUP」。この影響で首都高羽田線や湾岸線の一部が一時通行止めになりました。 

  

 一体どのような状況だったのでしょうか。現場を目撃したAさんに取材しました。 

 

相次ぐ「悪質電動キックボード」運営による厳しい措置も必要[画像はイメージです/PIXTA] 

 

 一部始終を目撃したAさんは、筆者(加藤久美子)の取材に対し、以下のように話してくれました。 

 

「未明に首都高を走っている時でした。すぐには何なのか分かりませんでしたが、バイクではないなと思いながら近づくにつれ、電動キックボードのLUUPと分かった感じです。 

 

 本線上をありえないスピードでゆっくり走っていましたから危なかったですね」(Aさん) 

 

 その時の様子は、Aさんのクルマに備わっていた4方向録画のドライブレコーダーに記録されていました。 

 

 Aさんはこの一連の不法侵入を自身のXで公開。映像を見ると、羽田線の左側車線にLUUPが現れます。 

 

 これだけでも衝撃ですが、さらにAさんから提供された横方向からの映像を見ると、LUUPが走っている位置もよくわかりました。 

 

 羽田線は片側3車線の広い湾岸線などと違い、十分な路肩があるわけではないので、電動キックボードはやや左寄りではありますが、明らかに本線上を走っていたのです。 

 

首都高羽田線で撮影された電動キックボード不法侵入の様子(動画・画像提供:Aさん) 

 

 近年手軽になったLUUPなどの電動キックボードは「特定小型原付」に区分され、速度抑制装置によって最高速度は20km/hに制限されています。 

 

 そのため、速度を目いっぱい出したとしても、当然上限は20km/hまでしか出ません。 

 

 いっぽう、横羽線の最高速度は一部を除いて60km/hです。 

 

 周りのクルマが60km/h前後で走っている中、20km/hのLUUPが突然目の前に現れたら、急ブレーキをかけても避けられない危険もあります。 

 

 実際、動画の中ではLUUPが現れてから、わずか3秒程度で画面から姿を消しました。 

 

 なおこの件について首都高にも聞いてみると「当社でもLUUPであることは確認しており、一般の方からの通報は1件ございました」という回答がありました 

 

 そもそも、免許不要で乗れる特定小型原付や原付1・2種に相当する電動キックボードは、いずれも定格出力600W以下(50cc以下の原付)となるため、首都高には立入禁止。 

 

 ですが、実は首都高に電動キックボードが誤進入する例は年々増加傾向にあるとのこと。 

 

 首都高広報課に確認したところ、電動キックボードの誤進入は確認されただけで2023年度は1年間で6件、そして2024年度は今回のLUUP含め、1月18日までで9件に達しているそうです。 

 

※ ※ ※ 

 

 なお首都高によると、1kwを超える電動キックボードが軽二輪規格で登録されている場合については、「法令上の取り扱いは『自動車』にあたるため、法令上は通行可能という整理になります」という見方を示しています。 

 

 しかしその一方で、道路交通法第62条の「道路運送車両法第三章に基づく規定(保安基準)等に適合しないため交通の危険を生じさせ、又は他人に迷惑を及ぼすおそれがある車両等を運転してはならない」という原則があります。 

 

 そうしたことから、首都高は「車両を道路において通行させる場合には前提として、道路運送車両の保安基準に適合している必要がある他、道路交通法その他の法令を遵守する必要があります」と話しています。 

 

 

 先述の通り、首都高を原付扱いの電動キックボードで走ることは、道路交通法第48条の11 第1項に定められている「自動車専用道路を自動車以外の方法で通行してはならない」というルールに違反します。 

 

 つまり、電動キックボードのみならず、原付や自転車ももちろん首都高を走行することはできないのですが、これらの首都高への誤進入も2021年以降増えています。 

 

相次ぐ「悪質電動キックボード」運営による厳しい措置も必要[画像はイメージです/PIXTA] 

 

 特に増えているのは原付で、2020年度が215件、2021年度が238件、2022年度が250件、そして2023年度は272件にまで増えています。 

 

 しかしやはり、電動キックボード(特例/特定小型原付)が免許不要で乗れるようになった2023年7月1日以降、高速道路や自動車専用道路への誤進入はもちろん、歩道を含め走行禁止の道路を堂々と走っている例も多く見受けられます。 

 

 では、電動キックボードで走ってはいけない場所を間違って走らないようにするには、どうしたらいいでしょうか。 

 

 今回不法侵入したLUUPでは、公式アプリのマップ機能として、走行禁止のエリアに入ると別の道を通るか、降りて歩道を手押しするよう、画面内に「手押しゾーン」の警告が出る仕組みとなっています。 

 

 しかし、あくまでも自主的に手押しを促すにとどまっているほか、首都高や自動車専用道路に誤進入した場合は、なにひとつ警告は出ないとのことです。 

 

 これとは対照的に、走行禁止エリアに入ると強制的に停止させる機能を持つ電動キックボードシェアサービスもあります。 

 

 千葉県流山市の観光プロモーションプロジェクト「ナガレヤマイイカモ」に使われている電動キックボード「TOCKLE」の車両100台では、走行禁止エリアに入った場合、GPSで設定される「ジオフェンス機能」で自動的に走行を停止することが可能です。 

 

 土地鑑のない人などが、誤って走行禁止エリアに入っても自動的に停止してくれるのは、非常に安心度が高いと言えるでしょう。 

 

 23区内をはじめ、人やクルマが密集している都市部でサービス提供するLUUPのような事業者こそ、このような機能をつけていて欲しいです。 

 

※ ※ ※ 

 

 免許不要で乗れる特定小型原付では近年、トラブルが多発しています。 

 

 そもそも「免許不要」ということは、道路交通法をまったく知らない人でもヘルメットなしで気軽に乗れてしまう恐ろしさがあります。 

 

 販売店によっては購入時、道路交通法の講義を受けることが必須となっているところもありますが、こうしたトラブルの多さからみると、多くの利用者が道路交通法に関して無知で関心もない状態で乗っている可能性があります。 

 

 そうすると、クルマのドライバーや歩行者は、これらの電動キックボードを見たら事故やトラブルに巻き込まれないよう、できるだけ避けて通るしか方法はないとしか言いようがありません。 

 

 道路交通法の改正が施行され、1年半が経過したところで、利用者客が増加した電動キックボードに対し、警察には悪質な利用者の取締りをぜひとも強化して欲しいところです。 

 

 また電動キックボード運営サイドも、違法利用者、危険行為を行った者に対しては「即刻使用禁止」など、厳しい措置を講じるべきではないかと思います。 

 

加藤久美子 

 

 

 
 

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